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Vol.2 マチ子(ボンボヤーズ)
第二弾は、今年のレコードの日に7インチシングル『亜熱帯道中』を発売した、ボンボヤーズのアコーディオン&ボーカル、マチ子さんです!
【今年の漢字】
白
理由: 清く美しい赦しの色。
韓国の映画監督パク・チャヌクの作品「親切なクムジャさん」のラストシーン、無垢な子供が一面の雪景色の中、口を開き暖かい吐息で包んだのは「モア・ホワイト」という台詞でした。
復讐のために人を殺した主人公が、装飾のないショートクリームケーキに顔突っ込んで自らの罪を嘆くシーンで発せられたこの言葉には、すべての人への赦しがありました。
罪と向き合うあなたはすでに白いのです。白いあなたはこれからの生き方でもっと白くなってゆくのです。
目から鱗ポロリのこの台詞を実践したいと思った一年でした。来年もモア・ホワイト。
【今年聴いた音楽 BEST5】
・Toninho Horta "Toninho Horta"
影を内包しつつ熱く盛り上がったリオ・オリンピック開催国のブラジルより、今年はトニーニョ・オルタ氏が来日しました。
ブラジル大使館での歓迎会を兼ねたコンサートでは、たゆたう繊細な音程の歌声と爪弾くギターのリズムに顔ほころぶばかりでなく、彼の促すままにポルトガル語で大合唱する日本人の観客たちに驚いたのでした。
自らの名前を表題とした本作のみならず、北ブラジル地域の音楽"フォホー"を取り入れたアルバム"Com O Pe No Forro"もとてもオススメです。
フォホーはリズミカルでアコーディオンが活躍する音楽なので個人的に激アツ。来年はちょっとポルトガル語できるようになりたい。
・various artist "過去のない男 オリジナル・サウンドトラック"
音楽を聴く時に、よく「自分が映画を撮ったらこの曲のためにこんなシーンを用意したいな」というようなことを考えます。
逆に言えば、ピトレスクな音楽を好んで聴いています。フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキも、もしかしたらそういう所があるんじゃないかなあ、なんて。
日本人アーティストの曲が使われていたり一見してジャンルがごちゃまぜなのに不思議と調和があります。わたしはサントラを先に聴いて気になって映画を観ましたが、そんな見方をしてみても面白いかもしれません。
・二村定一 "街のSOS"
戦前歌謡ファンなら知らない人はいない二村定一先生の作品集です。
ボンボヤーズでは彼の持ち歌"アラビヤの唄"がレパートリーになっていますが、原曲はどこらへんが"アラビヤ"なのか全く分かりません。
ということで、われわれの演奏する"アラビヤの唄"では、安易な思考でアラビヤコーナーを作りました。
ネットで調べて頂いたらすぐに分かりますが、あのご尊顔で学帽を被りエッチな歌謡曲を歌っていたんですからなんとアクの強いこと。
エッチな、と言えば、今年出版された蓮實重彦先生の小説「伯爵夫人」は耽美で官能的かつユーモラスな作品でしたが、時代背景も1920年代以降、二村定一やエノケンの活躍した頃とそう遠くないかと思います。
ちょうど"エロ・グロ・ナンセンス"と呼ばれる大衆文化の流行した時代で、まさにこのアルバムではそれを感じられます。小説もぜひどうぞ。
・Flying Lotus "You're dead!"
絶対親に見つかりたくない漫画をポップに描き続けている駕籠真太郎先生がCDジャケットを描いたということで見てみるとアメリカのFlying Lotusでした。
彼の2年前の作品で、めちゃめちゃ売れっ子ですがこれまで自分の周りで聴いている人に会ったことがないので同じような趣味の人たちの反応が知りたいです。
モダン・ジャズやヒップホップのサウンドに明るい方ならずっとうまく解説できるんだと思いますが、わたしのようにそのジャンルにそんなに興味がなくても怖かったり心地よかったりかっこよかったり気持ち悪かったり、なんらかの感想があると思います。音の可能性があります。
・SOZORO "ゴッホのタッチ"
喫茶店でこのアルバムが流れていて、店員さんにこれ誰ですか?と聞いてしまう程度には引っかかりのあるグループです。
ギターと歌の男性ボーカルと、アコーディオンのデュオです。猫の舌で舐められるような独特な歌声が、うす暗くちょっとカビ臭いバーのカウンターでくすぶっているような音楽。
退廃の中に日本の古い歌の朗らかさや南米のリズムも感じられます。解散しちゃったのがとても惜しい。
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以上、ボンボヤーズのマチ子さんでした。
彼らの雷鬼(中国語で「レゲエ」ってこう書くらしい)も、ぜひチェックしてみてくださいね。下のジャケ写をクリックしたら試聴画面に飛ぶよ!
次回は明日!
第3弾コアントローズの河村君(key&vo)、
第4弾本日休演の岩出君(gt&vo)です。
お楽しみに!