【ショートストーリー】メルカリ30円の攻防(1091字)
わたしは汚部屋の片付けと、少しでもお金を得るために、フリマアプリで不用品を販売している。安くして早く売るべきか、利益を得るために若干高く価格をつけるべきか、常に心の中で戦っていた。しかしその戦いに決着をつける時が来た。
ポーン!
その知らせは突然やって来た。
(メルカリの通知だ!)
メールやLINEでは反応が鈍いのに、フリマアプリの場合は素早く反応するわたし。
それは490円で出品している本についたコメントだった。
「こんにちは!こちらの購入を考えているのですが、300円にお値下げ可能でしょうか?」
言葉は丁寧で、失礼な感じは全く無い。だが……300円台後半位までは予期していたが、いきなりの300円はちょっと…。
ヤフーフリマでも値下げ交渉は20%までとなっているではないか。
ここでしばらく考えた。
(いやでもこの本1ヶ月以上前に出しているのに全然売れないじゃん。300円で良くない?)
(うーん、でも言いなりになるなんて、なんか負けた気がする……)
変なプライドが頭をよぎり、わたしは、
「コメントありがとうございます!330円ではいかがですか?」
と返信した。
言うなりにはならないぞ、と30円でわたしのプライドを保ったのである。
(160円も安くしてるんだし、きっと買ってくれるよね…?)
とわたしは期待した。メルカリでも最安値を確認した。それは450円だった。ますます自信を得た。
ところがところが、一向に返信がない。え、なんで?十分安いよね?
ここではっと気がつき、Amazonを確認した。
(送料込みで280円で売ってる…だと!)
しかし300円だとメルカリのほうが20円高いいではないか?
ところが実はこの時このメルカリでは10%オフクーポンを配っていた。つまり270円になるのである。1円でも安く買う、恐るべしフリマ民!
(これはきっと売れないな…)わたしはがっかりし、変なプライドで300円にしなかったことを後悔した。
案の定2日たっても返信はなかった。ここでわたしはあることを考えた。
(多分この本はこれからも売れないだろう。いいねもついてないし。何とかして買ってもらえないかな?そうだ!どうせなら、もう1回コメントしようかな。恥ずかしいけど、別にどこの誰かわかるわけでも無いし)
わたしはおそるおそる
「すみません、良かったら300円にしますが、いかがですか?」
とコメントした。ちょっと恥ずかしかったが…
すぐに返信があった。
「ありがとうございます!購入させていただきます!」
こうして30円の攻防は幕を閉じ、わたしは60円の利益を得た。そしてわたしは決めたのである。安くてもいい。売れるものは早く売ろうと。