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読書メモ|資本主義の中心で、資本主義を変える |清水 大吾

 日本の資本主義社会においては、接待や日頃の付き合いなどで取引が決まり、商品力が後回しにされがちだ。つまり是々非々(忖度の反対)で物事が決まることが少ないという課題がある。

はじめに

 資本主義🟰「所有の自由」✖️「自由経済」
 日本では、墾田永年私財法により田畑の所有を認めて、農民の生産性を上げようとしたことが始まりだと考えられる。
 リーマンショックをはじめ、何度かの金融危機や地球環境問題、社会問題を目の当たりにして、誰もが「成長が目的ではない」と思っていたとしても、無限の成長を求めるかのような投資マネーは引き続き膨大に存在している。(略)「成長が目的ではない」に対して「総論賛成、各論反対」とならざるを得ないのだ。
 アワビの成長サイクルが3年なのだから、人間もそれに合わせた行動をすべきなのは自明の理であろう。(略)しかし「今だけ、自分だけ」としか考えていないひとが入ってきて小さいアワビを取り始めると、いずれアワビが採れなくなってしまうことを皆が理解しながらも、立ち止まることは考えられなくなる。
 パタゴニア社は、「地球を救うためにビジネスを営む」という理念に共感する若い世代を中心に絶大な人気を誇っている(略)創業者のシュイナード氏は、(上場により)短期的な利益を求めるプレッシャーに晒されることで、本来果たすべき責任が犠牲になってしまうと考え(略)約4,000億の価値があると言われる保有株のほぼすべてを慈善財団に譲渡した。
 (リーマンショックのとき)GSは新たに発行する株式をバフェットに買ってもらうことによって最悪の危機を乗り越えた。しかし、希薄化という形で株主に迷惑をかけているからには、会社側も相応の覚悟が必要となり、ざっと4人に1人が解雇されるような規模感で人員削減が行われ「これで危機は脱した」という安心感によって株価だけは急回復していった。(略)「GSというのはとてもよい会社だよ。でもそれは従業員にとってではなく、株主にとってという意味だ。従業員への配分を減らしてでも株主の利益を最大化することを求める株主に比べて、弱い立場にある従業員は、少しでも自社株を保有することで株主とのアンバランスを是正するしかないんだ」
 我々は、経済活動ができることを決して当たり前とは考えず、経済活動を可能たらしめてくれている存在(地球や安定した社会)に対して目配りをし、貢献しなければならない。
 それまで短期的な収益プレッシャーをかけてくる上層部に対する反骨心を持っていたのだが、かれらも上層部から同様のプレッシャーを受けていることに気がついた。では根源は社長なのかというと社長は社長で株主からのプレッシャーを受けているのだ。(略)機能不全をおこしている資本主義社会を変えるためには、特定のだれかを敵視するのではなく、お金の流れそのものを変えていく必要があると学んだ。

第1章 資本主義は「限界」か?


傾向として右肩下がりである|中小企業庁|https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b2_1_1.html

 「he is so nice」という評価はGSにおいては「お人よしすぎて使えないやつ」というニュアンスだ。
 日本では「プライム市場上場」というブランドが欲しいだけの企業が少なくない(略)われわれひとりひとりが形式ばかりにこだわり、是々非々で判断することが少ないという行動パターンに起因しているのだ。
 「安定株主(政策保有株式)」で会社は安定しない。株主総会において過半数で決まる議案はすべて会社の言いなりになってしまい投資家の声は届かなくなってしまう。(略)実際にわたしも「スーパーの株式を政策保有株式として買い増さないと、商品を棚から外すと言われて困っているんです」と相談を受けたことがある。このようなバーター取引が日本企業の競争力低下の要因となっているのではないかと私は考えている。
 自由経済下では、他社と違った取り組みをしているからこそ利益を得ることができるはずだ。にもかかわらず(略)日本企業においては他社と違った取り組みを嫌う傾向が非常に強い。
 

第2章 お金の流れを根本から変える

 今後も日本が富を失い続けるかというと、いずれ失うものがないところまで行き着くはずだ。もしかしたらそのときには、一時期のギリシャのように島を売却するしか残された手段がなくなるかもしれない。(略)残念ながら日本には効率性と規律(忖度なしで物事が決まるダイナミズム)が足りていない。
 日本が茹でガエル化してきた1番の要因は、強烈な「慣性の法則」にあるのではないか。今のやり方を変えることが合理的だと頭で理解していたとしても、行動を起こすことが自分にメリットがなく、無駄な争いに巻き込まれてしまうだけなのであれば、非合理的なやり方を続ける方が合理的な判断となってしまう。
 資本市場の情勢を鑑みて、その取引に責任を持てる水準で我々は価値を決めているのだから、他社がどうあれ責任が持てない価格を提示することはできない。(略)このような割り切りができれば、顧客と駆け引きをする必要がなくなる。その時間を自分たちの価値を高めることにつかえるようになり、それはブランドとなっていく。いずれ他社が容易には参入できない障壁を築くことができるはずだ。
 我々が安さだけを基準に消費行動をとる場合、知らず知らずのうちに環境を破壊し、安く従業員をこき使うような企業を応援してしまうことになってしまうのだ。
 コロナ禍の影響がほとんどなかった人でも「タダでもらえるんだから、もらわなければ損」と考えたひともいたのではないかと思うが、決してタダではない。将来世代から前借りしているだけなのだ。なんせ既に1,000兆円に迫っていた国の負債が加速度的に増えたのだから。
 外の世界を知らないひとばかりの集団だと「会社の常識、社会の非常識」という状況に陥ってしまい、「社会のために必要な会社」となるのは難しいことだろう。
 「自社の株なんて持ちたくないですよ」という方にお会いすることがあったのだが、自分が持ちたくない株を投資家に買ってもらえる理由があるだろうか?「自社製品なんてほしくないですよ」という企業があったら、消費市場で受け入れられるわけがない。
 個々人が社会の常識に無作為に流されることなく、独自の考え方を確立し、議論をすることで初めて新しい考え方は生まれてくるはずなのだ。
 米国では内部通報制度によって社会の不正が暴かれる可能性が高いために不正の抑止力になっている側面があるのだが、背景には高額な報酬がある。(略)2021年には1人の内部通報者に対して1億1,000万ドル(120億円)の報奨金が支払われた。(略)日本は民族の均質性が高く、性善説で物事がすすんでいく。内部通報制度も機能しておらず、数十年にわたる不正が見事に見過ごされていた事例があとをたたない
 経営の規模が大きくなって分業が進んだことにより、皆が自分の立場だけでものごとを考えることで手一杯となり、相手のことには考えが及ばなくなってしまった。分業が分断を生んでしまったのだ。
 「配当性向」ではなく、会社側がどれだけ内部留保させてもらうかという「内部留保率」の方が合理的な考え方ではないだろうか。配当性向30%ではなく、内部留保率70%という考え方だ。
 曖昧な定義のままに議論が進んでしまうというのは、国民の均質性が高く、あうんの呼吸でものごとが進みがちな日本では多いのかもしれない
 ROEは「Return On Equity」だが、「Return On Earth」(地球利益率)を提唱したい。

第3章 ピラニアを放り込め!

資本主義限界系は、これで好奇心はいったん満足しました。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で、本が読めないのは働きすぎが原因ってことで納得したものの、それにくわえて、スマホのせいで集中力がなくなっているのもある気がしています。(本が読めない パスドラやっちゃう 脳に悪影響 もっと本が読めない の悪循環)
アンデシュ・ハンセンの「スマホ脳」は読みましたが、川島教授の「オンライン脳」と「スマホ依存が脳を傷つける」も読んでみようと思います。
そして、何が悪くて、どう改善したらいいのかわかったら、あらためて学びたいことがあります。わくわくです。

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