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時の彼方の故郷 #夕陽海彩の呟き

私にとっての故郷って、何処だろう

大学の課題を前に、私は考え込んでいた
自分にとっての「故郷」について、英語で紹介文か詩を作らなければならなかったのだ

さあ困った

中学から私立に行って、
地元の人々との付き合いもさしてない私には、
生まれ育った場所への帰属意識など欠片もない


私が懐かしく思うのは、
読書に耽った小学校時代に読んだ本の数々や、
これまでに出会い、関わってきた人たちとの記憶

子ども時代を過ごした学校も懐かしくはあるけれど、
互いを知る者が去り、もはや見知らぬ人々の過ごす場所となったところに、
その場所自体に、帰りたいとは思えなかった

散々考えた末に、思った


私にとっての「故郷」は、
場所ではなく、思い出なのだ

色々な人たちと関わったときの、
その記憶の中に、もう一度帰りたいと思う

かつて何度も読み、心躍らせた物語の世界に、
もう一度飛び込みたいと思う

ほんとうには、
もう二度とは帰ることのできないところ

何気ない一瞬の積み重ねを過ごした思い出
その時が戻ることは、もう、ない

昔に何度も読んだ本だって、残念なことに、
知らないうちに絶版になっていたり、レーベルごと消えていることだってある

そんな、帰れない場所だけれど、確かにそこは、故郷なのだ

記憶の中に永遠に在り続け、
思い出しては帰る場所

時に当時を一緒に過ごした人と共に懐かしみ、
思いを馳せるもの


故郷とは一言に言うけれど、

それが地図上の場所でなくたって、いいんじゃないだろうか


帰れない、でも忘れない、
時の彼方に過ぎ去った故郷を大切に心に抱いて

その思い出と、故郷と共に、
その先へと歩んでゆく

そんな生き方だって、いいんじゃないか


まるで、昔何度も読んだ物語の中の、
吟遊詩人や旅の魔法使いのようで、
ちょっといいかな、なんて思うのだった

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