肥料を知る(基礎) ~堆肥~
こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。家庭菜園・農業初心者向け「肥料を知る(基礎)シリーズ」は今回がラストになります。
土耕での野菜作りには肥料の他にも堆肥を施すことが必要です。堆肥の種類は、肥料と同様に豊富でホームセンターなどでは堆肥の種類がたくさん積まれています。一言に堆肥といっても種類も多くどれを選んでいいか迷ってしまうのではないでしょうか?
●堆肥とは
堆肥は家畜糞尿、枯草、食品残渣、などを微生物によって発酵させたものです。発酵の過程で窒素分などが抜けていくので肥料の養分となる成分は肥料よりも少ないです。
また発酵中に温度が上昇し60~70℃近くまでに達するため、雑草の種子や害虫の卵は死滅し有害物質も分解されています。この温度上昇は微生物の活動することにより発生する熱です。(微生物って目に見えないですがすごいパワーですね!)
しかし肥料成分も少なくなっている堆肥ををなぜ入れる必要があるのでしょうか?簡単にいえば土の性質を良くするためです。つまり土壌改良が主目的です。
まず 炭素(繊維分)などが土中の微生物の餌になり、微生物を増殖させます。様々な微生物が増えると病原菌が一気に増えることはありませんので病気対策にもなります。病気ってだいたいは特定の微生物や菌が増殖してしまうことで起こります。
また堆肥中の繊維分が土を柔らかくし、地力の元となります。腐植(生物遺体が微生物により分解され 再合成された黒い物質)を増やします。 この腐植は土と土の粒子をくっつけて水はけと水持ちの良い団塊構造の土にする働きをします。そもそも土には有機物が含まれていますが、補充してあげてさらに良質化させるために堆肥の投入が必要なのです。加えて微量要素の補充にもなります。微量要素は植物が生長するには必要な栄養成分ですが、量的にあまりに微量なので、元来、土に含まれているもので足りるともいわれていますが、堆肥を投入することでより確実に植物に微量要素を供給することができます。
よく堆肥と肥料をゴチャマゼにして話す人もいますが、堆肥は「肥料」ではなく、あくまで「土壌改良材」として捉えることがよいでしょう。
●堆肥の種類
さて堆肥の種類ですが、大きく分けると2種類になります。
1つは養分濃度が高く、肥料に近いものです。代表的なものとしては発酵鶏糞があります。 どのホームセンターにも必ず置いてある定番の堆肥です。しかし 炭素分はそれほど多くないので土壌改良の効果はあまりないと言えます。もう一つは養分濃度は低いけれど、炭素 (繊維)が多く、土の改良剤的なものです。例としては牛糞堆肥があります。
基本的に原料の家畜分の種類が 鶏→豚→牛の順に肥料養分は少なくなり、反対に土壌改良の効果は高くなります。さらに土壌改良効果が高いものに樹皮と家畜糞尿などを混合して作るバーク堆肥があります。
いずれも堆肥も発酵が不十分だと土に入れた後に微生物が過度に増殖するために土の窒素分を微生物が自らの増殖のために使ってしまい、植物が生長するのに必要な窒素分を土から奪ってしまうということが起りますので要注意です(窒素飢餓)。
また有害物質が残っていて生育障害を起こすこともあるので、堆肥を選ぶ際は完熟したものを選ぶようにしてください。
プロ農家では中熟堆肥を使用しているところもありますが、中熟堆肥はあくまでプロ仕様であると考えてください。
私は農業初心者や家庭菜園をされている方には扱いやすいC/N比20程度の完熟牛糞堆肥をおススメしています。
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