「委員は恋に飢えている!」第15会



第15会「ゲーム大会!(日常③)


「お邪魔します」
「おっ邪魔しまーす!」
「どうぞぉ」
今日は土曜日。俺と火恋さんは金美さんの家にやってきた。

以前、俺と金美さんが二人でゲームをしたことを聞いたとき、今度は火恋さんも一緒にという約束をした。
その約束を今、金美さんの家で果たそうとしている。

「すごいね!これ全部ゲームなの?」
「そうだよぉ」
火恋さんはとても興奮した様子だった。
金美さんもなんだか自慢げな顔をしている。

(俺も前来た時、こんな感じだったのかな…)
俺は前回来た時のことを思い出しながら金美さんの部屋に行った。



ことの発端は一週間前。体育祭も終了し、催事委員にいる期間も残り一週間となったときだった。
俺は社先輩からサインはもらっていたし、そもそも催事委員の仕事があまりなかったので比較的時間があった。

「月くん、ちょっといい?」
俺は火恋さんに呼び出された。
「今週の土曜日って、空いてる?」
「え?ま、まあ、空いてるよ」

体育祭を含め、火恋さんは俺をいじってくることが多い。
それもなんだか勘違いしてしまいそうなものばかりだ。
(わざわざ休日に俺を誘ってくるなんて…。一体なんなんだ?も、もしかして…!?)

そんなことを考えていたが、実際は全く違った。
「前に話した金美ちゃんとゲームするってやつ、土曜日にやらない?体育祭も終わったしさ」
「あ、ああ。なんだそのことか。俺は大丈夫だよ」

「んんー?そのことって、月くんは何のことかと思ったのかなー?」
火恋さんは少しニヤニヤしながら俺に聞いてきた。
「な、何でもないよ」
「ほんとかなー?ま、土曜日はそういうことでね!」

火恋さんはそう言って教室に戻っていった。
俺は休日に誘われて、もしかしたら二人で出かけるのかということを一瞬でも思ってしまった自分が少し恥ずかしかった。



そして今に至る。
「それじゃあ早速始めよー!ゲーム大会だ!」
火恋さんは楽しそうにしている。

「なんのゲームやるぅ?」
「私、ゲームあまりやったことないから簡単なのがいいかな」
「あ、じゃあこの前俺が金美さんに教えてもらったやつでいいんじゃない?俺でも結構できたしさ」

「あぁ、じゃあそれにしよう」
「やったー!楽しみー!」
金美さんはゲームのスイッチを入れた。
最初は俺と金美さんでお手本を見せる。

「はい、おしまい」
俺は瞬殺された。

「ちょっと!金美さん!少しは手加減をしてよ!」
「ちっちっちぃ。甘いねぇ、月くん。私の辞書にはぁ、ゲームをする時に限って手加減という言葉は存在しないんだよぉ。私はゲームではウサギも全力で狩る獅子なんだからぁ」
そう言って金美さんは人差し指を立てながら誇ってきた。

「絶対一回は勝つ!」
「負けないよぉ」
「ごめん、火恋さん。俺が相手にならなすぎてすぐ終わっちゃったけど、まあこんな感じのゲームだよ。操作方法はやりながら…」
俺が火恋さんと交代しようとしたが、火恋さんは真剣な表情で何か考えている。

「月くん、もう一回金美ちゃんと対戦してよ」
「ええ、まあいいけどさ。火恋さんはやらないの?」
「もうちょっと見させて」
火恋さんがそう言うので俺と金美さんはもう一度対戦したが、結果は変わらず。またもや瞬殺されてしまった。

「ごめん、もう一回」
こうして火恋さんに言われるままに勝負を繰り返すこと五回。
一度だけ惜しい時があったが、結局金美さんには一度も勝てなかった。

「よし!私もやってみたい!」
「じゃあ、俺と代わろう」
こうして俺と火恋さんが交代して、金美さんと火恋さんの対戦になった。

「ほっ、とうっ!」
火恋さんのキャラは変な動きをしている。
金美さんはさっき言っていたように、手加減なんかせず瞬殺していた。
「やっぱり操作が慣れないなー」
そう言いながら火恋さんは何回か金美さんと対戦した。

「そろそろ代わろうかぁ、月くん」
そう言って俺と金美さんが交代して、俺は火恋さんと対戦することになった。



「う、嘘だろ…」
画面の先に映るのは勝利ポーズをしている女性キャラと倒れこんでいる男性キャラ。
男性キャラを使っていたのは俺だった。

「やったー!やったよ金美ちゃん!」
「すごいねぇ、火恋。今日始めてやったばっかなのに」
「まあね!」
火恋さんはものすごく自慢げだ。

「ちょ、ちょっと待って!もう一回やろう」
「もちろん!」
俺はもう一度火恋さんと対戦した。

俺は金美さんと違うので無意識に手加減していたのかもしれない。
(大丈夫。次は手加減なんかしないで本気でやる)
そう心に決め、俺は必死にコントローラーを動かした。

「You Lose」
俺の画面にはこの文字が大きくでてきて、俺のキャラはまたもや倒れこんでいた。
「な、なんで…」
俺が放心状態気味になっていると火恋さんが得意げな顔で説明し始めた。

「ふっふっふー。実はさっき金美ちゃんと勝負している時、月くんの動きをずっと見てたんだよ。さすがに金美ちゃんのは無理だと思ったけど、月くんのなら少しはいけるかなーって思って観察させてもらったってわけ!もう月くんの動きならほとんどわかっちゃうよ〜?」
火恋さんはふふんと鼻息を鳴らしながら説明してくれた。

「そ、そんな…」
「でもすごいよぉ、火恋。見てただけでその人の動きを把握して読むなんてぇ。確かに月くんの動きは単純だけどさぁ」

「ちょっと!俺今さりげなくディスられた!?」
「えへへ、金美ちゃんに褒められると嬉しいな!」
結局そのゲームで俺は火恋さんにも金美さんにも勝つことはできなかった。



その後も、みんなで協力してゴールを目指すパーティーゲームやみんなが敵のバトルロワイヤルなんかのゲームをやって楽しんだ。
「じゃあ、今度はこれやろうかぁ」

そう言って金美さんがスイッチを入れたのはゴーグルをつけて自分がリアルに動くVRゲームだった。
「うわー、すごいねこれ!目の前にモンスターがいるよ!」
火恋さんは興奮しながら手を振っている。攻撃をしているようだ。

「もっと近づかないとだめだよぉ。ほらぁ」
「で、でも、なんかこのモンスター気持ち悪いんだもん!」
「大丈夫だよぉ、バーチャルなんだからぁ」
「いや、やめて!来ないで!きゃー!」
火恋さんはゴーグルをつけてまま叫んで金美さんに抱き着いた。

「ああ、負けちゃったぁ」
「はあ、気持ち悪かった。何このモンスター」
「じゃあ次、月くんやってみよぉ」
そう言われて俺は火恋さんからゴーグルを受け取った。

「これでいいの?」
「うんうん、今スイッチつけるから待っててねぇ」
俺は真っ暗な画面を見ながら待っていた。

「ねぇ、火恋。面白いこと思いついたんだけどさぁ…」
「ん?」
「あはは!それ面白そう!」
なかなか画面がつかない。俺はゴーグルをつけたまま後ろを振り向いた。

「金美さん?まだかな?」
「ちょっと待ってねぇ。はいはい準備できたよぉ。スイッチ入れるねぇ」
そう言われたが画面は明るくならない。

「金美さん?暗いままなんだけど…。もしかして俺壊しちゃった!?ごめん!」
「壊れてないよぉ。ほら、前向いてぇ」
そう言われて俺は前を向いた。

「うわ!!!!!!!!」
目の前には髪の長い白い服を着た女性が立っていた。そのまま俺の方に走ってくる。
「ちょっと、なにこれ!待って!怖いんだけど!」
俺は恐怖のあまり後ろに逃げた。

「ちょっと月くん!危ない!」
「え…?」
俺はそのまま転んでしまった。画面は暗いままだ。
「いったー…くない?」
顔から転んだので痛いかと思ったがそんなことはなかった。

むしろ柔らかいものに包まれている感じがする。
「なんか、やわらかい?」
そう言って俺はゴーグルを外した。

目の前に広がっていたのは、顔を赤くして立っている火恋さんと俺の下で寝そべっている金美さんだった。
ちょうど俺の顔の前に金美さんの胸が来ている形になっている。

「月くん、重いよぉ」
「ちょっと。月くん…?」
「いや、あの、ええと…」

「月くん!」
「ごめんなさーい!」
俺は急いで金美さんから離れて謝った。



「いやー、今日は楽しかったね!」
「そうだね」
「誰かさんは胸をもんでたけどね」

「本当にすみませんでした」
「いいよぉ、もとはといえば私がカセットを怖いゲームに変えたのが悪いしねぇ」

「まったく…。金美ちゃんも軽いんだから」
「まあまあ、楽しかったんだしいいじゃぁん」
「金美ちゃんがいいならいいけどさー」
火恋さんは口をとがらせながらそう言った。

「また集まってゲームやろうねぇ」
「そうだね」
「うん!今度はもっと人を増やしたりして!いいかな?金美ちゃん」

「いいねぇ。人数がいっぱいの方が楽しいゲームもあるからそれもやりたいなぁ」
「やった!楽しみ!」
こうして俺たちは楽しく休日を過ごすことができた。

(今度は人数を増やしてゲームすることになったし、それまでにさすがに火恋さんには負けないように俺も金美さんに教えてもらおうかな)
また今度行われるゲーム大会がとても楽しみだ。


後書き

最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回も日常回です。次で終わります。
以前約束していたゲーム大会が開催されましたね。ちょっとしたハプニングもありましたが三人とも楽しそうでよかったです。
続きもぜひ読んでいただけたら嬉しいです。感想も大大大大歓迎です。


第一話〜はこちらから



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