【日経新聞をより深く】英中銀、国債を無制限購入 市場安定へ臨時措置~英国が売られる~
1.英国中銀、国債を無制限購入
債券市場で英国債が大量に売られました。FTでは、市場はかなり緊迫した状況となり、「リーマンショック」に近づいたところを何とか回避したとも報道されています。
全文訳はこちら↓(市場の緊迫感は日経からは十分伝わらないので、全文訳をぜひお読みください)
2.なぜ、英国債が大量に売られる事態に?
なぜ、これほどまでに英国債売られ、金利が休場する事態となったのでしょうか。その流れを確認しておきましょう。
新政権の誕生による経済政策
ジョンソン首相が辞任し、トラス首相が誕生しました。そのトラス政権が打ち出したのが、大規模減税政策です。9月23日に英国の財務相クワジ・クワーテング氏は大規模な政府借入を前提とした450億ポンド規模の減税政策を発表しました。所得税や住宅購入の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止するという内容です。これによって、経済成長に弾みをつけたいという意向です。
英国債利回り急上昇
新政権の経済政策の発表を受けてすぐに債券市場が反応しました。英国債の利回りが急上昇(債券価格は下落)。
英国ポンドが急落
ポンドが対ドルで一時4.7%以上下落し、市場最安値を更新しました。
イングランド銀行の介入
国債利回りの急上昇、ポンドの下落を受けて、たまらずイングランド銀行は介入に入りました。残存期間20年超の銘柄を対象に市場からの国債購入を始めました。10月14日まで毎営業日、市場の安定に必要と判断すれば金額無制限で実施するとしています。初日は10億2510ポンド(約1600億円)相当を買い入れています。
世界的な物価高の危険性を警告してきた米国のラリー・サマーズ財務長官は「英国は長きにわたり、主要国の中で最悪のマクロ経済政策を追求したと記憶されるだろう」と指摘しています。
新政権が発表した経済政策の問題は、不足する税収を充当するためには大規模な国債発行が必要だということです。債権供給拡大に対する懸念は、ドル高の中では英国債の投資収益率が下がるのではないかとの憂慮が重なったことで、市場では英国債の投げ売り現象が起きたのです。
金利が跳ね上がった背景は上記の理由からです。さらに減税などの景気浮揚策を通じて市場での需要を増やせば、物価をむしろ刺激することとなり、政策金利引き上げが加速するという懸念もあります。
市場では、英国債の価格と共にポンドが過去最低水準にまで暴落したのは、英国政府の経済政策に対する金融市場の信頼が墜落したためだとの見方が強くあります。
通常は政策金利が上がれば人々は利子を多く得ようとするため、通貨価値は上がらなければなりません。しかし、正反対の現象が起きています。
それは、減税政策によって物価安定と成長の両方が達成できない上、高金利のせいで政府の借入ばかりが増えるため、国の信用に問題が生じるということになります。
英国は、減税というアクセルと金利上昇というブレーキを両方踏みこみました。そして、アクセルの財源は国債発行ということで、国の財政に対する信頼に疑問が生じているということです。
3.今後はどうなる
英政府の経済政策に変更がない限り、英国財政への不信はぬぐえないでしょう。しかし、エネルギー問題から来るインフレはそう簡単には収まりそうもありません。
したがって、金利を上昇させなければ、インフレはますます加速します。高金利によって景気後退懸念を払しょくするために、減税をすれば、さらにインフレを招き、金利を引き上げる必要が出てきます。
英国は先進国では最悪のインフレとなっています。それを止めるためには金利の上昇。しかし、それは景気減速を招く。景気を刺激するための減税政策は、インフレを促進させ、金利を上昇させる。
どうしようもない状況です。
一旦は景気後退を受け入れてでもインフレ対策をしっかりと行うことが大事なのでしょうが、インフレを受け入れられない国民は、そういった政策を打ち出す政権を指示しません。そのため、そもそもインフレ対策を優先し続けることが難しい。
英国は今後、大混乱となっていく気がします。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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