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読書メモ|イーロン・マスク下|ウォルター・アイザックソン

「全部ステンレスにしたらどうだろうか?」
ステンレスだとロケットが重くなると反論される
「計算してみろ。一度計算してみろ」計算してみると、スターシップの条件では軽くなる可能性があると判明する。極低温でステンレスは強度が50%増になる。さらに融点が高いので宇宙側に熱シールドを取り付ける必要がなく軽量化が図れ、普通の溶接で作れるメリットもある

第53章 スターシップ スペースX(2018-2019)

この機械を使えば溶けたアルミニウムを冷たい金型に吹き込み、わずか80秒でシャーシ全体をつくることができる。従来は100個以上の部品を溶接したりリベット止めしたり接着したりして組み立てなければならなかったし、出来上がったものはあちこりに隙間があったりカラカラ音がしたり漏れたりすることがあった。「というわけで、悪夢だったものが、アホみたいに安く、簡単に、すばやくつくれるようになってしまったわけです」この経験からおもちゃ業界はすごいと思うようになったとマスクはいう。工場の現場ではレゴブロックの精度を機械工に語って聞かせる。誤差は10ミクロン以下。だからどのピースを組み合わせてもカチッとはまるのだ。車の部品もそうでなければならない。「精度は金の問題じゃない。どこまで気を遣うかだ。制度をあげようと注意する気はあるか?それさえあれば精度は上げられる」

第55章 ギガテキサス テスラ(2020-2021)

ジェナの怒りに直面したことで、マスクはビリオネラに対する反発を気にするようになった。(略)2020年にすべてを売ってしまう。「実質資産は基本的に売り払うことにした。家も持たない」「モノというのは重りのようなものだし、攻撃ベクトルでもあると思うんだ。だからモノは持たないことにした。これでも非難できるものならしてみろってところさ」

第56章家族 2020年

宇宙飛行士を国際宇宙ステーションまで運べるロケットを開発する契約をスペースXと結んだ際、NASAは、2014年の同日付で同等の契約を予算60%増でボーイング社と結んでいる。だが、スペースXがミッションを達成した2020年、ボーイングは国際宇宙ステーションと宇宙船の無人ドッキング試験さえできていなかった
ドンチェフはブルガリアで生まれ、数学者の父親がミシガン大学に職を得たので子供のとき移民として米国に来た。大学と大学院で航空宇宙学を学び、ボーイングのインターンという夢のチャンスをつかむ。だがすぐ幻滅してしまい、スペースXで働く友達を訪ねた「これだよ!僕が求めていたのはこれだよ」って思いました。その夏、ボーイングのバイスプレジデントに「ボーイングも変わらないと優秀な人材を持っていかれることになるでしょう」とプレゼンした。だが、答えは混乱をもたらすような人材はいらないだった。「我々が求めているのは、能力的に最高ではないかもしれないが、辞めずにずっといてくれるひとなのかもしれないないな
ユタ州で会議が開かれた時、ドンチェフはポケットからしわくちゃの履歴書をとりだして、自分は結果をだせる人間だとアピールする。採用や昇格を考えるとき、マスクは履歴書やスキルより姿勢を重視する。狂ったように働きたいと望むのがマスクの考える「いい姿勢」だ。ドンチェフは即決だった。

第57章 フルスロットル スペースX(2020年)

「私は本気のフィードバックを返します。そのとき人格攻撃にならないように気をつけています。人ではなく行動を批判するようにしているのです。まちがいはだれにでもあります。大事なのはまっとうなフィードバックループをもっているのか、批判を求め改善してけるのか、そういう人間なのかです。痛みがあろうがなかろうが、物理学はとんちゃくしません。とんちゃくするのは、ロケットが正しくできているか否かです。」

第59章 スターシップのシュラバ スペースX(2021年7月)

現実的なビジネスモデルで高遠な目標を支えるのがマスク流だ。たとえばスターリンク衛星はスペースXの火星行きミッションを資金面で支えるために展開しているニューラリンクのチップは、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経系に問題を抱えているひとでもコンピューターをつかえるようにということで開発が進められている
マスクはシボン・ジリスを立ち上げたばかりのニューラリンクに誘った。「イーロンほど1分あたりに学べることが多い人にはあったことがありません。そういうひとに人生をつぎ込まないのは愚かだと思います。」

第65章 ニューラリンク (2017-2020)

ホワイトハウスで電気自動車の式典が開かれ、マスクは招かれなかったのだ。その理由をバイデンの大統領報道官は率直に語った。「招待された会社は全米自動車労働組合の組合員をたくさん雇っていますからね。」全米自動車労働組合がテスラを傘下にできない理由のひとつにストックオプションが工員に与えられていることがある。

第69章 政治 (2020-2022年)

ウクライナは支持するが、マスクの外交感覚は欧州軍事史を踏まえた現実的なものだ。2014年にロシアが併合したクリミアをたたくのはあまりに向こう見ずだ。実際クリミア攻撃は超えてはならない一線であり、核による反撃もありうるとマスクはロシア大使にいわれているのだ。(略)マスクは自ら指揮を執った。クリミア海岸から100キロメートルは(スターリンクの)サービスを切れと技術者に指示した。「ウクライナにスターリンクを提供し、維持するためスペースXが負担した費用はいまのところ8000万ドルです。我々がウクライナ側なのは明らかでしょう。ただし、クリミアを取り返そうとすればたくさんの人が死にますし、おそらくは失敗します。核戦争に発展する恐れもあります。そんなことウクライナにとっても地球にとっても悲惨です」「ロシアはなにがあっても、本当になにがあってもクリミアを手放しません。人類全体にとって益となる現実的な平和への道筋であれば全力でサポートします」

第70章ウクライナ (2022年)

ビルゲイツ「慈善活動について話したいのですが」
マスク「悪いのですが、気候変動の解決に1番尽力している会社、テスラに大規模な空売りをしかけている人がすすめている気候変動の事前活動など、真剣に考えることはできません

第71章 ビルゲイツ (2022年)

「まじめな話だ。9%の株主ではあの会社をたて直せないし、公開の市場は翌四半期より先まで考えたりできない。ふつうのユーザーに紛れているボットや詐欺師をぜんぶ洗い落とさなくちゃいかん」
マスクは言論の自由うんぬんからもっと先まで行っていた。音楽や動画や物語など、セレブやジャーナリスト、ふつうの人々が各自の作品を投稿し、望むなら支払を受けられる、そんなプラットフォームにしたいのだ。

第73章 「申し入れをした」 ツイッター(2022年4月)

「資金が尽きそうなスタートアップだと思え。もっと早く。もっと早くだ。遅れは必ずチェックすること。悪いニュースはこまめにはっきりと知らせろ。いいニュースはまとめてでいい。

第77章 オプティマスプライム テスラ(2021-2022年)

ロバート・スティール(投資家)はマスクのことを珍しいタイプだと思ったそうだ。選択肢が3つとか4つとかならんでいると、ふつうはどれがおすすめかと聞いてくる。マスクは選択肢について細かく尋ねてくるが、おすすめは聞いてこない。判断は自分でしたいということだ。

第78章 波乱含み ツイッター(2022年7-9月)

マスクはおもしろそうにツイッター本社を見て歩いた。10階建てアールデコ調のビルはリノベーションで。コーヒーバー、ヨガスタジオ、フィットネスルーム、ゲームアーケードを完備したテックヒップな建物になっている。9階のカフェにある食べ物は手の込んだハンバーガーから厳格な菜食主義向けのサラダにいたるまですべて無料だ。2階は会議室フロアで細長い木製テーブルにお菓子と水が山のように用意されていた。水はノルウェーのものやリキッドデスの缶など5種類もある。どれかいかがですかと尋ねられたマスクは「私はいつも水道の水を飲んでいる」と返す

第81章 「洗いざらい」 ツイッター(2022年10月26-27日)

「ここ1ヶ月で100行以上コードを書いた技術者を洗い出せ。全員について確認して、コーディングと真剣に向き合っている技術者をリストアップしろ」
技術者の贅肉をごっそり削ぎ落とす戦略の策定をマスクに指示された若い三銃士はコードベースをあさり、優秀でやる気のある人材を洗い出した。クロージングの24時間後にマスクは、三銃士に加え、テスラとスペースXの傭兵軍団40人ほどを集めると人員整理大作戦の実行を命じた。「ツイッターにはいまソフトウエア技術者が2500人いる、ひとりが1日にたった3行書くだけで年に300万行つまり新しいOSができるくらいかけるはずなんだ。でもそうなっていない。なにかおかしい。すさまじくおかしい。コメディじゃないんだから、さ。」「コーディングを知らない製品マネージャーが、どう作ればいいのかもわからないまま、機能の作成を指示しています。馬に乗れない騎兵隊長なんです。」

第83章 三銃士 ツイッター(2022年10月26-30日)

インドネシアで開かれているビジネスサミットにリモートで出席。次なるイーロンマスクになりたいと思うひとにアドバイスをと振られたマスクは「本当に私のようになりたい人がどれほどいるのでしょうか。私は異次元の拷問を自分に科していますから」

第86章 青いチェックマーク ツイッター(2022年11月2-10日)

「動かすのが難しいようには見えないよな」とイーロンが言う。現実を捻じ曲げる一言だ。なにせラックは高さ2,4メートルほどで重さは1本で1トンを超えるのだ。マスクは警備主任からポケットナイフを借りると、それで床の通気口を持ち上げ、フロアパネルを開いてしまった。続けて床下に潜り込み、サーバーの配線を引っこ抜いた。
サーバーラックの移動は専門家に頼まなければだめだって?「んなこたない。我々でももう四本もトレーラーに積めてるんだ。」
グリフィン、ダミアン、カイの3人もジェームズやアンドリューと同じく、数学や化学に秀でた才能を授かっている。カイは凄腕のプログラマーでカイの一卵性双生児ダミアンも同じくすごく頭がいい。ただ興味関心は違う。ダミアンはすでに一年以上も素粒子物理学の研究室で量子計算と暗号の研究をしている。グリフィンはアイビーリーグの一年生で情報科学のクラスでは450人のトップになっています。他にゼイビア改めジェナ、自閉症のサクソンもいる。

第92章 クリスマスの大騒ぎ 2022年12月

子供の数が減っているので人間の知性はそろそろ頭打ちになる。対してコンピュータの知性はムーアの法則という筋肉増強剤もあり、とどまるところを知らず急上昇している。パティオからは暖かな陽射しが降りそそぐ春の日、郊外にたつ家のどかな裏庭とプールが見える。明るい目をした双子がよちよちとあぶなっかしい足取りで歩いている。なのにマスクは地球文明がAIに破壊される前に、人類が生き続けられるコロニーを火星につくるとして残された時間はどのくらいかと暗い話をしているのだ。あまりに場違いな話で現実感がない。
ということは、マスクは、テスラ、スペースXとそのスターリンク部門、ツイッター、ザ・ボーリングカンパニー、ニューラリンク、X・AIと合計6社を経営することになる。スティーブ・ジョブズでも同時はアップルとピクサーの2社だったわけで、その3倍だ。

第94章 人間用AI X・AI (2023年)

「いろいろ大変だと思うが、みんなが作っているのは地球で最高にクールなブツなんだ。それを忘れるな。ダントツでクールなんだからな。2番目にクールなものはなにかって?しらん。とにかくなにが2番でもそんなものとは比べ物にならないくらいクールなんだ」
火星にコロニーを維持するには千隻くらいの船団を用意しなければならない。「今気にしているのは軌道です。文明が崩れ落ちる前に火星に到達できる軌道に乗っているか否かです」
打ち上げ試験をするには2桁にものぼる規制当局からの許可をもらわなければならない。彼らはマスクと違ってリスクを好まない。「あたまいてえ、こんなくそだらけでどうやったら火星までいけるっていうんだよ」「文明はこうして衰えていくんだな。リスクをとらなくなる。審判がどんどん増え、プレイヤーはどんどん減っていく

第95章 スターシップの打ち上げ スペースX(2023年4月)

上下でひと月かかってしまった。ちょっとしたヒーローものよりエキサイティングです。トヨタ自動車のことを書いた『トヨトミの野望』と、登場人物が実在のビジネスマンなところが少し似ているかもしれません(トヨトミは実名じゃないけど)。
それから、少し前にストックオプションを行使してオラクルの株を売却したラリー・エリソンは、スティーブ・ジョブズやイーロンマスクのメンターだそうです。
年始から取り組んでいた、コーセラのグーグルデータアナリストのコースも今日修了して認定証もらったので、やっと確定申告に取りかかれます😭


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