6次産業化のポイントは? (農業)
今回は6次産業について述べていきます。
農林漁業の6次産業化とは「1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組です。これにより農山漁村の所得の向上や雇用の確保を目指しています。」 と定義されています。
6次産業のメリットは主に以下の4つがあげられるため国や自治体など様々な方面から期待されており6次産業化のサポートなどの様々なメニューも用意されています。
・所得の向上
1次産業のみでは得られなかった所得が得られたり、農産物に付加価値をつけて販売したりできるようになるため、所得の向上が見込めます。また、農産物を市場に出荷するのに比べ、価格変動の幅が小さく、収入が安定するというメリットもあります。
・雇用の創出
単に業務拡大により、雇用が増えるというだけでなく、農閑期を加工業務に当てられるなど、労働の負担を軽減し、均一化を図れるという点もメリットです。また、産業が育つことは、若い人の雇用にもつながってくるでしょう。
・風土や伝統文化の保全
地域資源を事業に利用することで、地域の風土や伝統、食文化などの持続的保全が可能になります。また、地域産品と風土・伝統文化を結びつけることで、地域全体のブランド化を図り、さらなる観光客の増加、地域活性化も期待できるでしょう。
・地域の活性化
6次産業化による所得の向上や雇用の創出、観光客の増加、地域のブランド化などにより、地域の活性化が期待できます。地域活性化は、地域の文化や資源を継承することにもつながっていくでしょう。
しかし実態はほとんどのケースでうまくいっていないように思います。
その原因とうまくいくためのパターンを見ていきたいと思います。
〇うまくいかない原因
仮に食品の大手メーカーが、トマトを作っていてさらにトマトジュースやトマトジャムを作るのであればうまくいくかもしれません。すでにしっかりとした販路を持っていてその販路にトマトジュースやジャムも乗せていけるからです。
でも個人農家や中小規模の農業法人の場合にはなかなか難しいと思っています。自分のブランドのジュースやジャムなど加工品を作ろうと考える人はたくさんいますが、6次産業化に取り組んだ瞬間に競争相手は大手食品会社のような企業になるわけです。つまり自分が作ったジュースやジャムは大手企業のものを押しのけてスーパーマーケットやコンビニエンスストアの棚を取っていかなければならなくなるのです。棚のスペースは限られているわけですからスペースの取り合いです。仮に置いてもらえたとしても大手企業のようなスピードで各店舗からの注文に対応して供給していくのは非常に困難です。
規格外品や収穫しすぎたものの活用などという農家側の都合だけで新しいビジネスを考えてもうまくいくはずはありません。流通業者や小売業者側の都合もしっかりと理解し、WIN-WINの関係を作っていかないとビジネスは成り立たないものです。
様々な媒体で6次産業はもてはやされていますが、実態はうまくいっているケースは少ないです。
〇大手ができないような特徴的なものを作る!
一般の農家がオリジナルブランドのジュースやジャムを作ったとしてもそれを流通させるための広告宣伝費などを大手企業と同じくらい投入できるかといえば極めて難しいです。中小農家がどうやって大手企業に対して優位性を作るのかを考えてから6次産業を進めなければなりません。
・圧倒的に特徴のある商品を作る
大手企業は資本力があり、販売力もあるので真正面から戦ったのでは勝てるわけがありません。しっかりとした優位性を獲得していくためには、大手企業ではできないようなものを作る必要があります。例えば大手企業では商品開発はどうしても会議などの“合議制”で行うため、あまり特徴のあるものにはならず、“万人にウケるもの”になりがちです。しかし農家や農業法人は自分のアイデアを商品開発に反映しやすい状況にあります。ターゲットとする客層を絞り込んで“尖った製品開発”を行うことで、マーケットは小さいかもしれませんが着実にファンを獲得できることも考えられます。
また大手企業はどうしても“万人ウケするもの“を作りがちなので、価格設定も“万人にとっての値ごろ感“の価格設定をしがちです。そのため、原材料に使う作物も加工用に作られた品種の作物を使います。一方、農家は自分の畑で獲れた味の良いものをジュースやジャムなど加工品に回せるので大手企業のものとの差別化をすることができます。ただし、味による差別化を図っていくためには、「規格外品がたくさんでたから」、「収穫しすぎたから」という”成り行きでの考え方”ではいけません。しっかりと栽培の時から戦略的に考えていく必要があります。
・局地戦で戦う!
大手企業はできるだけ多くの地域で販売したいと思っています。もちろん大手企業の商品でも地域限定商品などもありますが、基本的には大手企業はできるだけ多くの客層・エリアをターゲットとしています。そごで一般の農家がとるべき戦略は徹底した地域密着性「地域限定」という局地戦で戦うことです。大手が入って来られない自分たちの場所で販売すれば勝てる確率は高くなります。気候条件などでこの地域でしか栽培できない品種などがあれば特にいいと思います。そのような地域特有の品種で加工したものを、例えば観光農園をやっていてそこに来てもらい来た人だけに売るといったものです。敵を少なくし自分のテリトリーだけで戦えば、その範囲内では勝てる状況が作り出せます。また自分の地域だけで売れば、販売力が小さくても対応できますし、商品の棚の補充なども簡単にできます。
注意しなければならないのは、今はネットの時代ですが安易にネット販売をするとその瞬間に全国での勝負になって厳しい戦いに突入しますのでネット販売を考えるときはしっかりと戦略を考えなければなりません。
・ブランドの広告塔として使う
なんどもいいますが大手企業では商品開発は会議などの合議制が多いのであまりに尖った商品を作り出すことには向いていません。一方、農家や農業法人では自分の考えを商品開発に反映しやすい環境があるため、アイデアさえあれば尖った商品を作り出すことができます。その利点を活かして徹底的に目立つ加工品を作ってその目立つ加工品を、農園や作物の広告塔として活用することもいいのではないかと考えます。例えば、トマトでいうとBrix糖度10以上のミニトマトだけを使ったトマトジュースをつくり、ラベルなどにも徹底して糖度の高さを謳い、話題に取り挙げてもらいます。この高級トマトジュースは価格が高いので販売できる量はたいして多くないかもしれません。しかしこのトマトジュースが広告塔となって農園や作物の認知度を高めてくれれば、トマトジュースでは利益が取れなくても他の作物でしっかりと利益を稼ぎ出せれば、農園トータルとしてはビジネスとなります。
6次産業を行うのであれば、「大手企業ではできないような特徴のあるもの」×「地域限定・地域密着」という2つのポイントはしっかりと確立していかなければなりません。非常にもてはやされている6次産業ですがうまくいっているケースはあまり多くないので、しっかりと考える必要があります。
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