
対馬の廃校に眠る楽器を活用!子どもたちの音楽活動を支える裏側〈休眠預金事業〉
未来基金ながさきは、休眠預金等活用事業(2022年度通常枠)の助成先として3団体を採択しました。
今後、休眠預金を活用して「地域共生社会で子ども達の故郷を無くさない」をテーマに「文化」と「交通」の2分野における課題解決に取り組みます。その中でどんな困難に直面し、乗り越え、どんな成果を生んだのか―。それぞれの取り組みを月1回3部に分けて、シリーズで届けします。
人口減少や少子化により、音楽に触れる機会が失われつつある九州最北端の離島、対馬市。

長崎県大村市のプロオーケストラ「長崎OMURA室内合奏団」と対馬市の中圏域で移動支援を行う「対馬ほほえみ会」が手を組み、音楽教育と移動支援を通じて対馬市の未来を築くプロジェクトがスタート。
指導者の確保と送迎の課題を解決し、2024年9月に対馬市の子どもたちから成る「対馬ユースウインドアンサンブル~BestSmile~」が発足しました。

前回はプロジェクト始動のきっかけや、合奏団発足までの経緯をお話いただきました。
▼Vol.1:前回の記事はこちら
今回は、廃校の楽器活用と移動支援について、同合奏団事務局長の藤﨑澄雄さんと対馬ほほえみ会副会長の原田順子さんに、引き続きお話を伺います。

資源を最大限に活用、子どもたちを支える廃校の楽器
プロジェクトでは、廃校となった学校に眠る楽器を活用しています。
これらの楽器は市や県の教育委員会が所有しており、現在は合奏団が許可を得て借り受けた状態。しかし、その多くは長年使用されておらず、傷みが目立っているとのこと。そこで、合奏団は専門業者に修理を依頼し、全ての楽器を点検・メンテナンスした上で子どもたちに貸し出しているといいます。
「新品を購入した方が早いのですが、現在価格が高騰しており、例えば30人分を揃えるとなると最低でも1500万円ほどかかります」と藤﨑さん。

限られた資源を最大限活用するため、この方法を選択したとのこと。
練習は週に1回ですが、子どもたちは楽器を自宅に持ち帰り、日々練習に励んでいる。公共物である楽器は通常持ち出しが禁止されていますが、「家庭での練習がこのプロジェクトの鍵を握っている」と藤﨑さんは言います。
廃校の楽器は再び音を奏で、未来を育む大切な道具となっています。
大役担うほほえみ会、子どもを支える送迎支援
子どもの送迎は、ほほえみ会のメンバーが役割を担います。
出欠確認や送迎の時間、往復の利用か片道の利用かをLINEで確認しています。
原田さんは「中高生の保護者はLINEをよく使う世代でスムーズにやり取りできている」と言います。
利用料は片道20キロ未満は100円からで、最大1000円。
安価な料金も検討しましたが、今後の活動に必要な経費や持続可能性などを踏まえて設定されました。
対馬ユースウインドアンサンブルのメンバーは11人(24年11月時点)。
練習会場の豊玉町まで1時間〜1時間半かかる厳原地区の中学3年生2人は「とっても助かっている」と感謝しているといいます。

藤﨑さんもほほえみ会会員の努力に敬意を表した上で、この努力をさらに知ってもらえるよう、こう願います。
「気持ちは若くても高齢の方々が送迎を担っている。そうした方々が、地元のみならず他の地区の子どもを送迎することは、普通では考えられないこと。大変な役割を担ってくれている。保護者の方々には、その苦労を理解してほしい」。

島内の高齢者の方の移動支援も行っている
音楽に触れる子どもたちの喜びの声
対馬ユースウインドアンサンブルの練習は週末の1回。教員3人が中学1年生から高校2年生までの11人(24年11月時点))を指導しているといいます。
中学3年の女性メンバーは「先生がいっぱいいて細かいところを教えてくれる。レベルが上がったと思う。入ってよかった」と充実した様子です。
▼対馬ユースウインドアンサンブル~BestSmile~の練習の様子
合奏団が指導にあたるのは、月に1、2回。
別の中学3年生の女性メンバーは
「レベルに合わせて教えてくれる。成長しているのが分かる」とプロの指導に感謝。
「音楽を通して喜びを共有できる。入ってよかった」と喜びの声もあがっています。
次回は、子どもたちの初舞台の様子や今後の課題について伺います!
次の記事:誰もが音楽を楽しめる場に。対馬の音楽教育継続のカギは、指導者の確保〈休眠預金事業〉
ーインタビュー / 文:田中翔太郎
ーnote編集:鈴木由佳子
最後までnoteをお読みいただきありがとうございます!
未来基金ながさきは、地域の困りごとや課題をよりよくしていくための事業(非営利・営利)に資金を提供し、地域社会が誰にとっても暮らしやすい状況をつくるために活動をしています。
お問い合わせや寄付金などのご支援は、こちらから受け付けております。
スキやコメントもお気軽にどうぞ!