共感を呼ぶ“楽しい”ものづくりで誇れる産地へ!泉州ミライノベーターVol.3 『ふくろやタオル』代表 袋谷 謙治さん
『泉州ミライノベーター』とは?
大阪・泉州地域の「未来」×「イノベーター」の新企画、『泉州ミライノベーター』プロジェクト!「未来を創るイノベーター」を深掘り取材!時代を創るイノベーターのビジョンを発掘&発信し、泉州のエネルギーあふれる未来を創ります🔥
第3回のゲストは、泉佐野市にある泉州タオルメーカー『ふくろやタオル』代表の袋谷 謙治(ふくろや けんじ)さん!創業大正15年の老舗生産者としてタオル産地としてのブランドを受け継ぎ、「楽しいものづくり」をテーマに大阪地場産の野菜やワインで染めたラインナップなどユニークな商品を開発されてきた袋谷さんに未来のお話を伺いました!
地元の人が地元を誇れる商品を作っていきたい
―早速ですが、これからやっていきたいこと、作っていきたい未来はありますか?
泉州タオルに関して言うと、地場産業としての歴史を持ち、私がまだ小さく産業が活発だった頃を見て育ってきました。現在は海外製品に押されており、国内産を求めるお客様もいる一方で、国内で流通している約80%は海外製品です。残りの20%のシェアを同じくタオル産地である今治と競い合っているのが現状です。
しかし、これからは国内の限られたシェアを競うのではなく、海外と棲み分けられる産業構造を目指したいと日々思って仕事をしています。「タオルならなんでもいい」「安い方がいい」という方もおられますが、国産ならではの産地ブランドの安心を感じてもらったり、つくり手の想いや背景を感じてもらえると嬉しいです。
また、地元の人はあまりタオルを買わないという背景もあります。昔は「タオルはもらう物」という風潮がありましたが、地元の人でも欲しくなるタオル、買って人に贈りたくなるタオルを作りたいと以前から考えてきました。逆にそうでなければ他の地域でも売れないだろうとも思い、野菜染めタオルなどを開発してきました。地元の人が地元を誇れるような、商品を通じて地域をPRできるようなものづくりも心がけて居ます。
楽しいものづくりの輪を広げたい
ー現在取り組まれている「いずみさのコットンチャレンジ」はどのような想いからはじめられたのですか?
毎年地元の小学校が社会見学で工場にきてくれていましたが、小学生にタオルが何からできているか尋ねると「ポリエステル」「羊の毛?」と答える子が大半だったことにショックを受け、これはちゃんと産地として伝えていかないといけないと思いました。それが綿づくりからタオルをつくるコットンプロジェクトの始まりです。地域の家庭や学校などで綿づくりに取り組んでもらえることで、自分たちで育てた綿から将来タオルができるという「楽しいものづくり」の輪が広がっていければと思っています。
ちょうど今、我々の組合では「水とともに生きる泉州タオル」と題し泉州タオルの新たな取り組みを行っています。山と海の距離が近く隣接し、和泉山脈から豊富に軟水が流れ来る泉州地域だからこそ、白くて柔らかいタオルができるのです。こうしたストーリーも含め産地として解り易いイメージを発信していきたいと思っています。
深い背景を考えてお客様とその周りの方にも喜んでもらいたい
ー昨今ではアウトプット=完成品の質だけで差別化するのが難しい時代であり、その中でキーとなるのがストーリーや哲学とも言われています。袋谷タオルさんの中でそうした部分で重要視されているものはありますか?
元々僕は幼い頃からものづくりが好きで、絵を描いたりすることも好きでした。大学進学の際に芸大を志望しましたが、結局あきらめ、叶わなかったことが心に残っていました。この仕事についてからは、徐々に共感を得られるものづくりをしたいと思うようになりました。小さい頃から自分が作ったもので自己表現をすることが多く、作ったもので誰かに喜んでもらったり、作ったものの制作の意図を話すことが好きでした。
例えば文化祭で何かを作るとなった時、作ったものに何か背景を考え、作り込んだりし、完成したものを見て喜んでもらう事が好きでした。それらが今のものづくりの哲学につながっています。
自社の商品を作る際、お客様に喜んでもらうのは当然ですが、お客様が誰かにプレゼントするために買ってくれることもあるので、例えばその贈り先の家族など周りの方にも喜んでもらえるといったことを考えています。その意図に気づいていただいた時に、「この商品はどんな会社がつくったんだろう?」と最終的に生産者である私たちに目を向けてもらえるようなものづくりを心がけています。
自分と相手が気持ちいいと思える商品を目指す
ー深い背景や意図を考えてものづくりに取り組まれているとのことですが、具体的にはどのようなことを考えられていますか?
例えば会社であれば、どういった歴史をもっているか、どんな特徴があるかを調べたりするとヒントが得られることがあります。その会社が、なぜその商品を売り出しているのか考えたり、その商品が今の社会情勢の中でどのような状況にあるのか好奇心を持って気にしてみることもあります。
最近よく耳にする「エシカル」という言葉がありますが、当社でも自分にとっても相手にとっても気持ちがいい、心地よいと思える商品を目指しています。自分が気持ちいいものが相手にとっても気持ちいいと考えるのはエゴかもしれませんが、ものづくりの想いにも共感してくれると嬉しいです。実際に、お客様から「こういう商品が欲しかった」というお声をいただくこともあります。納品後にお礼状を送っていただいたり、他の方にもお勧めしていただくこともあって、そうした際は、特に共感いただいたと実感できます。
メーカーが集って開催したマレーシアのお茶会
ー背景やストーリーを考えて商品作りをされる中で、そこに共感される方をメインターゲットとして事業展開し、高付加価値を実現できれば価格競争に巻き込まれることもなく、大手とも競合を避けていけるかと思いますが、そうした路線は考えられていますか?
なかなか取り組めていないことも多いですが、コアターゲットを狙い、広げていくという意味ではクラフトビールで染めたビール染めタオルをビールフェスで販売したり、地域で育てたぶどうで染めたワインタオルの作成など色々考えられそうなアイデアはたくさんあります。
コロナ前にマレーシアでお茶会を行ったこともありました。堺のお茶屋さん、和菓子職人さん、和菓子を切る爪楊枝=黒文字を日本で唯一作っている会社の方の4人でお茶会をしようと企画したのがきっかけです。自社では、抹茶で染めたタオルを用意しました。その時は来場してくれた方に非常に喜んでいただき、海外にこうしたパッケージ企画を持ち込むのも面白いと思いました。国が違えばまた違うジャンルの企業も関わることができ、違う展開も広がるのではないかと思っています。
ふくろやタオルさん
〒598-0052 大阪府泉佐野市旭町3-37
インタビュアー / 和吉(わきち) 文・写真 / 渡辺葉一
和吉(わきち)
プロデューサー・コーチ
大阪府泉佐野市生まれ。東京にて人材系企業リクルートでの勤務を経て、人材・組織開発コンサルタントとして独立。2021年より泉佐野市にUターン。現在は新規事業のプロデュースや、組織のビジョン・戦略創りのコンサルティング・コーチング活動を展開中!ミッションは「にっぽんの未来を発掘!」
渡辺葉一
泉佐野コミュニティマネージャー/ヒトツナギ 代表
商工会議所の経営指導員やまちづくり企業でのエリアマネージャーとしての経験から個人事業主として独立し中小企業の広報、プロジェクト実行支援を行っている。得する街のゼミナールさのまちゼミ発起人/ローカルメディアTAKEOUTいずみさの運営など泉佐野市でコミュニティ形成・まちづくり活動中!
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