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目的を持ったコミュニケーションで、企業とスタートアップの触媒に

【MIRAI KOUBOU入居者紹介】 アステラス製薬株式会社 高橋 竜久さん

みらい創造機構では2017年よりパートナー企業を中心に出向者を受け入れてきました。「MIRAI KOUBOU入居者紹介」では、みらい創造機構のコワーキングスペースMIRAI KOUBOUに入居する、大企業からみらい創造機構へ出向者のみなさんの実体験や学び、また、入居する関連会社、スタートアップについてお伝えします。

今回は一昨年から今年3月まで出向頂いた、アステラス製薬株式会社の高橋竜久さんのインタビューをお届けします。
製薬会社の研究所出身で博士号を持つ高橋さんが、畑の違うVCへの出向で学んだことや出向期間中に成し遂げたこととは・・・!?

ー出向するまでどんなお仕事をされていましたか?

入社直後から研究所に配属され、がんや泌尿器疾患の新薬を研究していました。創薬化学といって、薬の分子構造をデザインし、それを自ら実験台で合成する仕事です。創薬化学に13年間従事した後、既存薬や開発中止化合物に新たな薬効を見出すドラッグリパーパシング(リポジショニング)の研究にも1年半携わりました。

ーなぜみらい創造機構(VC)に出向することになったのですか?

一日中実験台にかじりついて黙々と研究をするという日々は、研究者にとってはこの上ない環境でした。しかし、世の中と隔たりがあるというか、井戸の中で外界と全く違う時間軸にいるような感覚もあり、もっと社外の人と話す仕事をしたいと考えるようになりました。ちょうど、興味のあったデジタルヘルスケア分野にアステラスが着手したというタイミングだったこともあり、それを扱うRx+事業創成部への異動を目論んでいました。
運よくRx+事業創成部が主催するワークショップに参加させていただく機会があり、その打ち上げの際に、みらい創造機構へ出向するメンバーを探しているとの話がRx+事業創成部長から出ました。実は当時、みらい創造機構やVCのことはあまりよく分かっていなかったのですが、ここしかないと直感した私は中座した部長をつかまえて直談判しました(笑)。その心意気を汲んでもらい、数か月後に出向が実現しました。

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ー出向期間はどのように過ごしましたか?

スタートアップとの面談は70件ほど行いました。企業からの出向者ではあるものの、スタートアップ側からはVCの一員として見られていた感覚をよく覚えています。これは非常に刺激的だったと同時に、責任感を強く感じました。全く分野の異なる案件であっても、私のこれまでのサイエンス、医薬、ヘルスケアの知識と経験を総動員して、スタートアップやみらい創造機構に対して議論や提案をさせていただきました。
それと並行して、製薬会社がこれまでアプローチしてこなかった工学等の異分野シーズと組んでどのようなイノベーションを起こせるのかを、東京工業大学(東工大)で探るというミッションがありました。どう進めるのが良いか、私一人ではなかなか具体化できなかったのですが、みらい創造機構の岡田祐之社長、金子大介取締役とのディスカッションや、みらい創造機構を介してご紹介いただいた先生方との意見交換を通じてヒントをいただき、東工大全学を対象としたコンテスト形式のプログラムを行うことを決めました。
その後、東工大産学連携部門との協議を繰り返し、何ができて何ができないかを1つ1つ明確にしていきました。最終的に、Tech ARINA (Tokyo Tech-Astellas Rx+ INnovation Award)というアクセラレータープログラムを実施し、2019年末にはその成果報告として300人以上を集めたフォーラムも開催することができました。

ーTech ARINA (Tokyo Tech-Astellas Rx+ INnovation Award)に対する反応はいかがでしたか?

「斬新な取り組みだ」とか、「自分の大学でもTech ARINAのことを紹介してほしい」など、有難いお言葉を多数頂戴しました。また、イベントに参加された企業様からも協業のオファーを複数頂きました。大学と企業の組織対組織の取り組みに対して、一定のご評価をいただくことができたのでは、と考えています。

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ー出向中に学んだことは何でしょうか?

自分が何をしたいのか、出来る限り明確に伝えるべきということです。これまでは社内、それも部署内の人とばかり話していたので、阿吽の呼吸というか、勝手に行間を読んで理解してもらえていた部分がありました。ところが社外の人には、しっかりかつシンプルに伝えないと、まず正確に受け取ってもらえることはありません。そのためにも日頃から自分がしたいことのイメージをブラッシュアップしておくことがとても重要です。やりたいことのイメージが意外とぼんやりしていることが多く、それだと相手に伝わらず、良い方向に進んでいかない。たとえその場で盛り上がったとしても、いつまでたっても話が具体化されないということが繰り返されていると思います。何をしたいかの解像度がある程度以上になると、何ができるか論に変わり、そうして初めて具体的な計画の策定に取り組める段階に達します。これは、東工大でプログラムを作っていく中で、特に身に染みて学んだ部分と感じています。

ーみらい創造機構での経験を今後どのように生かしたいですか?

帰任後は、オープンイノベーションチームのリーダーとしてスタートアップや大学との提携検討に携わっています。Rx+事業創成部にはVC出向経験者が他に数人いますが、実際にスタートアップエコシステムの内側に入った者しか分からない、独特の肌感覚があると感じます。例えば、VCやスタートアップの社長が企業との付き合い方に対してどう考えているか。普通、企業人は一方向の見方しか経験していないので、双方向の見方ができるのは強みだと考えています。企業からVCへの出向を推進している岡田社長は、このような双方向の感覚を持つ人のことを二刀流人材と呼んでいます。企業とスタートアップとの間で触媒の役割を果たすのにとても重要な感覚だと思うので、これを活かして投資や提携の成立に繋げたいと思っています。

ーどんな人に出向をおすすめしますか?

何か変えたい人。変わりたい人。ただし、ここでもやりたいことがぼんやりしすぎていると自分探しで一年が終わってしまうので、ある程度の方向性があった方が良いと思います。私の場合は、とにかくたくさんの外の人と話すこと自体が当初の目的の一つでした。話をしていく中で、自分が出向中にやるべきことがさらに明確になり、大きな成果に繋げられた、と感じています。

高橋 竜久
アステラス製薬株式会社 Rx+事業創成部 Rx+企画推進グループ 課長
2004年に東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得。アステラス製薬へ入社し、がんや泌尿器疾患の創薬化学研究、ドラックリパーパシング研究に従事した後、2018年12月からみらい創造機構へ出向(同時期に、出向元の籍をRx+事業創成部に異動)。
2020年4月に帰任し、現在に至る。
趣味は、仲間と集まってワイワイやること。走ること。会社の同僚の結婚式二次会司会を6組行ったほか、自分の時の二次会も余興としてセルフ司会した。フルマラソンは自己ベスト3時間19分。日本一の100マイルトレイルランニングレース、UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)において、2018年に168kmを43時間40分での完走経験あり。




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