毎日の料理を楽しみにする「きろく」のデザイン
こんにちは、クックパッドデザイナーの久保坂 美咲(@misaaa09)です。
クックパッドでは「つくれぽ」機能のリニューアルに引き続き、今年の3月にiOSアプリの大幅なリニューアルを行いました。
様々な既存機能のアップデートに加えて、今まではなかった「アイデア」や「きろく」というタブを新しく追加しています。
その中でも今日は、「きろく」についてフォーカスを当て、どのような想いのもとでデザインに落とし込んだのかについて紹介します。
▲きろくタブに関連する画面
リニューアルで実現したかったこと
きろくの話をする前に、なぜリニューアルの必要があったのか、について軽く触れようと思います。
今回のiOSアプリのリニューアルで実現したかったことは
クックパッドを今日何作ろう?を決めるための課題解決の場所から、みんなが見つけた料理の楽しみや発見が流通する場所に変えたいということでした。
こうした方針は、「毎日の料理を楽しみにする」というクックパッドの会社のミッションに紐付けて考えられています。
このあたりの考え方は前回の記事にも書いているので詳しくは割愛しますが、日々使える食材や調理時間などといった制約の中で「これでいいや」という気持ちでレシピ決定をして日々の料理をするよりも、たまにはそのような制約を乗り越えてでも作ってみたくなるような、「これがいい!」という気持ちで料理できる体験が増えると、毎日の料理はもっと楽しみになるのではないか?という想いがあります。
「これがいい!」といったレシピを見つけやすくするためには、使ってくれるユーザーさんそれぞれの料理の発見や楽しみが流通する場に変える必要がある、という考えからつくれぽのリニューアルをはじめ、アプリ全体のリニューアルに至りました。
サービスの中の「きろく」の役割
リニューアル後のアプリの中で、きろくは「楽しい料理体験が積み上がり成長を実感できる」という役割でデザインを考えていきました。
「楽しみや発見(つくれぽ・レシピ)が流通する場」にするためにはこれまで以上に多くのユーザーが主体的に料理を楽しみ、更に発信してくれることが必要となります。
検索ユーザーと投稿ユーザーという形で明確にユーザーが分かれるようなサービスではなく、クックパッドを使っていたら自然と料理が楽しくなっていき、自らも発信するようになってしまうような、新しいエコシステムを作る必要がありました。
そのためにまずは成長し続けている感覚を持てて、料理が楽しくなることと、更に自分以外のユーザーへ楽しさを発信しやすくすることが必要不可欠だと考え、「きろく」が生まれました
「きろく」でできること
「楽しい料理体験が積み上がり成長を実感できる」場所にするために、きろくタブでは主に以下の2つの機能で構成されています
1.料理アルバム
調理中の写真や料理の写真を、レシピや日付と紐付けて保存できる
2.クリップしたレシピ
気になるレシピをクリップ機能で保存した履歴
この2つの機能により自分だけが閲覧可能な、日々の料理の記録(レシピや写真)を貯めることができます。
▼ 料理アルバムの利用イメージ
クリップしたレシピを開くと出てくるカメラで調理中や完成形の写真を撮って保存することが出来ます。
撮った写真はレシピページの下ときろくタブで確認することが出来ます
▼クリップの利用イメージ
レシピを見ていて気になったらクリップボタンで保存できます。
保存したレシピは当日中は画面下のサムネイルからも引き出せますが、クリップした履歴はきろくタブで振り返られるようになっています。
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どちらも、日々の料理の記録を残しておける、ということには変わりないですが、今回は写真で料理のきろくを残せる「料理アルバム」のデザインで大事にしたことについて紹介したいと思います
「料理アルバム」のデザインで大事にしたこと
1.利便 < 感情
料理アルバムのデザインでは利便性よりも感情的に「なんかいい」「嬉しい」と思えることを重視して作っていました。
作った料理の写真をレシピとセットで保存できる機能というのは、デザイン次第では便利なレシピ帳や、写真ストレージのように見せることもできると思います。
ただ、この機能の目的はあくまで楽しい料理体験を積み上げる手段だと考えて、振り返って楽しかった体験をリアルに思い出せることや、「自分ちゃんと料理しているな」「楽しんでるな」と実感できるような形になることを意識して作っていました。
たとえばプロトタイピングフェーズでこのようなデザインを作っています。
撮影した複数の写真をギャラリーのように一覧化して、写真の確認のしやすくするよりも、以下のようなスライドショーのように画像をつなぎ合わせてリアルにその時の料理体験を振り返られたり「ちゃんと料理してるな」と思えるような見せ方を重視して作りました。
2.ある程度貯めないと良さがわからないものにはしない
写真を貯めていくようなアルバムを作る体験は、写真が溜まると達成感や成長を感じれる一方で、ある程度貯めるまではなかなか良さを感じづらいという問題があると感じていました。
料理をして「上出来だ!」と思えたり「このグツグツしている様子、とっても美味しそうだな」と思えたり、そうした瞬間を1回でも記録することで、しっかりと形に残って満足できることも大事にデザインを作っています。
3.「積み上げること」が目標にならないように
短期的に「とにかく記録をたくさんしてほしい」ということだけを考えてしまうとついつい記録を続けるモチベーションを作ってしまおうとしてしまいます。
たとえばこのように…
こういった目に見える目標ができることが料理のモチベーションに繋がって楽しくなるという見方もできますが、一方で目標を達成できないことがストレスになってしまったり、料理が楽しくないといったきっかけを与える可能性もあります。
きろくの役割に立ち返ると楽しい料理体験を積み上げて成長を実感できることが目的です。積み上げるのが楽しくて料理をするのではなく、楽しんで料理をした結果積み上がるもの、と考えてあえて「積み上げ」自体が目標にならないように意識して作っていました。
「サービス全体で起こしたい変化」からデザインを考える
以上、iOSアプリのきろくタブの1つの機能「料理アルバム」を作ったときに、大事にしていたことについて紹介しました。
サービスが大きくなってきたり、機能も多くなってくると、複数のチームに別れてそれぞれ目標を持ちデザインを作っていく機会が増えていくと思います。
実際にこのリニューアルした当時も「プロジェクト」を作り比較的全体を見渡しやすい多すぎない人数で開発は行いましたが、デザイナーも複数人おり実際にデザインする領域は分担して進めていきました。
担当を分けるとスピード感をもって作れる一方で、個々の機能の中で考えがちで視野が狭くなってしまう瞬間があります。
例えば私はきろくのデザインを主に作っていたので、とにかく料理をきろくしてほしい、使ってもらうにはどうすれば?と考えてしまいます。
ですが範囲を狭めた目先の目標だけにとらわれずに、「なぜきろくをしてもらいたいのか?」「最終的にサービス全体を使ってどんな変化を起こしたいのか?」という視点に常に立ち返りながら目的を見失わないようにデザインすることが大事だということをこのプロジェクトで学びました。
まとめ
つくれぽのリニューアルをはじめ、今回のiOSアプリのリニューアルは、ユーザの今の課題を解決する、というよりももう少し先の未来に料理を楽しんでいる人が増えている世界を作るための、強い意志や想いを持って作ったデザインでした。
まずは想いと仮説を持って形にしてリリースしてみた、という段階です。
「毎日の料理を楽しみにしたい!」という想いがただの押し付けにならないよう、自然にユーザーさんが使えて楽しみになっていけるような形にしてくために、引き続きサービス開発に取り組んでいきます。
おわりに
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