少量培地の栽培システム!(農業)
こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。土耕で栽培する場合、植物がしっかりと根を張れるように土の上層部分を耕します。(不耕起栽培などもありますが・・)この部分を「作土層」といいます。
植物ごとに根の張り方が違うので必要な作土層の深さは異なりますが、通常、野菜の栽培では25㎝以上は必要といわれています。柔らかく耕された作土層が深いと植物は根が張りやすくなり、根がしっかりと広がります。根張りが良い植物は多くの水と肥料を安定的に吸収できることになりますので、植物の生長自体が安定します。
ちなみに「作土層」に対して、あまり聞きなれない言葉ですが「有効土層」という言葉があります。 これは作物の根が自ら入り込むことができる層のことです 作物の根は人間が肥料を混ぜる作土層よりも、更に深い層まで張ることができるので、多くの作物では作土層よりも有効土層のほうが深くなります。
ともあれ、どのような植物の栽培でもしっかりと土を耕して根がしっかりと張れる領域を広げることが植物の栽培の基本です。
しかし、養液栽培や養液土耕栽培など地面から隔離して行う栽培方法の場合、培地を地面から持ち上げた状態で栽培します。いちごの高設栽培などは地上1mくらいの高さですよね。
シーズンごとに培地を入れ替えなどが必要ですので、たくさんの培地だと非常に重くなってしまい作業性が悪くなってしまい体に負担もかかります。
そこで考え出されたのが少量培地耕です。先ほど土耕栽培では作土層は深いほどよいといっていたのとは逆の方向ですよね。培地が少ないとしっかりと管理しないと水分不足や肥料不足などに陥る危険性はあるので、メチャクチャ気を使います。ですから人間の勘ではなくセンサーなどを使ったデータ管理が必要です。
<いろいろ少量培地耕>
各地の農業試験場や大学でいろいろな少量培地耕が行われていますし、多くの農家でも実践されているものもあります。
・島根県農業技術センターの移動型少量培地耕(トロ箱栽培)
培地を入れる容器に発泡スチロール製鮮魚箱(トロ箱)を、また、培地も地域で入手しやすいものを用いて、養液栽培ならではの省力性、クリーン性を保ちつつ、低価格と移動性向上を実現したもの。
・滋賀県農業試験場 少量培地耕
た栽培床は,幅24cm,深さ 10cm,長さ 5mの木枠(厚さ 15mmの貫板)ベンチとした.木枠の内側にポリオレフイン系フィルムを敷き,底面の中央に30cm間隔で,直径 12mmの排水用の穴を開けた.この穴にチューブを差し込み,ベンチ下に通した雨樋で排液を回収して循環させる。
・山口県農業技術センター
同センターと㈱サンポリの共同開発の「ゆめ果菜恵」。
・静岡大学 Dトレイ
オランダでイチゴの育苗用ポットとして開発された“Dトレイ”という、250ml容量の連結極小ポット。
ほかにも少量培地システムはいろいろ出ており、栽培ノウハウについても研究されています。
Dトレイくらいの少量になるとやはり栽培する者としては不安になりますね。もともと育苗ポットとして開発されたものですから、樹が大きくなってくるとすごく気を付ける必要があります。トマトなどは地上部が非常に大きくなる植物で蒸散量も多い植物には難しいと思いますが、トマトと違って地上部がさほど大きくならないイチゴ栽培などには使うことはアリかと思います。
Dトレイでは作業効率アップのほかに、例えば根系の病気が発生した場合には該当する株のみを引き抜いて植え替えができるので、被害が最小限にとどめられるメリットもあります。
僕はイチゴ農家にはなんどかDトレイを薦めましたが、トマト栽培には薦めませんでした。
今日は少量培地耕に関するシステムを紹介いたしました。
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