金価格の上昇は何を意味しているのか?
金価格は史上最高値を更新しました。
この直接の要因はFRBパウエル議長の発言から市場が利下げ観測を織り込み、債券から株や金へ資金がシフトしたためと思われます。
しかし、金価格の動きを見ると、「あれ?」という感じることがありました。
まず、金価格の1968年からの動きです。1973年のスミソニアン体制の崩壊までは、ドルと金の価格は固定でしたから上下はありません。(1944年から1971年までは1オンス35ドル、1971年から1973年までは38ドル)
その後、金とドルの交換が停止され、ドルは信用通貨となり、金の裏付けはなくなります。結果として、金価格は上昇しています。この流れはドルの弱体化を意味しています。この金価格の上昇は、注目のポイントです。
では、2023年12月4日の金価格の動きを見てみると、突如として突き上げるように上昇しました。2070ドルからいきなり2108ドルへの上昇です。これは、強烈な買い一発で上昇させたことを物語ります。
一発噴き上げた後は、元に戻るところまで下げています。
いったい、どこの誰がこのような相場が吹き上がるような買いを入れたのでしょうか。
そこは謎なのですが、しかし、何らかの理由で誰かが金を大量に買ったということを意味します。
ビットコインも2023年12月4日は急上昇しています。これも、かなりの買いが入ったことを意味しています。
金については、ドル離れが加速しており、各国中央銀行が購入を増やしていることから、今後も上昇傾向が続くのではないかと思います。
しかし、誰が何のためにかはわかりませんが、大量の金の購入に動いたことは間違いありません。金は間違いなく注目度が上がっています。
第二次世界大戦後は金とドルの兌換が行われるブレトンウッズ体制でした。
この時のドルは「金兌換券」でした。つまり、ドルの裏には金があり、ドルを持つことは金を持つことでした。富は金だったのです。
しかし、ブレトンウッズ体制崩壊後のドルは裏付けのない信用通貨となりました。
何の裏付けもない通貨であるドルを世界はなぜ基軸通貨として認めてきたのか。それは、ドルを発行している米国が経済的、軍事的に強かったからです。強い米国だったからこそ、ドルを基軸通貨とすることに世界は同意してきました。そして、同意せざるを得なかったのです。
しかし、米国が「強くない」とすれば、話は別です。米国が強いと思っていたけど、そうでもないというのがウクライナ戦争の結果として見えてきています。
そして、米国には巨額の経常収支の赤字があります。世界で最も大きな経常収支の赤字です。世界191カ国中、191位。
なぜ、米国の経済が破綻していないかというと、日本や中国など経常黒字国が米国債を購入し、ドルの外貨準備を積み上げることによって、ドルを米国に還流させてきたからです。
そして、なぜ、米国債やドルの外貨準備を積み上げたかというと、ドルが基軸通貨だからです。どの国もドルを貿易で必要としたからです。
もし、ドルを貿易で利用しないとなるとどうなるか。信用通貨で裏付けのないドルは、暴落します。金とドルの交換を停止して以降のドルは、価値の裏付けはないのです。世界中は「ドルは価値がある」と思っていたから価値があっただけであり、裏付けはないのです。
そして、金に対してドルは金とドルの交換停止となったニクソンショック以来、57分の1に暴落しています。金との関係では既にドルは大暴落しているのです。
さらに、今、金は史上最高値を更新しています。それは、金とドルの関係でドルは史上最安値を記録しているということなのです。
世界の中央銀行はドルの外貨準備を減らし、金を購入しています。その為、金価格の高値推移をもたらしています。
中央銀行の金の購入増は一過性のブームではなく、ドル離れの加速を意味しています。
そして、通貨とは何か?という根本的なことが問われており、通貨は信用通貨であると思い込んでいた私たちは、50年前の回帰、つまり金兌換性への回帰を目撃しているのかもしれません。
BRICSが台頭し、共通の通貨構想という話が出ています。その通貨の信用は金を背景とする可能性が高まっています。
2023年12月4日の巨額の金購入の主は誰かはわかりません。しかし、徐々に上がってきている金価格は、ドル離れの証であると言えるのです。
金価格の上昇の本番はまだこれからでしょう。そして、ドル基軸体制が崩壊するのも、本番はこれからです。