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児童手当拡充+子の扶養控除廃止で税負担はどれくらい増える??計算してみた

政府は6月13日に公表した「こども未来戦略方針」で、中学生までの児童手当の支給期間を高校生まで延長すると同時に、16〜18歳の子供がいる親の扶養控除の見直しも検討するという報道がありました。年収によっては児童手当の増加分よりも、税負担が大きくなるケースもあり得るようです。

給与収入で900万円を超えたあたりで負担増となるようですが、むしろ給与収入が年900万円を超える方は全体の内数パーセントです。給与収入が年600万円までで全体の約80%になります。報道では一般層にについてあまり言及しておりません。この記事では一般的な給与所得者がどの程度の影響を受けるか計算してみました。

国税庁 民間給与実態統計調査結果 *数値は令和2年度のもの

給与所得者の税金が決まるまでの流れ

  1. 給与収入(額面)から給与所得控除をします → 給与所得控除の速算表

  2. 給与所得が確定します

  3. 給与所得から社会保険料など所得控除をします → 所得控除のあらまし

  4. 課税所得金額が確定します

  5. 課税所得額金額を元に下記に沿って計算をして所得税の確定をします

上記の3の所得控除の中には社会保険料控除の他に、今回のテーマにもなる扶養控除も入っています。医療費控除やふるさと納税をした際に受けられる寄付金控除も所得控除の一種です。

扶養控除について(所得税の場合)

所得税における扶養控除について補足説明をします。家族を養っている納税者の税負担を減らすことを目的としております。
扶養控除は16歳以上の親族と生計を一緒にしている場合に受けられます。一緒の家に住んでいる場合はもちろん、進学等で親元を離れているけど仕送り等で生活費の面倒を見てもらっている家族も対象です。扶養控除額は原則として380,000円です。

ただし、1年間の給与収入で103万円超、所得で48万円超の方は扶養控除に入れられません。例えば、進学で親元を離れつつ仕送りを受けていた子供さんが就職し、正社員として年300万円の収入になっているけど、親御さんから仕送りも受けている場合などです。この場合は扶養控除に該当しません。

扶養控除の対象が16歳以上としているのは現行制度では中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)は児童手当が支給されるからです。

ちなみに、扶養する親族が19歳以上23歳未満の場合は特定扶養親族として控除の割増が有り630,000円となります。この他、70歳以上の親族を扶養していて同居している場合は58万円、同居以外の場合は48万円の控除が受けられます。

住民税の計算については過去の記事を御覧ください


実際に扶養控除の有る無しで税金の計算をしてみた

計算モデルは下記の通りとします。ざっくり計算なので実際の計算との差が出る点をご留意ください。(カッコ内の控除額は所得税のもの)

  • 40代男性

  • 妻の収入はパート労働で年100万円程度 (配偶者控除額:38万円)

  • 子供は18歳の高校生 (扶養控除額:38万円)

  • 社会保険料控除は下記注意書き参照

  • 上記の控除と基礎控除(48万円)以外の所得控除は無し

*社会保険料は中小企業が加盟する協会けんぽを利用し東京都の料率で概算する。更に雇用保険料も概算に入れる。
*住民税は前年と同じ年収で計算として、所得割の税率を10%+均等割5000円で計算


40代男性の年収が300万円の場合
子供の扶養控除有り 所得税14,600円 住民税49,200円
子供の扶養控除無し 所得税33,600円 住民税82,200円

40代男性の年収が400万円の場合
子供の扶養控除有り 所得税44,000円 住民税108,100円
子供の扶養控除無し 所得税63,000円 住民税141,100円

40代男性の年収が500万円の場合
子供の扶養控除有り 所得税77,400円 住民税174,900円
子供の扶養控除無し 所得税96,400円 住民税207,900円

40代男性の年収が600万円の場合
子供の扶養控除有り 所得税120,500円 住民税238,000円
子供の扶養控除無し 所得税158,500円 住民税271,000円

と、なります。年収300~500万円までは子供の扶養控除の有る無しで52,000円の増、年収600万円では71000円の増になります。


扶養控除の要件維持の議論にならないのは何故か?

上記に児童手当12万円が入るので計算では確かにプラスにはなります。少しでも年間の手取り額が増えるのは良いのですが、扶養控除の要件を維持という所に与野党の議論が行かないのが不思議です。

筆者も子を持つ親です。子の成長と伴に中学→高校→大学又は専門学校など就学にお金が掛ってきます。更に学費以外の費用も増えてくる年代です。そのため、将来の費用負担を見据えて子供が小さい内から消費を抑え、余った分を蓄財します。

児童手当の拡充と子の扶養控除の廃止をセットにすると、年間の収入で増えるのは10万円以下です。10万円に満たないプラスでは金銭的に子育て環境の大きな改善にはなりません。また、経済成長の観点から見ても一般的な所得水準の親世代に消費拡大をさせるに至る金額にもなりません。

国の運営を考えると税収と社会保障費のバランスを取りたいという考えは分かります。分娩費用の保険適用などは素晴らしいと思いますが、この児童手当の議論に関しても「異次元の子育て政策」となるよう願っております。

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