あの日は見えなかったけれど #夕陽海彩の呟き
昨日は、私の大学の入学式の日。
私はたまたま、用事で立ち寄った。
目に飛び込んでくるのは、スーツを着た緊張気味な面持ちの新入生たち。
そして誇らしげに隣に立つ父兄の姿。
敷地内の桜の花は、新たなステージに立つ者たちを祝福するように咲き誇っていた。
1年前の私のことを、思い出す。
とにかく必死で、微笑む余裕すらなかったあの日。
入学式の看板の前は長蛇の列で、写真すら撮ってはいない。
あの日は、何も気付けなかった。
咲き誇る桜の花の美しさも、空の広さも。
周りの、今は顔見知りとなった同級生たちも、きっと緊張した様子だったであろうことも。
新しい場所で立派にやっていかなければいけないと、
思い切り肩肘張っていた。
立派な音大生にならなきゃって。
1年経ったいま
顔見知りになった人たちと立ち話をして笑い、
懐かしくあの日を思い出す私がいる。
あの時は周りなんて見られなかったけれど、
今は色々なところを見回せるようになった。
これからも、肩肘張ったりせずに、
周りに広がる景色にちゃんと目を向けて、
手を伸ばして歩いていこう。
新しい一歩を踏み出した、あの日の私の姿が、
人波の中に浮かんで消えた。