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FPが「確定申告」を解説する!⑥配当金がある場合の戦略

株式を購入したがそのままにしている。毎年配当金が入ってきているが何もしていない人には耳よりな話です。

配当金にかかる税金

ここでは、上場株式を念頭においてお話しします。
配当金には配当所得として、一定の税金が課せられます。

配当所得の計算は、配当金収入から、株式を買うための利子を引くのですが、借り入れをして株式を購入する人はあまりいないと思いますので、ここでの配当収入は、1年間にもらった配当金そのものと考えられます。

この配当金にかかる税金の扱いについては、①申告しない、②総合課税として申告する、③申告分離課税として申告する、の3通りがあります。

①申告しない

まず、FPが「確定申告」を解説する!① 株取引やFX取引がある人 の回でお話ししましたように、証券会社の特定口座の源泉徴収ありを選択している人は、配当金から既に税金が源泉徴収されていますので、とくに申告する必要はありません

②総合課税として、申告する

ただ、特定口座の源泉徴収ありとしている場合でも、総合課税として、他の所得と合算して、税金を計算し直すために確定申告することもできます。
特定口座の源泉徴収あり以外の人は、そもそも申告する必要があります。

総合課税として申告した場合は、配当控除というメリットがあります。
これは最終的な税金の計算において差し引いてくれるありがたいもので、税額控除といいます。
配当控除は、配当所得の10%です(課税総所得金額が1000万円を超える場合は5%)。

したがって、たとえば、年間80万円の配当金収入の人の場合、すでに12万円が源泉徴収(所得税15%)されていますが、所得の合計が195万円に達しない場合の所得税率は5%なので、確定申告したほうが良いということになります。
※計算の便宜上、復興特別所得税を除いています。

具体的には、所得控除には基礎控除しかないとして、
総所得(80万円)ー基礎控除(48万円)=課税総所得金額(32万円)
課税総所得金額(32万円)×税率(5%)=算出税額(1.6万円)
算出税額(1.6万円)ー配当控除(80万円×10%)=マイナスになるので税額0円
したがって、源泉徴収された所得税12万円は全て、還付金としてもどってきます!

ほかにパート収入として100万円あったとしても、
パート収入(100万円)ー給与所得控除(55万円)=給与所得(45万円)
総所得(給与45万円+配当80万円)ー基礎控除(48万円)=課税総所得金額(77万円)
課税総所得金額が195万円に達しないので、税率は5%になります。
課税総所得金額(77万円)×税率(5%)=算出税額(3.85万円)
算出税額(3.85万円)ー配当控除(80万円×10%)=マイナスになるので税額0円
やはり、源泉徴収された所得税12万円は全て、還付金としてもどってきます!

総合課税は給与所得などと合算されて計算しますので、ある程度の給与がある場合には税率5%が10%や20%になるので、ここは実際に計算してみないと分かりませんが、配当金以外にあまり収入がない人は、確定申告することにより、源泉徴収された税金がもどってきます。

ただ、扶養に入っている人は、パート収入に配当収入が合算されてしまいますので、扶養から外れてしまうことがあるので注意が必要です。
細かく計算してみないと分からないので、ここは要相談ですね。

③申告分離課税として申告する

これは、どういう場合に使うかというと、主に、株取引で損をした場合に使います。
ただ、特定口座の源泉徴収ありを選択している人は、上場株式の売却で損が生じた場合には、自動的に配当金と損益通算されますので、特に何もしなくても大丈夫です。

そうではない人は、申告分離課税として申告することにより、上場株式の譲渡損と配当とを相殺することが出来ます。

たとえば、譲渡損が100万円あり、配当金が80万円あった場合は、80万円の配当金が全部相殺されて0円となり、譲渡損は残った20万円を繰り越します。
その結果、配当金から源泉徴収されていた12万円の所得税がすべて還付されます!
確定申告しても、総合課税ではありませんので、他の所得とは合算されません。

上場株式の譲渡損が生じた場合には、FPが「確定申告」を解説する!① 株取引やFX取引がある人 の回でお話ししたように、繰越控除するために確定申告したほうがいいですが、その際に配当についてもこの申告分離課税として申告することにより、このような還付ができるのです。




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