1.IMF専務理事「世界の3分の1が景気後退」
IMFのゲオルギエバ専務理事はIMFとして公式に明日、世界経済の景気後退発表する講演でスピーチをしました。
世界的な景気後退はもはや避けられない状況が鮮明になってきています。ただ、日経新聞の報道は、少し意図的な点があると感じます。
それは、引用した記事の中の「ロシアによるウクライナ侵攻を批判し」という点です。IMFの日本語訳をされた文を見ると、「無意味な戦争」とは言っていますが、「ロシアを批判する」ことはしていないように感じます。
さらに、英文を確認しましたが、「a senseless war」「Russia’s invasion of Ukraine」(「意味のない戦争」「ロシアのウクライナ侵攻」とは発言していますが、それがロシアを批判しているという内容ではないと感じるのは私だけでしょうか。
ロシアを批判するというよりは、インフレを懸念しており、中央銀行により金利コントロールの難しさを語っています。
日経新聞は「ロシアを批判する」ことを印象付けようとしているように感じます。この講演はロシアを批判する内容ではなく、世界経済に対する深い懸念を表面した講演なので、政治的な話ではないと感じています。
2.世界経済におけるリスク
今回のIMFのゲオルギエバ専務理事の講演の中で、財政が脆弱な国への懸念が語られています。これは非常に重要な問題です。
特に食料の問題と財政の問題です。
IMFはこれらの問題を支援をしていくと語っています。しかし、現在の世界経済のリスクはここにあるのではないでしょうか。
確かに先進国経済が深刻な状況になることは大変な問題です。しかし、途上国や低所得国では、食糧危機が起こり、政府の財政破綻が現実化するのです。
これは、不況で語られるレベルではなく、命の危機になります。現在の不確実化し、分断された世界で起こる経済危機は、大量の食糧危機に瀕する人たちを生み出し、多くの財政破綻国を生み出す可能性があります。
しかし、世界はインフレです。このインフレを抑えることが何よりも大切だとIMFも言っています。インフレを抑えるためには金利の上昇が不可欠であり、金利の上昇は、債務が多い国の経済を圧迫し、脆弱な財政の国の通貨を弱体化させます。したがって、財政の厳しい国を破壊していく手段でもあるのです。
だからこそ、世界は協力しなければならないというのがIMFのゲオルギエバ専務理事の主張です。
3.世界は協力できるのか
世界は協力できるのでしょうか。私は極めて難しいと思います。それは、ロシアのプーチン大統領の演説内容を知ると、強く思います。
さらに続けて
そして、この演説では、今回の特別軍事作戦に際して、世界のほとんどの国がロシアと協力したことは、世界のほとんどの国が欧米に反抗したということであり、これは西側が予想していなかったことだと言っています。
プーチン大統領には、(西側の価値感として良いか悪いかは別にして)信念を感じます。そして、この演説の中でウクライナのことは批判していません。というより、眼中にないという感じです。それよりも欧米、特に米国の横暴を徹底的に非難しています。
そして、次のようにも語っています。
「世界は革命的な変革期を迎えており、それは基本的なことだ。新しい開発拠点が形成されつつある。彼らはマジョリティを代表している。- 彼らは多極化の中に、自国の主権を強化する機会を見出し、それによって真の自由、歴史的展望、独立した創造的で独特な発展への権利、調和のとれたプロセスを獲得しようとする。
欧米をはじめ、世界中に志を同じくする人たちがいて、その支持を実感している。一極集中の覇権主義に対する解放・反植民地運動が、さまざまな国や社会で展開されている。その主観は増すばかりである。この力こそが、今後の地政学的な現実を決定するのである。」
プーチン大統領の言うように、世界が一極集中から多極化へと移行しているとすると、欧米エリートが求める経済安定と金融システムの安定を世界が協力して行うことは無いということになります。
それよりも世界が一極集中から多極化の時代に入り、各国が主権を持って国家運営をし、主権を持った国々の連携は新しいシステム、新しい秩序を必要とします。
トランプ前大統領の「Make America Great Again」の方針も実は、身勝手な政策ではなく、プーチン大統領の話と根は同じで、各国が主権を持って、民族の伝統を大切にした多極化時代の政策であったのです。
世界経済は、後退から深刻な危機へと向かうでしょう。それは、新秩序、新システムを生み出すための一過程となるはずです。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】