9/27 発売 『ヴァンパイアは我慢できない dessert』
こちらは長らく原作をつとめたヴァンパイアシリーズの、文庫版です。漫画が完結し、かねてより、私自身がもう少し書きたいと思っていたキャラたちのその後を書いています。読んでほしいなって思っています。
ちょっと思い出を話しますね。2012年のある日、担当さんからこんなふうに持ちかけられました。
「漫画の原作をやってみませんか」 当時の私が出していた著作はまだわずか。そんな私がやって、上手くいくんだろうか? でも、担当さんが「マンガ原作をやることは、小説を書くうえでとても勉強になる」と背中を押してくださり、おそるおそる引き受けました。
夏乃あゆみ先生のことは、以前から知っていました。好きな小説の挿絵も何度か描かれていたし、マンガも買っていました。すごく可愛い絵のひと。そしてたぶん優しく穏やかなかた。
夏乃先生が作画ということで、ディテールを描いていただきたい、と思いました。描き込みがとても美しい作家さんなので。もちろん相手の大変さをムシした勝手な話です。でも、ディテールまで見て楽しい題材を考えて、ヴァンパイアを選びました。どうせなら、血が吸いたいヴァンパイアじゃなくて、血なんていらん! 面倒くさい! という天の邪鬼にしよう……。そういう攻めが好きになるのは、どんな子かな。
漫画原作の面白かったところは、夏乃先生がなにげなく描いてくださったコマの隅っこや、ちょっとした表情を見て、今までも思いも寄らなかった展開を思いついたり、自分がクライマックスかと思っていたところが、漫画の力で覆されたりしたところです。
私は創作に驚きを求めてますから、こういう刺激は本当にありがたかった。
漫画という媒体なので、いつも小説を読んでくださっているかたも、読んでませんというかたが、結構いらっしゃいます。逆ももちろんいるのですが。
ですが、五年携わらせていただき、本当にこの作品が大好きで……。ぶっちゃけたことを言いますね。長い長い間、これでいいのかと悩みながら原作を書いてきて、もっと原作者としてやれることがあるのではないか、力が足りないのではないかと悩んでました。
でも、「我慢ができない」の三巻後半から、四巻終盤にかけてがマンガになったとき、私ははっきりと、「この感動のために書いてきたんだ」と思いました。
一人ではなく、二人、三人で仕事をすることの喜びと奇跡を教えてもらいました。もっとできることがあるかもと悩むのは大事かもしれませんが、この作品は一人では作れないのです。いえ、もちろん他の作品も、いろいろな人――たとえば編集さんとか。の、創造性をふんだんに借りています。一人の力でどうにかなるものではない。私の精一杯と、夏乃先生の奮闘と、支えてくださる担当さんと、その他大勢の人たちの努力の先に、こんな感動があったんだ。それは私の想像の範囲を超えてましたし、そして、私はそのときなにもかも報われた気持ちになりました。この作品を通して、自分の作風への悩みも消えていました。
創作者がそんなふうに思うのは危険かもしれませんが、それは瞬間的なことであって、永続的なことではないので、まあ、許してください。いやはやまたしても、意味のわかんないポエム綴ってしまったぞ。
そういう、私にとって大事な作品なので、もしかしたらこれが携われる最後かもしれないぶん、もっと読んでほしい。そう思っています。ぜひ!よろしくお願いいたします。
ちょっとややこしいですが、既刊はこんな順番です。全部電子あるよ~。
今度出る文庫は、このあとです。
Amazonさんでなか見検索もできるので、どうぞです。
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