5年10年後のためのスキル構築
■将来予測の難しさ
現在は移り変わりの激しい時代です。昔のように終身雇用で一つの会社に勤め続けるという将来は考えにくくなりました。そうなると、「この先5年10年あるいはそれ以上先の未来において自分はどのような仕事をしていけばいいのだろうか?」と悩むこともあるかもしれません。
このような時、将来の状況を予測して、その状況にマッチした仕事に就くために今スキルを磨くということを試みようとしがちです。しかしそれは極めて難しいと思います。何故かと言うと将来を予測するということが難しいからです。
将来の予測を難しくさせているのはテクノロジーと外的な環境です。テクノロジーとはいうまでもなく AI や ITなどのことを指しています。こういったテクノロジーが我々の生活やビジネスを大きく変えています。そのためになくなっていく仕事もあります。逆に新しく生まれる仕事もあるでしょう。そういった個々の細かな仕事の将来像を予測するというのは極めて難しいです。
また外的環境という意味では、2020年に発生したパンデミック、それによって引き起こされたリモートワークへの移行や飲食業界や観光業界へのダメージというものを予測できた人がいるでしょうか?こういった天変地異、経済的な変動、パンデミック、戦争などを正確に予測することは困難です。
このようにテクノロジーと外的環境を考慮すると将来を予測するということは不可能だと考えたほうが良いと思います。では我々は、5年10年先に備えてどのような準備をすれば良いのでしょうか?
■5年10年後も通じるスキル
二つのことを考慮すべきだと思います。一つは色々なことを試してみるということです。繰り返しになりますが今は変化の激しい時代です。ですから一つの仕事だけに賭けて、それだけを続けるというのは危険です。なぜなら、もし何かの要因でその一つの仕事が続けられなくなった時に、 非常に困るからです。そういったことを避けるために、いくつかの仕事を掛け持ちで行った方が良いと思います。そのためには片手を空けておくという感覚が大切です。つまり何かチャンスが来た時に対応できるように一つのことだけに100%自分のリソースを使い切らないということです。余裕を持たせておくという言い方でも良いかもしれません。そのように片手を空けておくことで、何か面白そうなことや自分でもできそうなことがあったらチャレンジして幅を広げていくということが可能になります。
もう一つは汎用的なスキルを身につけるということです。つまり、どのような未来になっても対応できるスキルを身につけるということです。 将来を予測することは困難です。しかしどのような将来になっても自分が対応できるという自信があれば、今を少し安心して過ごすことができるのではないでしょうか。
汎用的なスキルを身につけるためには色々なことにチャレンジするということが前提になります。その上で過去を振り返ってみて自分が成果を上げることができたのはどのような仕事だったのかを洗い出します。次に成果をあげた仕事に共通して必要であったスキルは何だったのかということを考えてみるといいと思います。そうすると自分にとっての汎用的なスキルというものが見えてきます。
この汎用的なスキルというのは、非常に単純なスキルであることが多いと思います。単純なことを精度高くこなせることが汎用的なスキルになっていたりします。例えば現場で起こっている状況を分かりやすく整理・構造化して、マネジメントに報告するというようなスキルだったりします。こういった単純なスキルは未来がどのような状態になっても使えることが多いです。上記の例は、人と人が仕事をするときには必ず必要となるスキルです。こういったスキルというのは5年10年前にも必要であったはずです。であれば5年10年後も同じように必要とされるはずです。このようにして色々なことにチャレンジしてみて、一定期間たった後に自分の過去を振り返ってみて汎用的なスキルが何なのかというところを突き止めてみましょう。そうすれば、将来に対する不安も少しは和らぐのかなと思います。
以上のように今は変化が激しい時代です。ですから将来を予測するということは困難です。そのような状況において5年10年後に備えるためには二つの方向性があるというお話をしました。一つは色々なことにチャレンジするということです。一つの仕事だけをやるのではなくて、片手を空けておいて面白そう、且つ、できそうなことがあったらチャレンジしてみるという姿勢が大切だと思います。もう一つは自分の仕事を棚卸ししてみて、どのような未来になっても使えそうな汎用的なスキルはないかということを考えてみるということです。そういった汎用的なスキルがあると言うことがわかると安心できるのではないかなと思います。
(第82回 2022/11/1)