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【日経新聞をより深く】NYダウ3万ドル・原油80ドル割れ 金利急騰で市場動揺~原油価格の下落は世界経済後退のサイン~
1.NYダウ3万ドル・原油80ドル割れ
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NYダウ3万ドル・原油80ドル割れ 金利急騰で市場動揺
世界で株式や商品の相場が急落し、節目となる水準を相次いで割り込んでいる。23日の米国市場では米ダウ工業株30種平均が3万ドル、原油価格は1バレル80ドルを下回った。世界の中央銀行が大幅利上げを続け、企業業績の悪化や商品需要の減少につながるとの見方から、投資家の間でリスク資産を売る動きが広まった。世界景気の先行き不安は一段と色濃くなっている。
23日の米ダウ平均は前日比486ドル安の2万9590ドルと急落し、3カ月ぶりに3万ドルの節目を割り込んだ。エネルギー問題を抱える欧州でも22日、主要株価指数(ストックス600)が1年8カ月ぶりに節目の400を下回った。
世界の中央銀行が金利を上げた影響で、世界経済の減速が鮮明になっています。フィナンシャルタイムズも報道しています。
Global stocks fall for second straight week as central banks raise rates
中央銀行の利上げを受け、世界株式は2週連続の下落
Oil prices decline to levels seen before Russia’s invasion of Ukraine
原油価格はロシアのウクライナ侵攻前の水準まで下落
Global stocks have sold off for a second straight week, weighed down by concerns over higher interest rates and the health of the economy, while oil prices declined to levels last traded before Russia’s invasion of Ukraine.
世界の株式は2週連続で売られ、金利上昇と経済の健全性に対する懸念が重しとなり、原油価格はロシアのウクライナ侵攻前に最後に取引された水準まで下落した。
The FTSE All-World index of global stocks fell 2.1 per cent on Friday, bringing its loss over the week to 5 per cent, the worst since June.
世界の株式で構成されるFTSE All-World Indexは金曜日に2.1%下落し、1週間の損失は5%に達し、6月以来最悪となった。
2.原油価格の下落の意味すること
現在、ロシアのウクライナ侵攻によって、原油の供給面には不安要素があります。それにも関わらず、原油価格は下落しています。
これは、世界の中央銀行の利上げの影響から原油の需要面が著しく減少していることを意味しています。石油は世界のGDPの3%を占めており、原油価格の下落の意味するところは、世界のGDPの減少です。
米国は来年早々には景気後退に陥ると市場関係者は予測しています。欧州は、景気減速が鮮明になる中、ロシアからの天然ガスの供給不安は続き、エネルギーコストは上昇しています。しかし、米、欧ともに、深刻なインフレが起きており、景気よりも、インフレ抑制が優先されます。景気が後退しても、やむなしです。
中国も不動産バブルの崩壊が日に日に明らかになっており、ゼロコロナ政策から経済成長は止まっています。
世界の主要な経済圏は、原油の需要が減少しており、価格の下落はこれらの経済圏の景気の厳しさを表しています。今後の世界経済の景気後退は間違いないといえるでしょう。
3.景気後退に打つ手なし
かつてリーマンショックが起きた時、FRBは金融緩和を行い、マネーサプライを増やして乗り切りました。コロナショックの際も、世界の中央銀行は大金融緩和を行い、経済崩壊を避けました。
しかし、今、その金融緩和が世界中にインフレを引き起こしています。そのため、今、世界中が景気減速に見舞われても、金融緩和で景気刺激をすることができません。40年ぶりのインフレが襲う中、金融緩和を実施すれば、ますますインフレが促進されます。そのため、景気後退が起きても、それに対応する術がないのです。
世界の中央銀行の利上げは、インフレ抑制です。しかし、インフレとなった原因は、コロナショックから経済を守ろうとした金融緩和です。そのため、インフレ抑制と景気刺激は両立させることができず、どちらかを優先するしかありません。そして、世界中の中央銀行はインフレ抑制、つまり物価の安定を優先します。それは、中央銀行の最も重要な役割が物価の安定だからです。
今後、世界経済は深刻な後退を経験するはずです。しかし、その時、金融としては打つ手なしが現実です。だからこそ、深刻な経済危機に襲われる可能性が高いと思われます。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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