【植物基礎】果実の中の種子は発芽するのか?
こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今回も植物基礎をテーマに「果実の中の種子は発芽するのか?」についてお話したいと思います。
トマトを食べると中に種子がいっぱいありますよね。 この種子をまいたら発芽するのかという不思議が浮かびます。
発芽するような気もするし、発芽しないような気もする人もいるのではないでそうか?
発芽するのかしないのかを調べるのは簡単です。お皿のような容器に水を含んでティッシュペーパーを引きます。トマトの種子のまわりにはヌルヌルの物質がついています。これらを洗い落としてティッシュペーパーの上に置いて乾燥しないように、容器にはラップをかけておきます。暖かい部屋なら 3~4日後には種子は発芽してきます。トマトの果実に中にある種子は発芽する能力を持っているのです。
トマトの種子は果実から取り出すと、わずか3~4日で発芽するということがわかると、今度は、なぜ果実の中では種子は発芽しないのかという疑問がわいてきます。トマトの果実から取り出された種子は容易に発芽します。しかし、その種子が 果実の中にある時には頑なに発芽しません。なぜ種子は果実の中では発芽しないのでしょうか?
〇発芽の発芽の三条件
トマトが発芽するために必要な条件は適切な「温度」・「空気(特に酸素)」・「水」の3つです。
これらは「発芽の三条件」といわれ、トマトに限られたものではなく、他の植物にも共通のものです。トマトの果実の中では、この条件が満たされているのでしょうか?
・1つ目の「温度」はどうでしょうか?
トマトの果実ができる環境では適切な温度は満たされています。トマトが冷たい冷蔵庫に入れられている場合は別ですが、普通にはトマトの果実は適切な温度に保たれているはずですから、他の条件が満たえさえすれば発芽はできます。
・2つ目の「空気(酸素)」はどうでしょうか?
種子は呼吸をします。特に発芽するためには多くの呼吸をしなければなりません。そのために酸素が必要です。一方、果実の中にある種子のまわりには果肉や果汁があり、 種子は酸素を十分に吸えません。しかも、種子はヌルヌルの物質に取り囲まれています。このような条件の中では十分な呼吸ができないので発芽は難しいのでしょう。
・3つ目の「水」はどうでしょうか?
トマトの果実には果汁があります。だから水の不足は起こらないだろうと思われます。しかし果実の中で種子が発芽するために必要な水の吸収できない場合があるのです。果実の中の種子のまわりには甘かったりすっぱかったりする果汁があります。種子のまわりにある果汁(液体)の濃度が高ければ高いほど種子は水を吸収することができないのです。
例えばただの水が種子のまわりにあると種子は水を吸収します。しかし、濃い砂糖水が種子のまわりにあると、種子は水を吸収しにくいのです。水に多くの砂糖が溶けていればいるほど種子は水を吸収しにくいのです。同じように濃い果汁がある果実の中では容易に水を吸収できません。このように水を吸収しにくい環境にあることも発芽しにくい要素の一つです。
〇発芽抑制物質「アブシジン酸(ABA)」
他にも果実の中で種子が発芽しない理由があります。果実の中に発芽を抑制する物質が含まれています。多くの植物の果物の中に発芽を抑制する物質が含まれていることが知られており、トマトの場合もそのような物質が存在しています。アブシジン酸(ABA)と呼ばれる物質で外気の環境が乾燥状態や低温状態などの状況では発芽しても枯れてしまうので、発芽しても生きていけない環境では発芽しないで、種子休眠といわれる"種子を発芽させない"状態を維持します。
このようにことからトマトの種子が果実の中では発芽はできないことがわかります。トマトだけでなく植物にとっては果実の中で発芽しても意味がありません。
ですから発芽しないように工夫を凝らしているのです。
なぜ果実の中で発芽しないのか?など当たり前のようなことですが、そこには意外と知られていない仕組みがあることがわかりますね!
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