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「がんなの? どこのがん?」と聞くご近所さん
散歩を終えて帰ってくると、お隣の奥さんが車の掃除をしていた。
挨拶をしたら、
「おたくとの境界がひどいことになっているので業者をたのんでもらえませんか」と言われた。
まあ実際、お隣さんはきれいにしているのにうちは雑木も雑草もぼうぼうだから言われるのも当然だ。
裏の奥さんのように「森のようで素敵」とは言ってくれない。
「業者は頼んでます。ただ忙しくてなかなか来れないみたいです」というと一応、おさまったようだった。
ちょっと死んだふりをしようと、「私も旦那も療養中で作業できなくて」と言ったのがまずかった。
「療養中?がんです?」
「ええ、まあ」
「どこのがんです?」
炎天下で立て続けに畳みかけられた。
帽子にマスクで表情はわからないけど、心配しているような表情でも声でもない。
もともと気が短いし、仲もよくないお隣さんだし、瞬間湯沸かし器(死語)が沸騰した。
「そこまで聞くんですか?」
とそのまま行くと、
「まあ、そうよね」とかなんとか言っていた。
先日、裏の奥さんが「療養中、悪いんだけど」と回覧板の話をしにきたときに、ご近所では「療養中」になっているんだな、と思っていたが、情報源はこのあたりだったのかな?
娘が高校生のときにも、嫌がる娘に立ち話で根掘り葉掘り聞き出していたからな。
離れたブロックに住んでいたお義母さんにもいろいろうちのことを聞き出そうとしたらしい。
がんであると伝えているのは、職場と韓国語講座の仲間だけで、実の兄に伝えたのも、神戸旅行が決まったつい先日なのに、病気情報という個人情報でも最たるものを、炎天下の立ち話で聞き出そうとするんだな。