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植物が病気になるメカニズム(農業)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今日は植物の病気になるメカニズムについてお話いたします。
人間が病気になるように植物も病気になります。農作物に目を向けると病気になることで 本来の収穫量から 1割程度も失っているともいわれています。

人間の病気の原因は主にウイルスや細菌が占めますが、植物の病気は8割がカビです。植物の病気の原因となるカビは数多くありますが、ほとんどは特定の植物のにに感染・侵入します。
例えばトマトの葉に感染するトマト葉カビ病の病原菌はトマトには感染・侵入できますが、きゅうりや稲など他の植物には感染・侵入はできません。

〇植物が病気になるメカニズム
植物が病気になるメカニズムについて、トマト葉カビ病を例に説明します。

トマト葉カビ病

この病気はどこのトマト農家も大なり小なり痛い目にあわされているのでトマト農家ならだれでも知っている病気で、トマトの葉の上に大量のカビを発生させます。

葉には呼吸や光合成をおこなうために、酸素(O2)の取り込みや二酸化炭素(CO2)の排出、蒸散のための気孔という穴があるのですが、この菌はトマトの葉に付着すると菌糸を伸ばし気孔を探し出して、そこから葉の中に侵入します。
気孔は空気が乾燥していると植物体内の水分流出を避けるために閉じ、逆に湿度が適正な状態だと開いています。植物が成長するためには、光合成をしっかりとしてもらわなければならず、そのためにはCO2を取り込まないといけないので、日中は気孔は開いた状態になっているのが理想的です。そのためできるだけ空気は乾燥させず、若干湿度が高い状態であるのが望ましいです。
一方、ほとんどのカビ菌は湿度が高いと繁殖しやすく、とりわけ湿度が高いと植物の葉にある気孔が開いている状態であるため、植物の体内に侵入が容易く病気が発生しがちです。
侵入した後もすぐに発病するわけではなく、2週間ほどの潜伏期間があり、やがて菌の増殖に伴ってトマトの組織はダメージを受け、葉が茶色く変色します。
病気により葉の光合成能力が落ちるので生育が悪くなり、果実がつかなくなります。
植物は元来 病原菌から身を守る力を持っています。

植物の葉の構造

病原菌に侵入されないための分厚い構造や病原菌に侵入されてもそれを感知するための防犯センサーなど様々な防衛システムを駆使しているのです。

しかし 農産物としての育てやすさ・おいしさ・収穫量の増加など人間にとって都合の良い価値を求めて、品種改良を繰り返す過程で原種が持っていた免疫に関わる遺伝子が少しずつ失われてしまったといわれています。
例えば昔のピーマンは苦味が強く、苦手とする子も多かったのですが、今では昔のような苦味は和らぎました。苦みとなる成分には抗菌性物質として病原菌の感染を防ぐものもあります。
人間にとって美味しい農作物になったことで病原菌にかかりやすくなったのです。

〇抵抗性品種の開発
そこで 元々持っていた 免疫に関わる遺伝子を美味しくなった品種に戻す品種改良が行われてきました。これら病気に強い品種は「抵抗性品種」と呼ばれ、トマト葉カビ病に対しても非常に有効な予防策の一つとして多くの抵抗性品種が開発され、利用されてきました。
ところが葉カビ病菌も変異することによって抵抗性品種の免疫システムを回避し発病するケースが増えてきたのです。そこで新しい変異株に対応しようと新たな別の免疫遺伝子を持つ抵抗性品種が開発されました。
病原菌の変異によってその品種も発病するようになると、またさらに新たな品種の開発という“いたちごっこ”が繰り返されてきました。

(トマト品種一覧:様々な病気への抵抗性表示がされています)

様々な研究機関が抵抗性品種の開発をして病気に強い品種を作り出してきましたが、品種の開発には10年近くかかりますが、おいしくて病気に強い品種の開発に期待しましょう!


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