SXSW2018 | 人工知能の進化に必要とされているコンテンツ
SXSWでは人工知能の議論は2015年あたりから少しずつ多くなり、2017年には「A.I Everywhere」とも呼ばれ、どんなところにも気づかないうちに人工知能が入ってきているという状態でした。
2018年は技術的な話だけでなく、人工知能を取り扱うコンテンツについても非常に注目が集まりました。
人工知能側の視点。人工知能後の世界は新しい倫理を必要としている
HBOが製作する大型SFドラマシリーズ「ウエストワールド」のアクティベーションが非常に話題になりました。
作品の世界観は、人間と見分けがつかないロボットがいるテーマパーク「ウエストワールド」で、ゲストである人間は何をしても許されるというものです。強盗、強姦、殺人…。ホストであるロボットたちはゲストが帰ると記憶が消されるため、覚えていない、はずだった。しかし、記憶を思い出す者が現れ、やがては自分がロボットであることに気づき自我に目覚める者も出てきて…!というストーリーが、人工知能側の視点で、人間が描かれていきます。
SXSWは早くから、人工知能や在りし人のマインドコピーは“人権”を持つのか、という議論を行なっていました。
問われるのは“人間とは何か?人間性とは何か?”ということです。
相手は生命がないとされる人工知能であっても、悪の限りを尽くすことを我々は良しとしていいのだろうか。今の時点で、誰も明確に答えることができないのが事実です。
技術は進歩し、衝突が起きてはじめて問題が顕在化する。予想していたこともあるだろうし、中には全く予想だにしなかった問題も出てくるだろう。クリエイターにできることは、潜在的な摩擦の箇所を予想し想像して、みんなに理解しやすい形で提供していくことだと思いました。
小説をつくる、シンギュラリティの提唱者、レイ・カーツワイル氏
2045年シンギュラリティ(人工知能が人間の知能を超える)を提唱したことで知られる研究者、未来学者のレイ・カーツワイル氏。
世間では、シンギュラリティにまつわる“恐怖”のシーンがよく描かれています。人工知能が仕事を奪ったり、反乱を起こしてやがてはを人類を支配しようとするストーリーです。
こうしたディストピアな未来に対して、カーツワイル氏は自らを楽観主義者だとしながら、しかし技術の発展によって、人間は今が一番幸せな時代であると主張しました。より民主的になり、貧困や暴力も人類の長い歴史から見れば減っているとのこと。識字率も一番高い。このような改善点について、 メディアで取り上げられることは少なく、よりセンセーショナルで恐怖を煽るものが発信されていく。シンギュラリティが一人歩きしているような状況だと言います。
人工知能をプログラムしていく上で、開発者自身も気付かずバイアスを持っているため、人工知能がバイアスを持ってしまうのは必然となる。バイアスが入ってしまうことを理解しながら開発していくべきだとも語りました。
こうした背景を踏まえ、カーツワイル自身は小説を執筆中。スーパー知能を持った少女が世界の難しい問題を解決していく話らしい。小説にすることによって、子供などにも読んでもらえることを期待している。今世界に必要なのは、希望の持てるストーリーだということを提唱者自身が実践している例でありました。