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読書メモ|日本成長戦略 40歳定年制|経済と雇用の心配がなくなる日 |柳川範之

 問題は、このままでは今の状況も維持できないとわかっていても「なんとかなっているんだから、せっかくの既得権を手放すことはないだろう」という見込みであり、「自分のところだけは認めてほしい」という期待である。「年金をいままでのように手厚く払っていたらつづかないことはよくわかる。でも、自分の年金は減らさないでほしい」「自分からはあまり取らないでほしい」それが個人の心情だ。それが積み重なって「現状を変えない」という大きな力になっていく、このジレンマがある。
 国の借金(国債)は、外国から借りている場合、返さなければ極端な大増税によって国民の財産から返済していくしかない。ただし、日本の場合、外国からの借金は9%でほとんどを国内で借りている。家計内でお母さんがお父さんに貸しているという状況に近い。家計全体でプラスマイナスゼロ。(略)なんの問題があるのかという人もいるわけだ。しかし、お母さんのポケットは無尽蔵ではないし、お父さんへの信頼が揺らいでくる。その際、国が強制力をつかって動かせるなら問題ない。相続税100%、消費勢40%、あるいは借金棒引きの「徳政令」(略)実際は、そこに至る手前で借金がしにくくなる。つまり国債の暴落だ。長期金利はあがるけれども、売れない。貸してくれるひとがいなくなる。
 今は創業者やオーナー経営者は少数派で、多くがサラリーマン社長である。そのため、(リスクテイクは非常に重要なことだが、リスクのある案件には手を出さず)とりあえず3-4年そこそこの業績で同業者と横並びにできれば、社長としては無事勤め上げたということになってしまう。

第1章 新しい日本の形をつくる

 グローバル化が進行するなかで、少子高齢化と人口減少の進む日本では、働けるのに働こうとしないひとを養っておける余力はなくなっている。
 
若くて社内失業者になるのは、能力ではなくミスマッチのまま入社してしまったケースが多い。(略)その会社が自分にあっているかどうかなど、就職活動をしたくらいではなかなかわからない。企業の方も、面接をどれだけしてみても、そのひとの適性などは完全にはわからない。
 いったん仕事を辞めると、女性の場合とくに、正社員で就職するのが非常にむずかしいのが現実だ。派遣やパート、アルバイトなどの低賃金の非正規雇用で働かざるを得なくなる。それにしても3人に1人が貧困状態というのは異常である。(略)同年代の単身男性も4人に1人が貧困状態なのだから決して低くはない。

第2章 日本を活気づける「40歳定年制」

 エド・ラジアという著名な労働経済学者の賃金モデルは通用しなくなった。点から右側の三角形は、未払いの給与であり「社内貯金」なのだが、明示されたものではないため、バブル崩壊後、この世代を狙い撃ちするように切り捨てた。
 そもそもラジアの年功型賃金モデルのような日本型雇用の賃金メカニズムが機能した期間は想像以上に短い。(略)新卒入社の時点で定年退職が約束され、本当に実現されたのは入社時期でいえば10年間もない。成功体験が華々しかっただけに、それにひきずられている。
 もともと解雇規制というのは。判例を重ねてできた判例法である。整理解雇の4要件は、積み重なった判例を明文化したものである。
 デンマークやスウェーデンなど北欧諸国では、解雇が自由にできるかわりに、手厚い社会保障が失業者に対してなされる。が、重要な点は、この給付は1-2年しっかり教育を受けて新しい能力を身につけるために使われるという点だ。(略)「新しい能力を身につけるために国が支出をする」という考え方は日本にとって重要だと思う。

第3章 日本型雇用の終焉と再構築


『ラジアー理論』日経ビジネスより

 勉強するという点においては、一度働いて何が自分に欠けているか、よく認識できたあとのほうが真剣味がまるで違ってくる。勉強に身が入ると思う。しかし、現状では正社員の地位を捨てることのリスクは高く、(大学院で勉強したいので会社を辞めようとおもう)というのは少数派だ。1-2年大学なり大学院なりで勉強すれば、転職マーケットでの評価も高くなり、選択肢が広がるはずだ。
 思い切ったことをいえば、経済学部などは高校を出てすぐには来ない方がいい。経済学や法学など実社会に結びついている学問は机上の空論に終わってしまう。(略)大学に入ることが目的になっていて、入学後は勉強しないと指摘され続けているが日本の大学生だ。(略)大学に入る前に実際に働いてみて、自分に何が必要かと考えて学ぶことが大切になる。
 「40歳定年制」の突破口になるのは、新しい企業ではないかと思っている。「我が社は40歳定年です」「65歳以上のひとを雇用します」「女性を活用するため、こんな契約にします」と打ち出して雇用の概念を変えてくれるはずだ。
  ライフネット生命は、定年制を設けていない。中途採用には60代もいるという。新卒の定義もユニークで「30歳未満で、いろいろなことに挑戦してきた人」という。また、岐阜県のプレス板金部品メーカーの加藤製作所は、60歳以上限定のパートシルバーを積極的に採用している。
 終身雇用、年功序列だった日本型雇用はすでに終わっている。部分的に機能しているところはあっても、残照にすぎない。
 債務危機に陥ったギリシャは、就業者の4人に1人が公務員だとされ、しかも給与水準は民間より高かった。

第4章 何度でも働ける社会へ

 大事なことは、その変化が急速だということだ。変化の激しさに対応して、知識やスキルを高めていく、場合によっては新しい知識を身につけている努力をしていく必要がある。

おわりに

著者の経歴(ルラ大統領が労働党を立ち上げる数年前のブラジルで学生時代を過ごしていて、学校に通わずというか通えなかったのではないかとおもうけど、独学で大検とって大学に入って学者になってるところ)に興味を持ち読みました。ダニエルピンクのフリーエージェント社会の到来は2002年、22年経ってもムーブメントは来ない感じですが、40歳定年制も難しいのかもしれません。とはいえ、自分自身はお菓子屋と別に経理とデータ分析を活かした仕事を始めています。ポートフォリオを分散するみたいに収入源や貢献先を分散するのは、実際いい感じです。人生100年は長いけど、いかに退屈しないで過ごすかと考えると、新しいことや、少し難しいことをやるのがいいですね。


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