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京都狂想曲

平日の会社のお休みに、かねてより行きたかった古都京都に行きたいと思うものの、なかなか重い腰が上がらなかったが、何十年振りかに会った友人に背中をバーンと押された。

「行こうよ、行こうよ!なんならレンタカーだって運転するよ!」
彼女は下積み時代に、暗く部屋に籠っていた私を、車で外に連れて行ってくれたり、ご飯を食べさせてくれたり、お世話になったことは計り知れない。
お互いの引越しや子育てで、疎遠になったものの、ずっと会いたいと思っていた。

その日から、私の京都大調査が始まった。今時珍しい冊子の観光ガイドも買った。過去にも買ってあった出版社の最新版を買った。
今思えば、別な出版社の物を買った方が情報が増えてよかったと思うのだが、似たようなものを買った。

職場の京都通の人においしいお食事処を紹介していただき、予約だってちゃんとした。
お食事に合わせた濃さの緑茶を出してくれる烏丸御池にあるお店。

京都は京都駅からだいたい二、三十分離れた所に見所がたくさんあることがわかった。
だんだん京都の街並みが頭の中にインプットされて来た。

そこで気がついたことが二つ。
私が行きたいと思っている長楽館と萬福寺がどこにも出てこない。
長楽館は宿泊もできるおしゃれな洋館だが、洋館だからか?
萬福寺は中国明朝様式だからか?
誰も京都に日本以外を求めていないと言うことか?
長楽館は単品で調べて、京都駅からタクシーで優雅に行けばよいことがわかった。

職場のランチ仲間推薦のお茶の一保堂茶舗、コーヒーのイノダコーヒー本店、チョコレートのマリベル京都本店。
梅を見るなら定番の北野天満宮に、枝垂れ梅の城南宮。
歴史の香りとおしゃれ感がぷんぷんする!

しかし、そんな時に限って、突発の仕事の締め切りが迫って来る。
そして、寒波も迫って来る。
いつもだったら、雪だって溶ける二月末なのに。

メンタル弱め系の私はすでにいっぱいいっぱいになって来た。
またか?あの例のやつが発動されるか?

持病の病院に行って、血圧を測った時、それは発動された。
「職権発動します!」
何が職権発動なのかわからない方も多いと思いますが、イチケイのカラス好きな方はわかると思います。
なんのことない、いつものことになったと言うことが言いたかっただけです。

いつものこと。
それはドタキャン。

血圧低めの私としては最高値。
テレビコマーシャルでよく聞く、「血圧130超えたらなんとか茶」の130をきれいに超えていた。しかも頭が痛い。

そうだ、京都行かない。

その日は宿のキャンセルが効く最終日。
決まったら早い。
友人へそそくさとキャンセル依頼。

かかりつけ医に言わせると、たいした血圧ではないと。
帯状疱疹の時も、医者に会社を休む必要はないと言われても、会社を休んだ私である。
私にとってはたいした高血圧だ。

日々、京都ガイドを見ていて、すでに京都に行った気になっているが、雪の中、風情ある京都にいる自分が浮かばない。
寒さに震え、ホテルに籠り、なんのために行ったかわからない自分しか見えない。

一緒に行くはずの友達には本当に申し訳ないことをしたが、キャンセル後、体調は見事に落ち着いた。
体って正直。

ぽっかり空いた休みには、未練たらしく、京都が舞台のドラマを観ていた。
「ながたんと青と ーいちかの料理帖ー」
門脇麦さんが女料理長の、京都とおいしい料理が出て来る、おいしい物好きの私にはたまらない作品である。
ながたんとは京都の言葉で包丁、青ととは青唐辛子で、若いお兄さんのことを指す。

京都を調査した後は、東京はなんて新しい街なんだろうと思えてしまった。
私は中学生の頃から京都好きで、京都の方と文通していた。
大学の第一志望は恐れ多くも京都大学と書いて、先生に怒られ、親が呼ばれた。
先生は第一志望は夢でよいと言ったのに。

どうして人はこんなに京都に惹かれるのだろう。
私の勝手な推測だと、前世で京都に住んでいたか、前世から都に憧れを持っていた人が多いのではないかと。

京都に次に行ける日まで、京都関係のドラマや映画、天ぷら、お寿司、お抹茶でお茶を濁す私だった。

私が京都に行く日は来るのだろうか?
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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