組織改革を成功させる8つポイント
■組織改革が進まない理由
組織改革や業務改革は一筋縄では、進みません。何故か?それは、組織には「慣性の法則」が働いているからです。慣性の法則というのは、物理法則です。宇宙空間のような摩擦も重力もない場所で、物体を動かすとその物体は同じ速度と向きに進み続けるというものです。組織にもこの「慣性の法則」が働います。つまり、組織は何もしなければ変わらずに同じことを続けてしまうのです。これは、組織の構成員の誰しもが今やっている仕事のやり方を変えたくない心理を持っているからです。一人一人が仕事のやり方を変えたくないと思っているのですから、組織を変革するというのはとても大変なのです。
しかし、近年、多くの会社においてデジタル化などに取り組まざる得ない状況になってきています。つまり、組織変革を伴う取り組みが必要な機会が増えてきているということです。しかし、「慣性の法則」が働いている組織を変えるのは大変です。今回は、組織変革を成し遂げるために必要なプロセスについてお話をしたいと思います。そのプロセスとは、ジョン・コッターが提唱した8段階のプロセスというものです。
■8段階のプロセス
8段階のプロセスを理解することで、組織変革を行う時に抑えるべきポイントが理解できると思います。
①危機意識を高める
組織変革を進めるためには危機意識を醸成することがとても大切です。なぜならば、組織の「慣性の法則」を乗り越えないといけないからです。何も問題なければ変わりたくないのが人間です。しかし、このまま変わらなければ、会社が沈んでしまうというような危機状態にあると分かれば、変革することに対して少なくとも反対をするということはなくなるはずです。前向きに取り組めないにしても、やらざる得ないことを一人一人が理解することが重要です。
②変革のためのチームを築く
次のプロセスは、変革のためのチームを築くことです。変革チームには、出来る限りエースクラスの人材を含めることが重要です。なぜなら、エースクラスの人材が主導するならば、他の従業員にも「あの人が言っているのならしょうがない」という気持ちにさせることができるからです。ですから、変革チームの人選には気を付けることが非常に重要です。
③ビジョンと戦略を作る
そして、変革を進めるためのビジョンと戦略を作ります。変革を進めることによって、どのような姿になるのかを示すことがビジョンです。そして、戦略はビジョンを実現するために具体的にいつまでに何をやるのかを示すことです。このビジョンと戦略が無いと行き当たりばったりの変革となり、成功することは極めて難しくなります。
④ビジョンと戦略を周知徹底する
そして、非常に大切なプロセスは、ビジョンと戦略を周知するということです。組織変革をしようとすると様々な部門や人の協力が必要です。その時に、何のためにやるのか、何をいつまでにやるのかという青写真が描けていないと、協力を得ることが難しくなります。仕事を依頼された方からすると、何のためにやらなくてはならないのかが分からないからです。ですから、このビジョンと戦略の周知は極めて重要プロセスであると言えます。
⑤従業員の自発を促す
次のポイントは自発を促すということです。ビジョンや戦略が明確に描けて、周知徹底できていれば、それに対して、自発的に取り組むことが可能となります。押し付けられるとやらされ感が出てしまうので、出来る限り自発的に動けるようにすることも必要です。
⑥短期的成果をあげる
短期的な成果のことをクイックヒットと呼ぶこともあります。組織には「慣性の法則」が働いているので、変わりたくないという抵抗勢力が必ず発生します。それを打開するためには、まず簡単な施策で目に見える成果をあげることが有効です。小さくても成果が上がると、変革に対する抵抗感も小さくなるからです。
⑦成果を生かして、更なる変革を進める
短期的な成果を出して、抵抗感が下がった暁には、本格的な変革へと舵を切っていきます。成果が出ると分かっていれば、長期にわたって労力がかかるような取り組みも進むようになります。
⑧新しい方法を企業文化に定着させる
変革を進めた後には、定着化させることが必要です。特にデジタル化やシステム導入を伴う変革は、必ず教育やトレーニングがセットとなっています。教育やトレーニングをしっかりと行って初めて、導入したシステムが使われるようになります。システム導入だけでなく、あらゆる取り組みは、浸透するようにフォローアップすることが重要です。
以上の8つが組織変革を進めていくためのプロセスとなります。個人的にこの中でも特に重要で、そして忘れられがちなのが「④ビジョン・戦略を周知徹底する」ということです。変革チームのメンバーが変革の必要性・重要性を理解していることは当然です。ですから、積極的に取り組みを進めようとしますが、抵抗勢力に邪魔をされて中々前に進まないということになりがちです。何が不足しているかというと、取り組みの重要性を周りが理解していないということなのです。つまり、ビジョンと戦略を周知しきれていないということです。組織変革のチームのメンバーになった時には、ぜひ意義や進め方の周知徹底が出来ているかということを冷静に見返すと良いかもしれません。
(第29回 2021/10/12)