三叉神経痛の復習(歯痛の鑑別で重要)
三叉神経第3枝領域の三叉神経痛を経験したので復習&知識をアップデートです。最初に(今回の個人的最重要点は)
・歯痛と判断され、潜在的に診断されていない可能性がある。
<鑑別ポイント> 歯痛は継続的、三叉神経痛は断続/間欠的な鋭い痛み
三叉神経とは(簡易)
脳神経の一つ、三叉とは神経が眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)の三神経に分かれることに由来している。体性運動性と知覚性の混合神経であり、脳神経の中で最大の神経。
(主にUTDから)
三叉神経痛(TN)の概要
通常は無害な刺激(洗顔など)が誘引で発生する、三叉神経の1つまたは複数の分裂の分布(2>3>1で多い。混合型もある。後述)における、片側の電撃のような、短時間、再発性の痛みが特徴である。
有病率は0.1%以下
年間発生率は10万人あたり4から13
発生率は低が高齢者での発症例多い。やや女性に多い1.5〜2倍。
高血圧や片頭痛と関連する、という報告もあり。
右側が多い(理由不明):
両側性の場合は稀で,背景疾患について考察必要
メカニズムからの原因疾患
・三叉神経根の圧迫
前庭神経鞘腫(音響神経鞘腫)
髄膜腫、類表皮または他の嚢胞
(まれ)嚢状動脈瘤、動静脈奇形
・脳幹病変、他
多発性硬化症(両側性になりうる)
小脳橋角周囲の腫瘍
脳幹の他の構造的病変
臨床症状
自律神経症状–自律神経症状は、通常軽度または中等度。涙液分泌、結膜注射、鼻漏などが起こりうる(V1三叉神経分布におけるTNの発作に関連して発生する可能性があり)。自律神経機能の存在は、特に顕著または重度の場合、結膜充血を伴う短期間の片側神経節性頭痛発作(SUNCT)および自律神経症状を伴う短期間の片側神経節性頭痛発作(SUNA)の症候群を示唆。
症状の分布
– 第2枝領域が最も多く38.1%
– 第3枝が35.2%
– 第2・3枝合併が14.9%
– 第1・2枝合併が5.3%
– 三叉神経第1枝領域に限局するのは稀(4.7%)
– 両側性3~5%(多発性硬化症などを考慮したほうが善い)
(神経治療 Vol. 27 No. 1(2010)より)
誘引(トリガー)
食べる
飲酒
歯を磨く → 歯痛と間違えやすい要因
ひげを剃る
顔に触れる
話す
化粧
そよ風
笑顔(表情の動き)
顔を洗う
Red flag
• 感覚異常
• 難聴や内耳異常
• 疼痛緩和の困難例
• Carbamazepineの反応不良 • 皮膚や口腔内病変
• 第1枝領域の痛み
• 両側性
• 40歳以下での発症
• 視神経炎の在
• 多発性硬化症の家族歴
BMJ 2014;348:g474
診療手順
MRIはMRAと一緒に実施(CTよりも優位)。
画像で探すべき病変は
• 副鼻腔炎。
• 頭蓋外で三叉神経を圧迫する腫瘤。
• 三叉神経周囲へ悪性腫瘍浸潤を示唆する病的 造影効果
• 海綿状脈動内腫瘤性病変。
• 多発性硬化症を示唆する脱髄所見。
• ラクナ梗塞ような視床や脳幹部病変。
• 小脳橋角部腫瘤
治療
・古典的な三叉神経痛のほとんどの患者および特発性TNの患者の第一選択にカルバマゼピン(テグレトール)またはオクスカルバゼピン。
→治療効果は研究でも明らかで58〜100%で完全またはほぼ完全な疼痛管理が達成できた。→ NNT2未満!(こんなんみたことない数字!)
・手術は、内服でに抵抗がある場合に検討する。
・二次性の場合もまず使用する薬剤は同じものから。
カルバマゼピンの副作用
吐き気、嘔吐、下痢、低ナトリウム血症、発疹、そう痒症、眠気、めまい、ぼやけたまたは二重の視力、嗜眠、および頭痛など。カルバマゼピン誘発性の白血球減少症は珍しいことではないが、通常は良性といわれる。
*稀だが重症な副作用;無顆粒球症、再生不良性貧血、重症薬疹系、肝不全、皮膚炎/発疹、血清病、膵炎、ループス症候群、および低ガンマグロブリン血症など
外科的処置
– 神経ブロック
– 微小血管減圧術
– 経皮的Gasser 神経節高周波熱凝固法 – ガンマナイフによる治療など