北海道大学法学部2・3年次編入試験(英語)の解説をします[第2回]
前回に引き続き、令和6年度の北海道大学法学部2・3年次編入の和訳問題の2問目を解説します。前回同様、著作権の問題が微妙なので、一部表現を変えています。
It is clear that many elements are involved. But new public openness about UFOs' existence ― and to the possibility that they might be extraterrestrial visitors ― encourages people to see conspiracy theorists with more favor, my research finds.
■第1文 It is clear that many elements are involved.【予想配点2点】
解説
単語さえわかれば特に問題はない。be involvedは「関係している」とか「含まれている」などでOK(文法的にはinvolvedを形容詞と見てもよいし、involveの過去分詞で受動態と見てもよい)。It is…that~の形式主語構文なので、和訳すれば「多くの要素が関係しているということは明らかだ」。
採点基準
It is…that~の形式主語構文のミスはマイナス2点。単語の誤りは1個につきマイナス1点。
■第2文
But new governmental openness about UFOs' existence ― and to the possibility that they might be extraterrestrial visitors ― encourages people to see conspiracy theorists with more favor, my research finds. 【予想配点7点】
単語
governmental 政府の
openness 率直(な態度)、開放(状態)、寛大(な姿勢)
existence 存在
the possibility that SV ~という可能性
extraterrestrial 地球外の
encourage O to do Oに~するよう促す
conspiracy theorist 陰謀論者
with favor 好意的に
research 研究、調査
[完全文], S show. [...]とSは示す(S show that […] の[…]を先に出した形。新聞や雑誌などでよく見られる)
解説
① 最重要ポイントは主語(S)と述語動詞(V)とのつながりをとらえているかどうか、別の見方をすれば、ダッシュの役割を理解しているかどうか。
文全体の主語は、前置詞のついていない名詞で最初に出てくるもの。だから But new governmental openness と読んだ時に、openness が名詞で前には前置詞が付いていないから、これが文全体の主語になる。
次に述語動詞は何かと思って読んでいくとダッシュが入って文が途切れている。ここでダッシュには挿入句を作るという役割があることを知っていると、つぎのダッシュまで飛ばして、
But new governmental openness …―[読みとばす]― encourages people to see…
と読める。そうなれば述語動詞はencourages、Oはpeople、to seeが補語(C)とわかり、「しかし、新たな政府の率直な態度は…人々に…見るよう促している」という訳ができる。あとは修飾部分を付け加えて、「しかし、UFOの存在に関する新たな政府の率直な態度は…人々に陰謀論者をより好意的に見るよう促している」というのが文の骨格になる。
② 次のポイントは、挿入句のつなぎ方。これはandのつなぎ方の問題。
But new governmental openness about UFOs' existence ― and to the possibility that they might be extraterrestrial visitors ― encourages people…
andは同じ単語・形、対応する意味のある部分をつなぐ。andの次にはtoが来ているが、前の部分にはtoはないので、このandは同じ単語をつないでいるものではない。次に形に注目する。andの次はtoだが、これは前置詞でそのあとに名詞the possibilityが来ている。つまりandの後の形は[前置詞+名詞]という形。これと同じ形がないかどうか前の部分を探すと、about UFOs' existence が[前置詞+名詞]という形になっている。そこでこの挿入句はabout UFOs' existenceとandでつながれていると考えて、次のように読む。
But new governmental openness | about UFOs' existence
― and
| to the possibility that they…
しかし、新たな政府の率直な態度は|UFOの存在に関する
― また
|…可能性 に対する
整理すると「しかし、UFOの存在に関する―また…可能性に対する―新たな政府の率直な態度は…」となる(なお、ダッシュの記号を外さないように)。
that節の内容を補充すれば、「しかし、UFOの存在に関する―またそれらが地球外の訪問者であるかもしれないという可能性に対する―新たな政府の率直な態度は、人々に陰謀論者をより好意的に見るよう促している、と調査は示している」となる。この訳でも合格ラインに達しているかもしれないが、微妙なところがある。
③ 迷うのは、無生物主語をどうするか。
上の和訳で迷う理由は、逐語訳が日本語としてややわかりにくい点。それは、主語が「率直(な態度)」という無生物で、目的語が「人々」という人間になっているから。日本語では、無生物と人間が出てくる場合、人間のほうを主語にするのがほとんどだが、英語では無生物を主語にすることもある。特に法律政治のような硬い文ではしばしば見られる。
したがって、無生物主語を逐語訳すると、少しわかりにくい日本語になることがある。しかし、そもそも法律や政治の文章はそれ自体わかりにくいのだから、和訳がわかりにくいのは当たり前。それ以上、表現を変える必要はないとも言える(あるいは、和訳した受験生には意味がわからなくても、専門家である採点者にはわかるかもしれない)。
しかし、一方で、逐語訳ではまったく意味がわからないというのでは困る。この場合は表現を変える必要がある。
本問は微妙。本問は、UFOに関する政府公式発表の影響を調査した文。これは、陰謀論のような不合理な政治思想がどのように社会に受け入れられていくかという政治学の問題の一例なので、専門的な内容を含んではいる。しかし、新聞記事なので専門論文ほど本格的でわかりにくい文ではない。
専門論文ならば逐語訳のままでよいが、新聞記事なのである程度分かりやすく表現を変えるほうがいいかもしれない。
④ 無生物主語構文として表現を変える
無生物主語構文では、無生物の主語を理由・手段・条件・時を表す副詞に、人間の目的語を主語に、主語の変更に合わせて述語動詞を変える。そうすると、わかりやすい日本語になる。本問に応用してみると、「…新たな政府の率直な態度[は⇒によって]、人々[に⇒は]陰謀論者をより好意的に見るよう[促している⇒になる]、と調査は示している」になる。
全体をまとめると
「しかし、UFOの存在に関する―またそれらが地球外の訪問者であるかもしれないという可能性に対する―新たな政府の率直な態度によって、人々は陰謀論者をより好意的に見るようになる、と調査は示している」。ここまでできれば、合格ライン。
採点基準
① SVOC(S=openness、V=encourages、O=people、C=to see)の把握ミスはマイナス5点、
② andのつなぎ方のミスはマイナス4点、
③ 無生物主語をそのままにした場合、マイナス2点。
④ ダッシュの記号を入れなかったらマイナス2点。
⑤ 単語の誤りは1個につきマイナス1点。
次回は3問目を解説します。
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