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【日経新聞をより深く】住宅市場が世界で変調 北欧1割安、東欧金融不安の兆し~次の金融危機は住宅市場発~

1.住宅市場が世界で変調

世界の住宅価格が高騰から値下がりに転じた。スウェーデンなどではピークに比べ約1割下げ、米英独など主要国も夏場から下落し始めた。インフレを抑えるための利上げの「効果」でもあるが、世界で250兆ドル(約3.5京円)の規模の市場が急収縮すれば家計債務や金融機関への影響は避けられない。東欧などでは金融システム不安の予兆もみられる。

「北米の不動産市場は混乱している」。カナダの大手不動産ファンド、ロムスペンは8日、不安を感じた投資家から資金引き出し要請が殺到したことを受け、当面は出金に応じないと発表した。融資先の不動産業者のうち4割で元利払いが滞っているという。

カナダ銀行(中央銀行)が政策金利を3.75%まで引き上げ、活況だったカナダの住宅市場は一変した。現地統計のテラネット・ナショナル銀行住宅価格総合指数によると9月は前月比3.1%低下と、遡れる1999年以降で最大の月間下落率となった。住宅が売れず業者が資金繰りに困り、ファンドや銀行のような資金の出し手へのしわ寄せが大きくなってきた。

2020年に新型コロナウイルス禍への対応で世界の中央銀行が一斉に金利を引き下げた。低金利を生かして住宅を買う人が世界で増え、経済協力開発機構(OECD)によると加盟国の平均価格は19年に比べ35%上昇した。

ところが、インフレを抑制するための急ピッチな利上げで市場が変調している。現地統計によるとニュージーランドでは22年1月をピークに10月までに価格が11%下がった。スウェーデンでは3月のピークから9月までに11%下落した。

利上げで先んじた国や市場が過熱していた国の下げが大きくなっている。北欧はロシアのウクライナ侵攻で電気料金が高騰したことも住宅需要の後退につながっているとされる。続いて、米英独など主要国でも夏場から下落に転じはじめた。

UBSによると主要25都市の22年半ばの住宅ローン金利は、1年前に比べ2倍となった。「住宅価格はこれから顕著な調整が予想される」とみる。住宅ローン金利が上昇し、米国では30年物が7%と21年ぶりの高水準になった。住宅ローン申請件数は1997年以来の低水準に落ち込んでいる。

住宅市場の規模は大きい。英不動産サービスのサヴィルズによると世界の住宅資産の価値は2020年時点で250兆ドルと株式市場(約100兆ドル)の2.5倍だ。縮小に向かえば家計や銀行など広範に悪影響をもたらす。

韓国は家計への影響が不安視されている。可処分所得に対する債務の比率は200%程度と世界の中でも高い。過去5年間でマンション価格(全国平均)はおよそ2倍に高騰。ソウル市のマンション価格は円換算で1億円を上回っており、所得水準に見合わない住宅ローンを組んだ世帯も多い。ローンの8割超が変動金利のため利子負担の増加が家計を直撃する。

東欧では銀行破綻につながった。ポーランドでは9月、中堅のゲティン・ノーブル銀行が公的支援の対象となった。同国の住宅ローンは金融危機以降、問題を抱えてきた。低利で借りられるスイスフラン建ての住宅ローンが流行したが、通貨ズロチがフランに対して下落し、返済できない個人が増えた。今年の通貨安や住宅価格の下落がさらに追い打ちをかけ、銀行経営を揺るがしている。

住宅市場の変調に中銀の姿勢にも変化が見られはじめた。オーストラリア準備銀行(中銀)は10月の理事会で政策金利の引き上げを0.25%に縮小した。同国の住宅価格は11年ぶりの速いスピードで調整が進んでおり、住宅市場に配慮したとみられている。

英オックスフォード・エコノミクスは住宅価格下落による逆資産効果、投資の減少、与信基準のタイト化という逆風が重なった場合には、世界の国内総生産(GDP)成長率はベースラインの1.3%から0.3%にまで急低下する可能性があると試算する。

住宅価格の下落は、インフレの鎮圧という目的にはかなう。ただ、低金利になれきって膨張した市場は急激に縮小するリスクをはらむ。

(出典:日経新聞2022年11月20日
(出典:日経新聞2022年11月20日

世界的に住宅価格の下落が始まりました。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の変調を救うための世界的金融緩和の反動です。インフレ抑制のための金利の上昇は世界中で住宅ローン金利を上げ、住宅販売の不振、そして住宅価格の下落へと続いています。

2.各国の指標

  • 米国の指標

(出典:TRADING ECONOMICS/米国インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/米国政策金利
(出典:TRADING ECONOMICS/米国30年住宅ローン金利
(出典:TRADING ECONOMICS/ケース・シラー住宅価格

米国はインフレ率は多少下がったとはいえ、2020年半ば以降、急激に上がったため、政策金利を引き上げました。その結果、住宅ローン金利が上昇し、住宅価格上昇率が急激に下落しています。それにしても、パンデミック以降の住宅価格の上昇率は異常です。

  • カナダの指標

(出典:TRADING ECONOMICS/カナダインフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/カナダ政策金利)
(出典:TRADING ECONOMICS/カナダ住宅価格指数

カナダもインフレ率が上昇したため、政策金利を引き上げ、結果として住宅価格の上昇率が下落しています。カナダもパンデミック以降の住宅価格の上昇はまさにバブルです。

  • ニュージーランドの指標

(出典:TRADING ECONOMICS/ニュージーランド・インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/ニュージーランド政策金利
(出典:TRADING ECONOMICS/ニュージーランド住宅価格

ニュージーランドも急激なインフレに襲われ、政策金利を引き上げています。結果として、住宅価格の下落が始まっています。

  • スウェーデンの指標

(出典:TRADING ECONOMICS/スウェーデン・インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/スウェーデン政策金利
(出典:TRADING ECONOMICS/スウェーデン住宅価格

スウェーデンもインフレ率が急上昇して、政策金利を引き上げています。スウェーデンはパンデミック以降の急激な住宅価格の上昇というわけではありませんでしたが、やはり上昇はしていました。ずっと伸びていた住宅価格が急激に下落を始めています。

  • 韓国の指標

(出典:TRADING ECONOMICS/韓国インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/韓国政策金利
(出典:TRADING ECONOMICS/韓国住宅価格

韓国も急激にインフレ率が上昇し、政策金利を引き上げ。住宅価格はピークを迎え、下がり始めています。

  • 日本の指標

(出典:TRADING ECONOMICS/日本インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/日本政策金利
(出典:TRADING ECONOMICS/日本住宅価格指数

日本は世界の中でも異例です。金融緩和は異次元で実施していますから、インフレ率は上昇してきました。しかし、政策金利は-0.1%のまま変更しませんから、住宅価格の上昇には歯止めが掛かっていません。今後、住宅金利が上昇することがあると、一気に下落するでしょう。

3.2023年は世界の住宅価格のバブル崩壊になる

世界のインフレ率、政策金利、そして住宅価格を見てみると、パンデミック以降の超金融緩和で、住宅価格は異常な上昇を見せました。しかし、インフレ率が上昇し、各国は金融引き締めに転じ、住宅価格は下落し始めています。

まだ、下落は始まったばかりで、今後は世界的な景気後退の懸念からますます住宅販売の不振が予想されます。しかし、戦争という特殊な要因もあり、エネルギー、食糧の価格は簡単には下がりそうもありません。したがって、インフレ率も急降下というわけにはいかなそうです。

世界中で起きた異次元の金融緩和が逆の金融引き締めに世界中一斉に向かっています。(除く中国、日本)世界中で住宅価格のバブル崩壊が起こるでしょう。

IMFは2023年、世界の1/3が不景気になると予測しています。戦争も長期化しそうです。次の金融危機の引き金を引くのは、世界的な住宅バブルの崩壊になるかもしれません。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the world
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