北海道大学法学部2・3年次編入試験(英語)の解説をします[第6回]
今回は、令和6年度の北海道大学法学部2・3年次編入の説明問題を解説します。問題文は和訳問題と同じ、陰謀論者に対するアメリカ国民の態度に関する英文です。問1が前回まで解説してきた和訳問題で、問2が説明問題になります。
ただし、この解説では、英文を使わず日本語の大意で解説します。というのは、説明問題に解答するにはかなりの部分の英文を利用する必要がありますが、著作権の問題が微妙なことと、本問の場合、要約問題という側面もあるので、必ずしも正確な和訳でなくてもよい(とはいえ正確な和訳ができることが前提)からです。問題は次の通り。配点は14点です。
問2 筆者が行った2つの調査の方法と結果を日本語で具体的に説明しなさ
い。
説明問題では、まず何が問われているかを明確にし、問われていることに関係する文を文中から探し、その文をもとにして解答を作成します。
■STEP1 何が問われているか
2つの調査が行われたが、それぞれ①どのような調査だったか、②どのような調査結果だったか。
■STEP2 文中から問われていることに関係する文を探す
2つの調査について記述されている部分を探すと、次のような部分を見つけることができる。
I. 6月1日、ワシントンポスト紙は「接近遭遇:民主、共和両党、UFOを
真剣に考慮」という見出しの記事を掲載した。記事では、民主、共和両党
の政治家や元CIA長官が、UFOは地球外からの訪問者の可能性があると認
めたと書かれている。
II. 翌日、1,500人以上のアメリカ人にアンケートを実施した。オンライン
パネルプロバイダーであるLucidを通じて回答者を集めた。アンケート参加
者には報酬が支払われた。回答者の3分の1には、ワシントンポストの記事
を読むよう指示し、残りの3分の2には指示しなかった。その後、全員に対
して陰謀論を信じる人々に対する感情について質問した。
III. 回答者は陰謀論者についてどう感じているか尋ねられ、感情温度スケー
ルの0(非常に否定的)から100(非常に肯定的)までで評価してもらっ
た。陰謀論を信じる人々に対する肯定的な感情を回答した人の割合は、記
事を読んだ人が48%、読んでいない人は42%であり、記事を読んだ人のほ
うが約6%多く肯定的な感情を持っていた。
IV. 民主党支持者であることが陰謀論を信じる人々に対する否定的な感情に
つながるのと同じくらい、ワシントン・ポストの記事は陰謀論を信じる
人々に対する肯定的な感情を引き起こしたことになる。民主党支持者が陰
謀論を信じる人々に対して抱く否定的な感情は 無党派層より8 ポイント多
いが、これは、記事を読んだことによって引き起こされた肯定的な感情の
増加分6 ポイントと同程度といえる。
V. 翌日、98%の参加者がアンケートに回答した後、ニューヨーク・タイム
ズ紙がリークされた報告書を公開した。その翌朝、前回のアンケートに回
答した全員に、その朝のワシントン・ポスト紙の記事「報告書はUFOの存
在を肯定も否定もせず。原因不明の空中現象。」を見せた。
VI. 結果は最初のアンケートの結果と一致していた。最初のアンケートで
UFOの記事を読んでいなかった回答者304人のうち、陰謀論者に対する
「感情温度スケール」の平均評価は、この報告書に関するワシントン・ポ
スト紙の記事を読んだ後には、最初のアンケートの27から36に上昇した。
■STEP3 見つけた文から、問われていることを記述した部分を抜き出す
最初の調査について
① どのような調査だったか → ⅡとⅢに記述がある。
A) 翌日、1,500人以上のアメリカ人にアンケートを実施した。
B) オンラインパネルプロバイダーのLucidを通じて回答者を集めた。
C) アンケート参加者には報酬が支払われた。
D) 回答者の3分の1には、ワシントンポストの記事を読むよう指示
し、残りの3分の2には何も指示しなかった。
E) その後、全員に対して陰謀論を信じる人々に対する感情について質
問した。
F) 回答者は陰謀論者についてどう感じているか尋ねられ、感情温度ス
ケールの0(非常に否定的)から100(非常に肯定的)までで評価し
てもらった。
② どのような結果だったか → Ⅲに記述がある。
陰謀論を信じる人々に対する肯定的な感情を回答した人の割合は、記事を読んだ人が48%、読んでいない人は42%であり、記事を読んだ人のほうが約6%多く肯定的な感情を持っていた。
2回目の調査について
① どのような調査だったか → Ⅴに記述がある。
A) 翌日、98%の参加者がアンケートに回答した後、ニューヨーク・タ
イムズ紙がリークされた報告書を公開した。
B) その翌朝、前回のアンケートに回答した全員に、その朝のワシント
ン・ポスト紙の記事「報告書はUFOの存在を肯定も否定もせず。原因
不明の空中現象。」を見せた。
② どのような結果だったか → Ⅵに記述がある。
A) 結果は最初のアンケートの結果と一致していた。
B) 最初のアンケートでUFOの記事を読んでいなかった回答者304人の
うち、陰謀論者に対する「感情温度スケール」の平均評価は、この報
告書に関するワシントン・ポスト紙の記事を読んだ後には、最初のア
ンケートの27から36に上昇した。
■STEP4 抜き出した部分から解答を作成する
説明問題では、抜き出した部分をそのまま訳せば解答になることもあるが、多くの場合、抜き出した部分にわからないところがあれば説明を加えたり、逆に問われていることと無関係だったり、関連性の薄い部分を削除したりする必要がある。
本問でも説明を追加したり、無駄な部分を削除する必要があるのですが、長くなったので、これについては次回に。