多言語の中で育つ子供へのフォロー制度

私の子供は1歳10か月ごろ、予防接種を受けた際に発語の少なさを指摘されました。指摘されたといっても「まだ心配するには早いけれど、そういった専門の機関の待ち時間がすごく長いから、今のうちから登録しておくといいよ」という感じで念のために紹介状を書いてくれました。

Community Audiology and Speech-Language Program

BC州では日本語でいうと保健局と言われるような機関があり、いくつかのエリアに分けられています。私の住まいはバンクーバーなので、管轄はVancouver Coastal Healthですが、おそらく他のリージョンでもこのプログラムがあると思います。クリニックからでも紹介してもらえますが、私は予防接種をした際に看護師から紹介を受けました。のでわざわざクリニックに足を運ばずに、直接Community Audiology Centreから予約の連絡を受けました。(確か私が電話したのではなく連絡が来たと記憶しています) ここでは様々な言語、聴覚等の心配事に対処してくれるので、言語発達の遅滞、ある程度の年齢になっても文章が作れない、ソーシャライズできない子、そして発声に問題がある場合も対象です。

まずは聴覚検査から

とにもかくにも言葉を発さないのはまず言葉をキャッチできてない(学習できていない)からでは?というところから、一番最初に聴覚検査を受けます。大きい子はどうかわかりませんが、幼児の場合は小さなマジックミラーの部屋に親子で入り、親子が向かいあわせで座ります。そして外から光や音、仕掛けが出るように操作されますので、親はがそこに目を向けたり子供の注意が逸れるような声掛けをしたりしてはいけません。これが結構難しかった。うちの子はおもちゃで遊びつつも音が鳴れば振り向き、聴覚には問題はありませんでした。

Speech Language Pathologist SLPと出会う

そのあとは予防接種を受けた時と同じCommunity Health Centreに後日戻り、SLPとのアポイントメントです。予約の際に日本語の通訳をつけますと言われていたので、予約日時に到着すると通訳の方も来てくれていました。まずは問診を受け、年齢ごとの目安となる項目をチェックしていきます。ちなみに親の妊娠中の異常や早産児でなかったか等も聞かれます。日本も同じだと思いますが、何語(または何語文を)話すのか、目線が合う、呼びかけに応じるetc.発達検査のようなものに近いと思います。その子に合わせてその後どうすればよいのか等を話し合っていきます。

More Than Words

私が数週間かけて実践したことは「More Than Words」というセラピー本を利用して、子供の興味の引き方や表現が苦手な子の意思表示のさせ方などを練習しました。例を挙げると【子供が車を一列に並べていた場合、まだ並べていない車を転がして見せたり興味を引く行動をする、もしくは、これは赤い車だね。のような声かけをする】親が多いそうです。実際私も似たようなものでした。しかし、【子供の向い側で同じことをする(車を同じように一列に並べる)】と、すごく食いついてくるんです。子供がブーブー言いながら車を動かしたら、親も同じ動きをする。これには本当に効果があって驚きでした。発達の程度によってたくさんの方法が書いてあります。この本はレンタルもしてくれますし、専門書を取り扱っている書店で購入することもできます。日本語を引き出すのに英語のセラピー?と思う方もいると思いますが、通訳さんとの相性もありますが何とかなります。

セラピーに通う期間

これは本当に様々だと思いますが、私は初めてSLPに会ってから約1年ほどお世話になったと思います。初めは2週間に1回を3か月くらい、そのあとは1か月に1度ほど近況報告をしたりしました。結局発達には問題なく、発語も出てきたので今はたまに連絡を取り合う程度です。心配があればアポを取ってもらえますし、他のトリートメントが必要な場合は然るべきところに連携してもらえます。

SLPに言われたこと

うちは完全に家庭内では日本語なので、私の子供の母語は日本語です。初めに言われたことは「英語はできるだけ避けてください」でした。私は他州に住んでいたと書きましたが、バンクーバーのように日本語のプリスクールやプログラムは全くなく、英語のストーリータイムに参加したりしていました。それがダメだったわけでは決してないのですが、これから成長していくにつれて、環境は自然とどんどん英語になっていきます。なので今必要なのは母語で、英語ではないというのが(そのSLPの?)考えでした。「人間みんな楽な方を選んでいくのが自然なので、子供にとって英語はチョコレート、日本語はブロッコリー。ブロッコリーが栄養満点なように、あなたの子にとって日本語はとても重要で、大人が意識してブロッコリーを食べさせないと、手軽で甘くておいしいチョコレートばかり食べるようになる。母語というのはそれくらい大事。」とのことでした。私は所謂「早期英語教育」のようなものを重要視していないので、その考えがストンとハマった気がしました。家でもバイリンガルな環境の子供はまた違うと思います。

まだまだ未知なる移民2世の育児

結局は日本語の言語発達に全く問題なく、英語環境でもなんとか理解しながら集団生活を送っている我が子。周りの子供たちを見ていても十人十色で、私と同世代の移民2世を見ていても「親が厳しかったからキープできた」「すっかり日本語を忘れていたが大人になってから猛勉強した」などいろんな背景があります。これから就学したらまた更なる壁がたくさんあるのでしょうが、そこでもサポート制度は最低限あるようなのでなるようになるかな。と感じています。日本語の文章を読んだり書いたりするのが大好きなので、英語の習得が遅れることがあったとしても、そういう部分は大事にしてあげたいなと思います。

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