米消費者の1年先インフレ予想5.2% 1年3カ月ぶり低水準~ハトVSタカで揺れるFRB~【日経新聞をより深く】
1.米消費者の1年先インフレ予想5.2%
インフレはピークアウトしたと市場関係者はみているようです。実際には結果を見なければわかりませんが、ピークは越えた感があります。
ただ、次はインフレ率は急激に下がってくるのか、それとも下がるペースは遅いのか。それは、FRBの利上げペースに関係してくることになります。
2.ハト派VSタカ派
これまで、FRB内部でも一致して大幅利上げでした。しかし、ここに来て意見が分かれています。
インフレは頑固で簡単には下がらない。金利の引き上げが十分ではなかった時にインフレが長引き、金融政策の失敗となる。そのため、金利はまだ引き上げるべきであり、最終金利は5%レベルとなる。
これが主にタカ派の意見です。
インフレはピークアウトした。今度は、金利を引き上げた結果を検証する時期に入っている。もし、金利を引き上げ過ぎれが深刻な景気悪化を招く。金利引き上げをスローペースとし、さらには最終金利は4%前半程度で留め、金利引き上げの効果を見て次の展開を考えるべきだ。
これが主にハト派の意見です。
パウエル議長はどちらか。パウエル議長の過去の発言を検証すると、「金利引き上げが十分ではないことの方が怖い」というものです。
ということは、金利は引上げペースを落としたとしても、最終金利は5%を超えることが十分考えられます。
3.ポールボルカーの時代
「インフレファイター」として知られるポール・ボルカー氏は、1979年8月6日にFRBの議長に就任しました。当時の米国は、第2次オイルショックの影響で、深刻なインフレに直面していました。こうした中、ボルカー氏は1979年10月6日、金融政策の操作目標を、「フェデラルファンド(FF)金利」から「非借入準備」に変更する、新金融調節方式の導入を決定しました。
非借入準備とは、金融機関がFRBに積み立てている準備預金総額のうち、FRBからの借入分を差し引いたものです。新金融調節方式の狙いは、非借入準備を操作目標として、オペ(公開市場操作)による引き締めを行い、通貨供給量の伸びを抑制し、インフレを抑え込むことです。一方、FF金利については、金利の決定水準を資金の需要供給に委ね、大幅な変動を容認したため、新金融調節方式の導入後、急騰しました。
ボルカー氏がFRB議長に就任した1979年8月、CPI(消費者物価指数)の伸び率は前年同月比で11.8%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は10.94%でした。その後、実効FF金利は1981年1月に19.08%まで上昇し、米国経済は、1980年1月から7月までと、1981年7月から1982年11月までの2回、景気後退を経験しました。また、この間、失業率は悪化が続き、1982年11月には10.8%に達しました。
CPIについては、1980年3月に前年同月比で14.8%上昇しましたが、その後は伸びが鈍化し、1981年5月には伸び率が2桁を割り込みました。物価が落ち着き始めたため、FRBは1982年秋以降、金融政策の操作目標を「借入準備」(金融機関のFRBからの借入金)に変更し、通貨供給量に加え、金利水準と実体経済も勘案し、政策運営を行うこととしました。これには、新金融調節方式の導入後に拡大したFF金利の変動を抑える意図があります。
ボルカー氏は1978年8月11日にFRB議長を退任しましたが、同年8月のCPIの伸び率は前年同月比で4.3%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は6.73%でした。ボルカー氏は景気を犠牲にした面はあったものの、インフレ抑制には有効だったとの評価も多方面からあります。市場の動きを見ると、ダウ工業株30種平均は、物価の落ち着きが明確になってきた1982年の夏以降、上昇傾向が鮮明になっていきます。
パウエル議長、そしてFRBは今後、どのように動くのか。CPIの発表、FOMCを控え、世界がその動向を注目しています。
12月のFOMCはおそらく0.5%の利上げと思われますが、最終的には5%、そしてそれが、しばらく維持される。それが私の予想です。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】