【日経新聞から学ぶ】米国8月雇用統計、就業者31.5万人増 失業率3.7%に上昇
1.8月の米国雇用統計
8月の米国の雇用統計が発表されました。
日経新聞やウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズともに共通するのは、非農業部門雇用者数の増加率はペースが落ちたものの、依然として堅調であり、FRBによる金融引き締めは継続し、次回の政策決定会合では0.75%の利上げをする可能性を否定できないというものです。
市場の反応としては、ニューヨークダウは下落しました。雇用統計を受けて、FRBの金融引き締めの姿勢は変わらないだろうとの予測です。そして、ドル円の為替は1ドル140円台をつけました。これは、米金利上昇の予測から日米金利差の拡大が懸念されたものです。
FRBは9月も0.75%のFF金利の引き上げ、そして、最終的には4%を超える金利まで引き上げる可能性は十分にありそうです。
2.米雇用統計はなぜ、重要視されるのか
米雇用統計は毎月第一金曜日に発表され、世界の金融・経済に大きな影響を与えます。そもそも米雇用統計はなぜ、重視されるのでしょうか。
米雇用統計は、月の最初に発表されるため、速報性があることが重要視される理由の一つです。
非農業部門雇用者数
非農業者部門雇用数とは、農業部門を除く産業で働く人の数とその増減をまとめたものです。前月比の増減で判断され、一般的に雇用が堅調に増加すると賃金も増え、個人消費が拡大すると予測されます。
失業率
失業率とは、米国内の失業者数(16歳以上の働く意思のある人数)を労働力人口(失業者数+就業者数)で割って算出し、増減と共に公表されます。一般的に失業率が上昇すれば個人消費が減少し、失業率が低下すれば個人消費が増加すると予測されます。
米国雇用統計が世界の金融・経済に影響を与える理由の二つ目は米国経済が世界最大であるということです。2022年4月にIMFが発表した世界の名目GDPランキングは以下の通りです。
(2021年ランキング 単位:百万USドル)
1.米国 22,997,500
2.中国 17,458,036
3.日本 4,937,422
4.ドイツ 4,225,924
5.イギリス 3,187,626
6.インド 3,041,985
7.フランス 2,935,488
8.イタリア 2,101,276
9.カナダ 1,990,762
10.韓国 1,798,544
(参照:IMF)
こうして世界の名目GDPのランキングを見ると、米国の経済規模の大きさが分かります。日本の4倍以上です。そして、世界の名目GDPの約1/4を占めています。さらに知っておくべきことは、この世界最大の名目GDPの米国経済の約7割を個人消費が占めるということです。すなわち、米国経済が良くなるか、悪くなるかは個人消費が増えるか、減るかにかかっており、個人の雇用の情勢を表す米国雇用統計は、その動向を占う重要な指標なのです。
米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)は、金融政策の決定にあたり、この「米国雇用統計」を非常に重視しています。
FRBの金融政策では、一般的に景気が良いと政策金利を引上げ、景気が悪いと政策金利を引き下げます。金利の引き上げが行われた場合、市場金利が上がるため、「高い金利の通貨を買いたい」投資家たちの「ドル買い」が起こる傾向があります。
一方、引下げが行われた場合は、市場金利が下がり、「低い金利の通貨は手放したい」投資家たちは「ドル売り」が起こる傾向があります。このような投資家たちの動きが為替レートに大きな影響を与えるといわれています。
さらに米国雇用統計が世界の金融・経済に影響を与えるポイントとして、事前予想との乖離があげられます。
米国雇用統計では、発表前に予想値が発表されます。発表された結果がこの市場予想より良い場合、投資家は米国経済の先行きが良好だと判断し、景気への期待から株価は上昇し、ドルが買われ、金利も上昇する材料となります。
一方で、米雇用統計の改善によりインレフ率が上昇すれば、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利の引上げを意識することが想定され、株式市場では警戒感が高まる材料となります。
このように米雇用統計は、米国の景気を見通すための重要な指標であり、また、世界最大の名目GDPの米国経済は世界の金融・経済への影響が大きく、世界的に重要な指標であるといえるのです。
3.これからどうなる?
2022年8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加にスローダウンは見られるものの、引き続き、堅調であると市場は見ているようです。そのため、FRBは金利を引き続き、引上げる、しかも0.75%の大幅利上げの継続もあり得るとみられています。
次回FRBの政策決定会合のFOMCは9月20日~21日です。ここまで、タカ派的な見方が大勢を占めるのではないでしょうか。つまり、円は売られ、ドルが買われる。また、米国の株価は下落傾向。
EUは9月8日に政策決定会合がありますが、そこでは利上げは確実です。しかし、EU圏の景気後退懸念から、利上げをしたとしても、引き続きユーロ安が続くと予測します。
そして、日銀の政策決定会合は9月21日~22日。ここで、日銀が金融政策の変更を行うかどうかは、非常に注目ではあります。現在、140円台に突入した円がさらに円安に向かった時、日銀の金融政策に批判が集まるでしょう。
ただし、日銀が金融政策を変更する可能性は低いとみます。その時、さらなる円安が待ち受けているのではないでしょうか。もしかすると、1ドル145円、あるいはそれ以上の円安もあるかもしれません。
私たちは、円資産がドルに対して、目減りしている事実に目を向けていく必要がありそうです。
未来創造パートナー 宮野宏樹
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