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読書メモ|フリーエージェント社会の到来 組織に雇われない新しい働き方|ダニエル・ピンク
高い技術を持ったホワイトカラーの臨時社員は、従来型の会社員よりも概して収入が高い。その一方で、専門技術のない臨時社員の置かれた状況は厳しい。事務職の臨時社員は、正社員の事務員より給料が少ないのが普通だ。
大手銀行ウェルズファーゴの調査によると、新規ビジネスの69%はオーナーの自宅に拠点を置いている。
自宅ベースのビジネスの半分は、メンテナンス(清掃・建築・修繕など)とビジネスサービス(データ処理・グラフィックアート・会計など)の2つの分野に集中している
一時はニューエコノミーの寵児ともてはやされたネットスケープという会社の歴史を振り返ればよくわかる。この会社が誕生したのは1994年、翌95年には株式公開を果たした。しかし99年にはもうこの世から消えてなくなっていた。AOLに吸収合併されたのだ。
重要なのは、企業の寿命が短くなっているこの時代に、私たちひとりひとりの寿命は長くなっているということだ。これからは勤め先の企業より長生きするのが当たり前になる。
マズローが早くも1962年に指摘していたように、自己実現を得るためのおそらくいちばんいい方法は仕事だからだ。「人は誰でも無意味な仕事より意味のある仕事をしたがるものだ。仕事が無意味だと、人生も無意味に等しくなる。」しかし、多くの職場では従業員の自己実現の追求は認められていない。そのためマズローのピラミッドの頂上に登るためには、多くの場合、会社を飛び出すしかなくなる。給料とストックオプションはもちろん大切だけれど、いまや仕事の目的は金だけではないのだ。仕事に意味を求めるようになったのである。
大半のフリーエージェントにとって「自由」とは、行動の自由、選択の自由、それに意思決定の自由である。心理学者のミハイ・チクセントミハイは「高度な技術が求められる仕事を自由に行えると、その人の自我は豊かになる」のに対して「高度な技能が必要でない仕事を強制されてやらされる」ほど気が滅入ることはほとんどないと述べている。
大半のフリーエージェントにとって、必ずしも「大きいことはいいこと」ではない。自分にとっていいことこそ、いいことなのだ。出世や金など「共通サイズ」の基準で成功を目指す時代はもう終わった。自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐など「デーラーメード主義」のアプローチをとることによって、フリーエージェントの人たちは仕事に高い満足感を得ている。
「成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ」とディランは歌っている。
仕事そのものもご褒美であっていいはずだ。仕事を楽しんだほうがいい。自分らしくて、質の高い仕事をする。自分の仕事に責任を持つ。なにを成功とするかは自分で決める。仕事が楽しくないと感じることがあれば、いまの仕事が間違っていると考えるのだ。
「だんだん閉塞感が強まっていった。人脈も狭まるばかりで、知り合いは会社の同僚だけ。これは危険なことだとおもった」会社員時代の彼は仕事の「分散」を行なっていなかったのだ。
彼らの忠誠心は、個々の企業に対してよりも、テクノロジーの進歩とシリコンバレーという街に向けられている。なにをして生計をたてているかという質問に対して3/4は自分の技能や職種を挙げてこたえた。会社の名前をあげたひとは1/4に満たなかった。
フリーエージェントと顧客の関係は本質的に短期的なものであるため、ひとつひとつの顧客や仕事を大切にする。
フリーエージェントは、能力と引き換えに機会を手にする。機会とは、魅力的なプロジェクトで働く機会の場合もあれば、新しい技能を身につける機会の場合もある。新しいひとと知り合い人脈をひろげる機会の場合もあれば、仕事を楽しむ機会の場合もある。もちろん金を儲ける機会の場合もある。
「フェデックスの配達員は、ただ、荷物を受け取って配達するだけではありません。みなさんが信頼することのできるお馴染みの顔なのです」この広告は私の状況にぴったり当てはまっていた。家族以外で顔を合わせるのは、私の家に来るフェデックスの配達員だけと言う日も珍しくないのだ。
経済の最も重要な資源は、金融資本ではなくなくなってきているようだ。今最も不足していて、最も貴重な資源、それは才能であり、人材だ。「才能を持っているものが勝つのだ」
社会学者のクリステナ・ニッパートエングによれば、仕事の世界には2種類の人間が生息しているという「セグメンター(区別するひと)」と「インテグレーター(一緒にするひと)」だ。セグメンターは家庭と仕事の間にゆるぎない境界線をひく、インテグレーターはその反対。
自宅で仕事をする場合は、まず在宅労働許可を申請しなくてはならない。仕事場が安全で近隣に危険がないと職員が調査して認められば家で執筆の仕事を始めることができる。ただし、実際に自宅で仕事を始めるには特別の税金も納めなくてはならない。それにバーバンク市の条約によれば、自宅オフィスは400平方フィート以内、家の敷地面積の20%いないでなければならない。ガレージなどを仕事場にしてはならない。仕事場で車を修理したり、犬を飼ったりしてはいけない。一緒に働いていいのは同居している人間だけだ。つまり打ち合わせは家の外でしなくてはいけない。
スタンフォード大学のハワードグレッグマンの試算によると税制が複雑なせいで徴税費用で1000億ドル以上、脱税で1000億ドル、そして人々が税制上有利な投資をしようととすることによる歪みにより1000億ドルの税収が失われているという。複雑な税制は納税者にとって最も深刻で重い負担になっている。ようするにフリーエージェントになるということは、二重課税はされるし、医療保険料の全額控除は認められない、複雑な税法をいちいち調べなければならない。しかしこれで驚いてはいけない。ニュージャージー州では、556の自治体ほほとんどで、自宅で働くことは違法とされているのだ。在宅労働者に最高1000ドルの罰金と90日の禁固刑を科している自治体もある。
臨時社員の55%は医療保険に加入していない。
派遣会社のとる仲介料は30%にものぼるのだ。
金についてだけではなく、やり甲斐の面でも不満を抱いている。臨時の労働力に与えられる仕事は、だれにでもできる仕事である。これでは自己実現など成し遂げられるわけがない。
劣悪な条件で働かされているのは、臨時社員だからではなく、正当な扱いを受けるための技能や交渉力をもっていないからなのだ。今日、不平等を生み出しているのは、会社員かフリーエージェントであるかではない。不平等を生むのは、需要のある技能を持っているか否かの違いであり、新しい人材市場における交渉力を持っているか否かの違いなのだ。労働運動もこの点に焦点を当てようとしているようだ。
7600万人のベビーブーム世代、これに対して若い「X世代」は4100万人でしかない。
「学校に通うというのは12年間の懲役刑で人生を始めるようなものだ。そこで学ぶのは悪い習慣だけだ。わたしは学校で教師をしていて賞までもらった。だからわかる」
1980年の時点ではほとんどの州で在宅教育は法律違反だったが、93年には50州すべてで合法化された。
21世紀には立派な大学の卒業証書よりも、インターネットへのアクセスと賢明な仕事仲間のネットワークが知識への切符になる。しかも生涯を通じて、何度も使うようになるだろう。そうした時代を告げる予兆はすでにいくつかある。
学歴の価値の低下 学位の耐用年数が短くなった
年長の大学生の増加 すでにアメリカの大学生の40%が25歳以上だ
教育のフリーエージェント化 遠隔教育の普及
名門大学の苦境 この20年で学費は跳ね上がったが質は見合うだけ向上したか?
勉強のためのイベントやグループの増加
〜フリーエージェントによる政治の変化〜
社会保障などの中心軸 … 企業 → 個人
政府の役割 … 安定の保障 → 機会の保障
労働政策の目標 … 安定性 → 流動性
労働運動の目的機能 … 従業員の賃金と労働環境 → 市民の福祉と生涯学習
企業、特にグローバルな巨大企業はなくならない。消えていくのは中間サイズの企業だ。「規模の経済」の恩恵を受ける企業はとほうもなく巨大化し、国家の規模に近づく。一方企業の小規模化もさらに進行し増え続ける。しかし、その中間の規模の企業は消滅するか存在感が薄まるだろう。
自分自身がフリーエージェントに向かってる気がしているので、興味を持って一気読みしました。