「委員は恋に飢えている!」第13会
第13会「恋の相談!?(日常①)」
「火恋ちゃん、ちょっといい?」
私はクラスの子に呼び出された。
「うん!どうしたのー?」
「実は…」
私を呼びだしたのは同じクラスの子。
「私、前からお付き合いしている人がいるんだけど…」
「ええ!そうなの!?」
「うん…」
その子はゆっくり頷いて私の方を見たあと、神妙な面持ちで口を開いた。
「その人と付き合い始めてから一ヶ月がたつんだけど、いまだに大きな進展もないの。二人で話をするときもあまり目を合わせてくれないし、手だってつないでくれない。私、もしかして嫌われちゃってるのかな…」
「そ、そんなことないよ!きっと相手の人も緊張してる?んだと思う!」
「そ、そうかな…?じゃあ、どうしたら彼が緊張しないで私と話して手も繋いでくれると思う?」
(ええー…)
正直私はどうすればいいのか見当もつかない。
というのも、私はまだ誰かと恋愛をしたことが無いし、当然異性の人とお付き合いしたこともないのだ。
「火恋ちゃん、可愛くて優しくて友達も多いし、きっと恋愛経験も豊富だと思って…」
「え、ええと…」
「お願い!私、彼ともっとお話しして手も繋いで、なんならハグもキスもして!もっと親密な関係になりたいの!そのために火恋ちゃんのアドバイスを聞きたいの!」
「ええ!?ハ、ハグ!?キッ、キス///!?」
私は言い慣れない言葉にドキッとする。
月くんをからかう時もこういうベクトルではないので、私はたどたどしくなってしまった。
「火恋ちゃん?」
相手の子に不思議そうな顔で見られている。
「ゴ、ゴホン。ま、任せてよ!私がアドバイスしてあげる!」
「本当に!ありがとう!!」
私は強がって引き受けてしまった。
というよりも友達にお願いされるとなかなか断れない。
「それじゃ早速、どうすればいいかな!」
「ええと、その…」
「あー!ごめん、先生に呼ばれてるの忘れてた!ごめん、ちょっと行ってくるね!後で必ず教えるから!秘密の恋のテクニック、ってやつをね!」
そうごまかして私は一度教室を出た。
(もう!またやった!私のバカ!)
私はいつもこうなる。自分にできないことも引き受けてしまうのだ。
(断らないといけないのに…)
反省しながら歩いていると、見覚えのある顔を見つけた。
「つむちゃん!」
「か、火恋ちゃん」
つむちゃんこと木本紡木ちゃんに私は相談してみることにした。
彼女は本を読むのが趣味だから、もしかしたら恋愛ものを読んでいるかもしれない。
「なるほど…」
つむちゃんはそう呟くと私の手を引っ張った。
「つ、つむちゃん!?」
「着いてきてください」
そしてつむちゃんにされるがままの私は空き教室へ連れていかれた。
空き教室に着くと私たちは席に着いた。
「つ、つむちゃん?」
「その状態はあまりよくありません。彼氏さんも緊張していらっしゃるようですが、もしかしたら別れてしまうという結果になるかもしれません」
「ええ!?どうして!?」
「まず価値観が違います。彼氏さんはゆっくりペースで距離を縮めていきたい、彼女さんはグンと距離を縮めていきたい。これは恋愛に対する価値観の違いですね。次にお互いの思いを話せていないということです。出会ってまだ三カ月もたっていないでしょう。その状態で付き合うのですからお互いのことをまだ知らないはずです。まだ一ヶ月かもしれませんが、お互いを知らないんですからもっと話すべきです」
つむちゃんはものすごい早口で私に解説してくれた。
(そういうものなのか…)
私は恋愛経験がないのでよくわからないが、きっとそういうものなのだろう。
「じゃ、じゃあどうすれば…」
私がそう言うとつむちゃんはメガネをクイッとする動作をした。
「私が今までどれだけの恋愛漫画、恋愛小説を読んできたとお思いですか。私にお任せください」
やっぱりつむちゃんはいろんな本を読んでいたから知識が豊富らしい。
つむちゃんに相談してみてよかった。
「まずは…」
「うんうん。…え!そんなこと、えぇ///」
そう言ってつむちゃんは私に解決策を教えてくれた。
「火恋ちゃん!教えてください!」
放課後になり、私に相談してくれた彼女に恋のテクニックを教えることになった。
「えーと、ゴホン。それじゃあ恋のテクニックを教えます」
私はなぜか先生口調になってしまった。
彼女は首を縦に振りながらメモを用意している。
「まずはもっとお互いを知りましょう。そのためにたくさん話してください。でも彼氏さんからはなかなか…。それならあなたからグイグイ行っちゃいましょう」
「でも、彼は私から話しても目をそらしちゃう…」
「そうなったらこうです!」
私は彼女の両頬を手でつかみ、無理やりこちらを向かせた。
私と彼女の距離がものすごく近づく。
「ふぁ、ふぁへんふぁん!?」
「こうして無理やりにでも目を合わさせて話してください。物理的にやればいいのです」
「ふぁ、ふぁるふぉふぉ」
私は彼女の頬から手を離した。
「そしてお互いを知った後は、あなたがしてほしいことを伝えてください。私に教えてくれたことをそのまま。キ、キスまでしたいということを含めてです」
彼女はメモを取っている。
「そうすればきっと、彼氏さんの方からも答えが来るでしょう」
「で、でも断られちゃったら…」
「そうなったら、後ろから抱きつきましょう。そのまま『私、もっとあなたといろんなこと、したいな』と大人っぽい感じでささやきましょう。これでいけます」
彼女は真剣な表情でメモを取っている。
「わ、私にできるかな…」
「大丈夫。私がついてる。あなたならできる」
なんだか変な宗教のようになってしまったかもしれない。
「…うん!私、頑張る!」
そう言って彼女はメモをしまった。
「どうすればいいのかわからなくて聞いたのも私だし、もしだめでも火恋ちゃんのせいには絶対しないから。でも、だめだった時は話聞いてほしいな」
「もちろんだよ!いくらでも話聞くよー!」
「ありがとう!早速今日、試してみる!」
そう言って彼女は教室を出ていった。
「はあー」
なんだかどっと疲れた気がした。
「あれは言わなくてよかったよね?」
私は自問自答した。実はつむちゃんからはもう少し教えてもらっていたのだが、私が恥ずかしくて伝えられなかったのだ。
(だってあんなに恥ずかしいこと///…)
そう思いながら私も教室を後にした。
次の日、私が学校に登校すると彼女が声をかけてきた。
「火恋ちゃん!」
「あ、おはよう!」
「火恋ちゃん!昨日、火恋ちゃんの言われたとおりにしてみたらうまくいったよ!彼も頑張るって言ってくれた!」
「おお!それはよかった!」
「本当にありがとうね!」
「いえいえ」
「でも、彼、あまり色仕掛けみたいなの好きじゃないみたいで、もし服を脱いだりいきなり押し倒されたりしたら無理だったって言ってた。まあ、火恋ちゃんからはそんなこと教えてもらってなかったからすることはなかったんだけどね!」
そう言って彼女は彼氏の教室へ向かっていった。
(…。あ、あっぶなーーー!)
実はつむちゃんに教えてもらっていたけど彼女に伝えていなかったのは「最悪胸をちらつかせて押し倒せ」、「無理やりにでもキスをして既成事実を作っちゃえ」という作戦だった。
本当に伝えなくてよかった。
(つむちゃん、なんてこと教えてくれたのさ…)
私はつむちゃんへの感謝と自分のファインプレーを喜びながら自分の席に着いたのだった。
後書き
こんにちは。水差いころです。
まずは最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
前回の話で一学期は終了しているのですが、彼ら、彼女らの日常を書いていないなと思い、日常パートを入れました。今回は火恋メインです。
もう何話かは日常を書こうと思っています。
下に第一話からまとめられたマガジンのリンクを貼っているのでぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
感想も大大大大大歓迎です。よろしくお願いします。