1.OPECプラス、200万バレル減産で合意
OPECプラスが大幅減産を決めました。そして、早速原油価格が上昇しました。
2.原油価格の上昇よりも重大なこと
OPECプラスの減産の決定による原油価格の上昇も重要なことです。しかし、今回の決定でより重大なことは、サウジアラビア主導のOPECプラスが米国を裏切っているという点、そして、それがまかり通っている点です。
日経新聞にはこのことは書かれていませんが、フィナンシャルタイムズはこのことを報道しています。
この内容の重大な点は「Saudi Arabia and Russia have led the Opec+ cartel/サウジアラビアとロシアはOPECプラスカルテルを主導した」というところです。
つまり、サウジアラビアは米国ではなく、ロシアについているということです。
このOPECプラスの減産の決定は、サウジアラビアとロシア主導で、インフレに苦しむ西側諸国の意向に反する決定なのです。
なぜ、これが重大なのか、過去の記事を参照にしてください。その理由が分かります。
サウジアラビアは米国の守護の元、原油を世界にドルで輸出してきた国なのです。米国主導のNATOはロシアと戦うウクライナを支援しています。OPECプラスのメンバーとはいえ、また原油価格の下落を抑えるためとはいえ、ロシア側についているというのは極めて重大なことです。
これはインフレに苦しむ西側への影響もさることながら、ペトロダラーシステムが崩壊する可能性のあることです。米国基軸通貨はもはや、その影響力を低下させつつある象徴と言えるでしょう。
まさに世界は分断されてきています。それは、ロシアの友好国と非友好国へと。ロシアの友好国が一枚岩とは思いません。しかし、米国、米ドル離れは間違いないでしょう。
3.世界経済減速の中の原油高
OPECプラスの減産の背景には、ロシアに対する制裁として西側のロシア産原油の価格上限設定への反発もありますが、世界経済の減速もあります。それを貿易の面から世界貿易機構が発表しています。IMF、世界銀行、そして世界貿易機構が続けざまに世界景気の減速見通しを発表しています。
世界景気の後退は原油価格の下落要因です。そのため、OPECプラスの減産があったとしても、大幅な原油価格の上昇は無いだろうと予測します。しかし、今でも高いインフレ率が米、欧では簡単には収まらないだろうとも思われます。
したがって、インフレは長期化するのではないでしょうか。しかし、西側のインフレの長期化は、ロシアの側を助けることにもなります。大幅上昇は無いまでも原油価格の大幅下落がなければ、ロシアは助かります。
欧州は大変です。安価なロシア産天然ガスの供給は止まった状態です。ロシアは経済制裁やNATOのウクライナ支援が続く限り、再開することはないでしょう。欧州のエネルギー価格は高止まりの可能性が大です。
そして、原油も安くならないとなると、英国もEU圏もインフレを抑えることができません。しかし、金利は上げなければ、インフレ率がますます上昇します。インフレによって生産コストも、生活コストも上昇し、生産も消費も減退。しかし、政治的理由でエネルギーコストは高止まりでインフレは収まらず。
それは、スタグフレーション(不景気の中の物価高)として、英国やEU圏を苦しめるはずです。しかし、米国主導の世界秩序は崩壊しつつあり、世界は分断。世界の国々が米国、いやバイデン政権に従って、ただただ米国の言うことを聞くとは思えません。
今回の世界景気の減速は、リーマンショックの時とは違い、政治的思惑が強く関わります。これは、米国および西側主導の政治経済の終焉と新たな世界秩序及び世界経済のルール変更の時となるでしょう。
その象徴的な出来事が、今回のOPECプラスの減産発表と考えます。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】