「委員は恋に飢えている!」第60会



第60会「初詣(冬休み⑤)」


クリスマスにみんなで集まってから時間が過ぎるのは一瞬だった。
気づいたら年末になり、母さんと一緒に年越しそばを食べて新年を迎えた。
我が家では毎年初詣に行くということは特にしていない。
今年も変わらずそうなのかな……と思っていたとき、スマホのバイブレーションが鳴った。

『初詣いかないか?』

土門からだ。
まあ、家にいてもすることないしな。
俺は了解の旨のメッセージを送り、近くの神社に向かった。



初詣先の神社はこの町で一番大きい神社で、毎年たくさんの人が訪れる。
今年も例にもれず、たくさんの人であふれかえっていた。
待ち合わせたのは神社前の自販機。
自販機の前に到着して少し待っていると、土門も来た。

「お待たせえ!」
「待ってないよ。なんでそんなにテンション高いんだよ」
「え?テンション高いか?」
「なんか高いよ」
「いやー、まあまあ行こうや」
なぜかテンションが高い土門と一緒に神社の入り口に向かった。

神社にはたくさんの出店が並んでいた。
夏祭りのときみたいだ。
土門は歩きながらきょろきょろしていてどこか落ち着かない。
こいつ、何か隠してるな…?
そう思った俺は土門を問い詰めることにした。

「なあ、土門」
「どうした?」
「なんで今日初詣に誘ったんだ?」
「そんなの、正月だからだろ?」
「そうだな。別にいいんだ。友達と二人で初詣に行くのは自然だと思うし俺も来れてよかった」
「だろ?普通に初詣したかったんだよ」
「なんでそんなに落ち着いてないんだ?」
「いや、それは…」
少したじろいだ土門にさらに詰め寄る。

「何か隠してるな?」
「いや…。ほら!こんなにたくさんの人がいて、なんか落ち着かないっていうかさ…」
「夏祭りのときはもっと人がいたけど普通だったよな?」
「まあ、そうだな」
「…何隠してるんだ」
「別に何も…」
「…」
俺が黙っていると、土門は両手を上にあげ、降参のポーズで口を開いた。

「…結川先輩が来るらしい」
「へ?」
「結川先輩が来るらしいんだ。今日、この初詣に」
こいつ、どこでそんな情報を手に入れてくるんだ?

「それで、もしかしたら会えるかもと思って…」
「結川先輩に誘われたとか?」
「ではない」
「ストーカーじゃねーか!!!」
「分かってるんだ!でもなんか、会えるチャンスがあるなら会いたいじゃねーか!」
「いや、まあ、そうかもしれないけど…」

「それで、何で俺まで誘ったんだ?」
「そんなの、一人じゃ余計ストーカーに思われるだろ?二人でいれば偶然を装えるからさ」
「分かっててやってるんかい…」


後書き

六十話です。最後まで読んでいただきありがとうございます。
すみません。忙しくて短いです。しばらくこれくらいの長さが続きそうです。
続きもぜひ読んでいただけたら嬉しいです。


第一話〜はこちらから


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