日本に原油は入り続けるのか?英米がイエメン空爆、イランは石油タンカー拿捕
ペルシャ湾では、オマーンでイランが石油タンカーを拿捕して、タンカーをイランの港に輸送していると報じられました。
これは昨年米国が没収した船が名前を変えて使われており、それをイランが取り返したというものです。拿捕された船舶はマーシャル諸島船籍の原油タンカー「セント・ニコラス」(旧名「スエズ・ラジャン」)だということです。
米国と英国の両軍は木曜日、イエメンのフーシ派支配地域の複数のフーシ派標的に対する攻撃を行いました。ジョー・バイデン大統領は、「紅海における国際船舶に対する前例のないフーシ派の攻撃への直接の対応として」攻撃を命令したと述べました。
紅海、ペルシャ湾ともに緊張が高まっています。
フーシ派の支援をしているのはイランです。
フーシ派への攻撃はイランへの挑発行為です。そして、イランは米国に没収された船舶を取り返すという行動に出ています。イスラエルーハマス戦争は、イエメン、イラン、そしてヒズボラをも巻き込んだ局地的な紛争から地域的な紛争に広がる可能性が大きくなってきました。
フーシ派が攻撃されたのは、紅海のバブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶への攻撃に対する報復でした。紅海をイスラエルに関わる船舶が航行できなくなっていることが重大問題となっています。
そして、イランがこの紛争に直接かかわると、起きることは、ペルシャ湾の封鎖です。ホルムズ海峡を通過できなくなるということです。
バブ・エル・マンデブ海峡は世界の海上輸送の4分の1が通過しています。紅海の地中海側にはスエズ運河があります。バブ・エル・マンデブ海峡も紅海もスエズ運河も、アジアとヨーロッパ間の重要な海運ルートの要衝です。
国際海事機関(IMO)の試算によれば、年間数十億トンの貨物がこの航路を通過しています。この海上貨物には石油も含まれ、ペルシャ湾やアジア諸国で生産されたバブ・エル・マンデブ海峡を通過する石油の輸送量は、1日当たり450万バレルにのぼる、と米国エネルギー情報局(EIA)は推定しています。
現在、世界の主要な船舶はバブ・エル・マンデブ海峡を通過することを回避し、南アフリカの喜望峰ルートで航行しており、重大なコスト増に見舞われています。
ペルシャ湾のホルムズ海峡はイランやサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などの産油国が面するペルシャ湾とオマーン湾の間に位置します。原油と石油製品を合わせて日量約1700万バレルが行き交うエネルギー供給の大動脈です。特に日本にとってホルムズ海峡は最重要地点といってもいいでしょう。
経済産業省統計速報(令和5年11月)によると、2023年11月の原油の中東依存度は94.6%です。さらに、中東の中でもサウジアラビア、UAE、クウェート、バーレーン、カタール、オマーンから輸入しています。これらの国はいずれもペルシャ湾に面しており、日本の中東からの原油は全てホルムズ海峡を通過して入ってきているのです。つまり、ホルムズ海峡封鎖は、日本への原油輸入の断絶を意味するわけです。
このホルムズ海峡封鎖で大打撃を受けたのが1973年の第一次オイルショックです。当時、OAPECが、親イスラエル政策を採る諸国に対する石油輸出の制限を発表すると、日本政府(田中角栄内閣)は大きな衝撃を受けました。日本も親イスラエル国家に加えられていたので、禁輸リストに載せられていたのです。そこで、政府は急遽、二階堂官房長官の談話として、イスラエル軍の占領地からの撤退とパレスチナ人権への配慮を声明しました。
これは米国のユダヤ系勢力の反発が予想されましたが、石油禁輸の事態を避けるためにやむなく踏み切りました。また、12月には三木武夫副総理を特使としてサウジアラビア、エジプト、シリアなどアラブ諸国に派遣し、禁輸リストからの除外を要請しました。これらの外交努力により、日本は結果的に禁輸国リストから外されました。
これは田中角栄内閣の危機管理のなせる業だったと言えるでしょう。しかし、それでも原油は高騰し、日本全国のスーパーの店頭からトイレットペーパーや洗剤が消えました。「石油供給が途絶えれば、日本はモノ不足になるのでは?」という不安感からのことです。
岸田首相はどうでしょうか。外務省によると、岸田首相は2023年12月6日にイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談しています。その中でパレスチナ、イスラエルが共存する二国家解決を支持すると表明しているものの、冒頭では、「ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する」と述べています。しかし、イスラエルによるガザへの攻撃には抗議はしていません。かろうじて人道状況への改善の必要性を働きかけるという曖昧な表明をしておりますが、攻撃そのものを非難も、抗議もしていません。つまり、イスラエルに配慮しています。
米国への忖度からイスラエルへの非難はできません。またパレスチナへの配慮もできません。
日本の立場からすると、いくら米国へ忖度しようと、ホルムズ海峡封鎖されれば、ひとたまりもありません。禁輸リストができ、そのリストに「Japan」と入れば、日本には原油は入って来ないのではないでしょうか。
日本の首相官邸は分かっているのでしょうか。そして、この状況に、日本は国家としての意思はあるのでしょうか。
残念ながら、何もない、としか思えません。
このバブ・エル・マンデブ海峡とホルムズ海峡の状況、今の日本の重大課題だと思いますが、皆さん、どう思われますか。
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