なぜ畑では肥料が必要なのか?雑草は肥料が無くても育つけど・・。(農業)
〇光合成 が 生命の糧
雑草は肥料を与えなくても勢いよく茂っているのに、なぜ野菜には肥料が必要なのか不思議ですよね? それは雑草も野菜がどのように生きているのかを見ていけばわかります。動物は他の生き物を食べなければ生きていけないですが、植物は太陽の光エネルギーを利用し根から吸い上げた水(H2O)と葉から吸収した空気中の二酸化炭素(CO2)からエネルギーを使って炭水化物(ブドウ糖:C6H12O6)を合成し、この炭水化物を生長エネルギーにして生きています。これがいわゆる光合成です。
〇畑は養分が循環しない
雑草が生えている野原では枯れた雑草や落ち葉、動物の糞や遺骸などが そのまま残り土の中の微生物によって分解されて土に還ります。これが雑草などの養分となり再び雑草が茂り生長します。一方の畑では土の養分を使って育てた野菜を収穫物として持ち出してしまいます。また作物の生育の邪魔になる雑草をとり除くことで土の中に養分が戻らず、養分不足に拍車がかかることになります。何シーズンも同じ土地で栽培しているとドンドン土は痩せていきます。そこで人の手で肥料として養分を補う必要がでてきます。これが野菜が肥料を必要とする大きな理由なのです。
〇どんな肥料成分が必要なの?
植物は炭水化物(ブドウ糖:C6H12O6)だけでは育つことはできません。植物にはその他の養分も必要であり、全部で17種類の必須要素がある。炭素(C)、酸素(O)、水素(H)以外は主に土から供給されるものです。
炭素(C)、酸素(O)、水素(H)は光合成要素であり、よく見てみると二酸化炭素(CO2)、水(H2O)のCとHとOからできていることがわかる。これら以外の養分はすべて土から吸収されることになります。
今回は肥料にフォーカスするので、光合成要素ではなく、土から供給される肥料について見てみたいと思います。
まず肥料の三大要素といわれる窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)です。
・窒素 (N)
植物の生育に最も大きく影響する要素がチッ素です。チッ素は、植物の体を形作るたんぱく質や、光合成に必要な葉緑素など、植物体の中で大切な働きをする物質の構成元素として重要です。葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」といわれます。
チッ素が不足すると、下葉に含まれるたんぱく質や葉緑素が、旺盛に生育している株の先端のほうに送られるため、下葉から黄色くなってきます。株の生育が衰えて葉が小さくなる、分枝しにくい、草丈が伸びないといった症状も現れます。
逆にチッ素が多すぎる場合には、葉色が濃い緑色になり、茎や葉ばかりが茂って、花や実がつきにくくなります。また、植物体が肥満化して軟弱になるため、病害虫の被害も受けやすくなります。
・リン酸 (P)
花肥、実肥とも呼ばれる 茎葉や根の伸長を助け開花や結実を促進する。リン酸は、遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成などを担う核酸(DNA、RNA)の構成成分として重要です。開花・結実を促すため、リン酸は「実肥(みごえ)」といわれています。ほかに、植物全体の生育、枝分かれ、根の伸長などを促す働きもあります。
リン酸が不足すると、下葉から緑色や赤紫色に変色し、株の生育が衰えてきます。開花や結実に加え、実の成熟が遅れて収穫量が減ったり、品質が低下したりします。
逆にリン酸が過剰な場合は、直接的な症状は現れにくいのですが、土壌病害が起きやすくなります。
・カリ(K)
「根肥(ねごえ)」といわれるのがカリです。植物内では、水に溶けるカリウムイオンの形で存在しています。葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、病気や寒さなどに対する抵抗力を高める働きがあります。
カリが不足すると、下葉の先端や縁から葉が黄色くなって葉が枯れ始め、果実の品質も低下します。
逆にカリが過剰な場合は、過剰症状は現れにくいのですが、マグネシウムが吸収されにくくなります。
作物の生育に必要な栄養素のうち 作物体内に約0.1%以上存在するものを「多量要素」、0.01%以下のものを「微量要素」といいます。 多量要素には上記の窒素、リン酸、加里に加え、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、硫黄(S)などがあり、微量要素にはマンガン、ほう素、鉄、銅、亜鉛、モリブデンなどがあります。
※カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)については別のレポートで記載していますので参考にしてください。(↓)
・硫黄(S)
タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどの生理上重要な化合物に欠かせない元素で、炭水化物代謝や葉緑素の生成を助ける働きもあります。植物自体に過剰症は見られないものの、土壌の酸性化や老朽化水田では硫化水素発生の原因となります。
ここまでが多量要素といわれるものです。
次に微量要素と呼ばれるものを挙げてみます。
・マンガン(Mn)
植物体内では炭水化物や有機酸、チッ素などの代謝に関わる酵素に含まれる微量要素です。葉緑素のほかビタミン類の生合成にも必要な成分です。また植物が光合成をおこなうとき、二酸化炭素を固定するのに必要不可欠な成分でもあります。マンガンが欠乏すると症状としては古い葉からあらわれ、鉄欠乏に似た症状で、葉の葉脈の間が黄色くなります。ぶどうでは果実が着色不良となります。生育不良、着花不良の原因の一つです。
・ホウ素(B)
主に植物の細胞壁を構成する成分で、根や新芽の生育を促進したり、細胞分裂や受粉に関わります。アブラナ科野菜などでは必要なホウ素の量より土壌に自然に含まれるホウ素の量が少ないため、微量要素の中では比較的欠乏しやすい成分です。ホウ素が欠乏すると植物体内で移動しにくい成分のひとつなので、新芽に症状があらわれやすいのが特徴です。 生長点がとまり、もろくなるため、根や新芽の生育が悪くなります。
・鉄(Fe)
葉緑素の生成を助ける大切な成分です。また代謝や呼吸に関わる酵素の構成成分でもあります。植物にとっての微量要素なので必要量は極わずかですが、健全な生育には必要不可欠な重要な元素のひとつです。鉄が欠乏すると若い葉で、葉脈間の黄化や白化がみられます。根が黄変しやすくなります。
・銅(Cu)
生体内でのほとんどの酸化還元酵素の構成成分として、呼吸作用に関わっています。これらの酵素は通常、細胞内の液胞中に存在していますが、植物組織が傷つくと、殺菌作用のあるフェノール類を生成し、植物体を守ります。葉緑素の形成に間接的に関わり、炭水化物、タンパク質の代謝にも重要なはたらきをします。銅が欠乏すると新葉の先端が白くなりしおれてきます。果樹では枝枯れ、新しく伸びる枝の萎縮などがあらわれます。
・亜鉛(Zn)
様々な酸化還元酵素やタンパク質、でんぷんなどの合成に関わる成分です。通常、植物の生育に必要な亜鉛は土壌中に十分含まれているので欠乏症が出ることは比較的少なく、特殊な作物や地域に限られるといわれます。
・モリブデン(Mo)
各種タンパク質の合成に関わっています。また根りゅう菌(土壌中のチッ素を固定して植物に供給する共生菌)の生育を助ける働きもあります。モリブデンが欠乏すると古い葉で、葉の湾曲やよじれが生じます。
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