SXSW2018 | Hype(一時的な流行)ではなく、本当に社会に浸透するVRコンテンツとは?
成熟するVR市場
SXSW2018の一つのトレンドとして、「成熟するVR市場」がありました。
VRはすでに「どう使えるか?」を探るニッチなテクノロジーではなく、エンターテインメントをはじめ、アートや医療など様々なビジネスでの活用方法が広がりはじめ、テクノロジーのメインストリームになりつつあります。
果たして、それらを幅広い人たちが活用するものに加速させるためには、どうすればいいのか?クリエイターはどうあるべきなのか?そんな議論が多くされました。
2014年から2017年までのSXSWにおけるVRの議論をふり返る
2014年は360度に動けることが喜びの時代でした。主にゲームの領域での出展などが多く見られました。
2015年になるとどんな体験を届けられるか?が話題になりました。スマホを利用したVRをUNICEFが展示したり、ポルノサイト大手のPornhubがVRポルノについて発表したりと、ゲーム以外のコンテンツの多様化が進みました。
2016年・2017年になると、表現だけでなく、新たな仕組み・ビジネスモデルの模索が議論の主軸になります。VRを使った住民参加型の都市設計プロジェクトや、NASAが火星のVR上でユーザーのニーズを募集するプロジェクトなどが発表されました。
2018年はコンテンツへの回帰。そしてクリエイターに求められるスタンスの議論が多くなった
SXSW2018の基調講演では、VRのゴッドマザーと呼ばれるNonny de la Peña(ノニー・デラ・ペーニャ)が登壇しました。
彼女の作品を振り返っていきます。
2012年 - Hunger in Los Angels
サンダンスに出品されたはじめてのVR作品。フードバンク(廃棄前の食材を食べ物に困っている人に届ける公的サービス)に並ぶ行列の中で、倒れてしまう男性を目の前にして何もできないことが体験できる。実際にあった出来事だ。OculusRiftリリース前に、同社元開発者とハードを開発して、VRコンテンツの体験を最大限に高めた。
2015年 - ProjectSyria
シリアでの難民キャンプの空爆を体験できる作品。ジャーナリズムの新しいあり方を提案した。人々が”身体的”に強い衝動を受けてしまう新体験をもたらし、SXSWでも過去に話題になっていた。実際にあった音声を使ったり、ヒアリングなどを重ねて、極めて現実に近い作品づくりを目指したとノニー氏は話している。
2017年 -Out of exile
LGBT問題を扱った作品。少年ダニエルが家族にカミングアウトした時に受けた暴行を、彼自身が録音していた音声にVRをつけたり、最新技術を使って再現。ホームレスや自殺者が多いLGBTは、家族に受け入れられず、家に帰れない人も少なくない。そのような問題について、実際に現場を知ることで、考えを改めるきっかけを与える作品となっている。
本当に広がるVRコンテンツ、そしてクリエイターに求められているものとは?
ノニー氏の作品を見てもわかる通り、ハードウェアや制作工程の制限を気にせずに、新たな領域を開拓していくことが、成熟期であるVRの中でクリエイターには求められています。
また、同時にこの年からVRについての倫理観のセッションが多く見られました。
ルールがないAR空間までも侵食してくる大企業は許されるだろうか?
ショックを与えすぎる映像を制作した時に、年齢制限などをつけなくて良いのだろうか?
VRショックでPTSDになってしまった人への対応はどうすべきか?
ビジネスとして成熟してきているからこそ、様々な分野で見直しが同時に起こっています。今後にも注目していきたいと思います。
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