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【日経新聞をより深く】FTX破綻、仮想通貨で過去最大 世界に影響連鎖も~裸で泳いでいた人~

1.FTX破綻、仮想通貨で過去最大


暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングが11日、関連会社130社を含めて日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。裁判所資料によると、負債額は推定で数兆円にのぼり、仮想通貨業界で過去最大の経営破綻となる。世界各国で幅広く事業展開しており、連鎖破綻を警戒する声も出ている。

FTXトレーディングによる裁判所への提出書類によると、破産申請した法人の中には日本法人「FTXジャパン」(東京・千代田)とその親会社と関連会社、合計3社が含まれた。米国や欧州、アジア、中東、アフリカなど各国の法人が名を連ねる。

(出典:日経新聞2022年11月12日

暗号資産交換業者大手のFTXトレーディングが破産を申請して世界的な大ニュースになっています。

FTXは2019年設立の仮想通貨交換業者です。登記上の本社はタックスヘイブンのバハマです。急成長を遂げた同社の成長スピードは企業評価額に表れています。19年設立にも関わらず、資金調達時の企業価値評価は320億ドルに達しました。世界最大の運用会社ブラックロックのほか、米ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタル、ヘッジファンドの米タイガー・グローバル・マネージメントなど世界の投資家が資本参加しています。日本でもソフトバンクグループ傘下の「ビジョンファンド2号」が出資しています。

世界有数の暗号資産交換業者の破産はなぜ起きたのでしょうか。

2.FTX破産の理由

FTXの急成長を実現する上で重要な役割を果たしたのがCEOのバンクマン・フリード氏が個人所有する投資会社アラメダ・リサーチでした。アラメダ・リサーチはFTXとともに経営不振になった仮想通貨関連業者を融資などを通じて支援してきました。アラメダが投資してきた企業は100社を超えていました。

なぜ、アラメダにこれほどの資金があったのか。その理由の一つがFTXが仮想通貨を使った資金調達、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)で発行したトークン(電子証票)「FTT」でした。アラメダはICOなどで取得したFTTを担保にFTXから100億ドル相当の融資を引き出して、投融資を拡大しました。

そして、もう一つ理由があり、それが疑惑となっていますが、FTXがアラメダへの融資の原資として、顧客が取引のために預けた資金の一部を流用していたということです。これは、今後の調査によって明らかになるはずです。

今回の事件の発端は、アラメダ・リサーチの資産状況の公表でした。

米メディアCoinDeskのイアン・アリソン記者が11月2日、その時点での評価額に基づいて、アラメダ・リサーチのバランスシート上の146億ドルのうち約58億ドルが、FTXのトークンFTTに関連していると報じました。

リークされた社内文書に基づくこの発見が事件の引き金を引きました。元々アラメダ・リサーチとFTXは密接な関係になり、どちらもバンクマン・フリード氏が創業し、二社間の取引の程度や性質には大きな懸念が存在していましたが、それが発覚したのです。

この報道で明らかになったのは、アラメダ・リサーチの資産の多くは自社で発行するFTTトークンであるのではないかという点が問題視されたのです。

この財務リスクに、FTXのライバル企業で業界最大手の取引所バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOが、保有するFTTを今後すべて売却する方針を表明しました。

「バイナンスはFTX株式売却の対価として約21億ドル(3,100億円)相当のFTTなどを受け取ったが、帳簿に残るFTTを生産する」

このツイートに投資家はFTTの投げ売りに動きました。6日に25ドル台だったFTTの価格は急落し、12日現在2ドル台で推移しています。

(出典:Investing.com

FTXを利用する顧客も資金引き出しに殺到しました。8日朝までの72時間で60億ドルがひきだされました。自力再建を断念したバンクマン・フリード氏はライバル会社のバイナンスに救済要請をします。

一度は米国以外の事業の買収で合意しましたが、バイナンスは翌9日に方針を撤回しました。信用不安は仮想通貨市場全体に波及し、仮想通貨の時価総額は10日までの2日間で32兆円消えました。7日まで2万ドル台で推移していたビットコインの価格は一時1万5,000ドル台に下落し、約2年ぶりの安値をつけました。

(出典:TRADING ECONOMICS/ビットコイン価格(USドル)

バンクマン・フリード氏は9日、一部の投資家に「80億ドルの資金不足に直面しており、支払能力を維持するためには40億ドルが必要」と述べていました。FTXは資金調達に奔走し、複数の投資家との調整を進めましたが、資金繰りのメドは尽きませんでした。

信用不安の引き金となった投資会社、アラメダ・リサーチや米国法人を含む約130のグループ会社が破産法を申請しました。新しいCEOにはジョン・J・レイ氏が就きました。レイ氏は「破産法申請が利害関係者への還元を最大化するのに適切だと判断した」と述べています。

今後、実際に顧客資産がどの程度戻ってくるのか不明です。

3.暗号資産はこれからどうなるのか?

(出典:TRADING ECONOMICS/ビットコイン価格(USドル)

コロナ以降の過剰流動性において、暗号資産の市場もバブルだったというのが実態だったということでしょう。このバブルがはじけたからこそ、露になった出来事の一つなのではないでしょうか。

(出典:TRADING ECONOMICS/FRBバランスシート

上図はFRBのバランスシートの資産状況です。上昇しているということはFRBが市場から国債等の資産を買い上げて、資金を供給しているということです。つまり、金融緩和(QE)です。

大幅に資金供給が増えて、その後、ビットコインも急上昇しています。そして、今年に入り利上げ観測が高まり、実際に3月から利上げが始まりました。そこから、ビットコインの暴落が始まっています。

つまり、過剰流動性が引き起こしたバブルだと見て取れるわけです。

問題はこの後です。今後もしばらくは金利の上昇とともに、暗号資産市場も厳しいことが予想されていました。それに加えて今回の暗号資産市場の信頼性が問われています。

日本でも多数の人々が次の時代は暗号資産だと投資を行っていました。果たして、暗号資産の市場は、このまま成長していくのでしょうか。それには厳しい規制や監視体制が必要になるでしょう。それを乗り越えて育つのかどうか。

それとも、信頼性を失っていき、このままバブルで終わるのか。暗号資産の正念場が来たのではないでしょうか。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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