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企業の農業参入の現状3 ~しっかりと利益は出ているのか~

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。以前の記事で企業の農業参入がドンドン増えてきていること、そして食品関連企業、建設業、社会福祉法人などを中心に様々な業種の企業が、様々な目的で企業参入してきていることについてお話いたしました。

今回はその続きです。
よく企業が一度は農業へ参入するもののなかなか業績が振るわず、結局、撤退した、、、というような記事やニュースをよく目にします。実際、農業から撤退している企業も多くあります。他の事業のようなスピード感で農業事業を立上げることは非常に難しいですし、企業が期待するほどには農業事業での売上、利益とも金額規模は小さいので、我慢しきれず撤退するということは実際に起こっています。

大規模な設備投資を行い、補助金も使って企業が参入するので、撤退するとなると大きなニュースになりますし、また多額の補助金を使っていることもあり、一般の農業者からも厳しい言葉を投げかけられたりしますので、農業参入失敗はすごく話題になりがちです。

しかし、参入に失敗すると大きな話題になりますが、その裏では粛々としっかりと利益を獲得して確実に農業参入を果たしている企業もたくさんあります。
日本政策金融公庫の資料によると、農業参入した企業農園のうち、約3割は黒字化しています。

異業種からの農業参入のうち約3割は黒字化しています。出典:日本政策金融公庫


さらに、食品製造業、食品卸売業、食品小売業などは農業参入した際には、参入当初は赤字ですが5年以内に黒字化する企業は全体の4割超あります。農業所得ではなく企業会計での利益ですので、従業員の労務費や経営者の報酬もすべて含んだ業績で利益を出しているということです。

以前の記事でも書きましたが、食品関連企業(食品製造業、食品卸売業、食品小売業)は「農作物の安定調達」を目的に農業参入しています。食品製造業、食品卸売業、食品小売業の必要な作物を生産することを使命であるため、企業の農園は基本的にはしっかりとした品質のモノを作れば、確実に買い取ってもらえます。
そして農園側と食品関連事業は同じ企業グループ内にあるため、農作物の取引価格の調整も一般農業者(農家)と比べると容易に行うことができます。昨今のような肥料などの農業資材の高騰が農作物の販売価格に転嫁されない、、という状況でも、同じグループ内であれば多少の取引価格の融通は一般農業者(農家)よりも利きやすいです。さらに食品関連企業の農業参入は一般農業者と比べて資本もあるため大規模農園であることが多いですが、大規模であれば農業資材の仕入れなどでもスケールメリットを活かして一般農業者と比べて低価格に仕入れることができます。
このようなメリットを活かして食品関連企業の農業参入は着実に業績を維持・拡大しています。

農業は儲からない、企業の農業参入は失敗ばかりだ、、というのはある一面では事実ですが、一方で着実にしっかりと利益を獲得して拡大している企業の農園も多くあります。

こういった流れの中で、農業の主役は現在は“農家(個人)“ですが、ゆくゆくは企業の農園も主役の一角に台頭してくる日も近いと思います。一般の農家は今のうちに企業農園との差別化戦略をしっかりと進めておかないといけません。

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