東京宝塚劇場の過ごし方に思うこと

≪前回まではこちら≫


東京宝塚劇場の中に入ると、目の前には大きな階段が見える。
これは舞台の最後に出てくる大階段を模したものらしい。
時々この階段で写真を撮影しているご婦人方をお見かけすることがあるが、みなさんすっかり乙女になって楽しそうに微笑んでいる。


向かって左側にはグランドピアノ。
ここにはこの日上演されている舞台の主題歌が自動演奏されている。
エスカレーターを上がっていくその瞬間、自然とその音楽が耳に入ってくる。気分が盛り上がるひとときだ。

エスカレーターをひとつ上がると舞台写真の展示や公演デザートなるものが販売されている。
この公演デザートとは、その公演にまつわる”なにか”を模して限定スイーツとしたものだ。
作りはいたって簡単なものが多いけれども、限定に弱い乙女たちの心をかっさらっている。
食べられるのは公演前と幕間のみ。大行列のなか短時間で食べなければならないため、結構忙しい。私は今回このスイーツはパスをする。

もうひとつエスカレーターを上がると一階席のフロア。
トイレも大抵ここで済ませる。ちなみに開演前のトイレはここよりも劇場入口のフロアが穴場。入ってすぐ、右手奥にあるトイレは開演前ほとんど人がいない。ここでちゃちゃっと済ませてすまし顔で客席に入っていくのが通だ。



最後のエスカレーターを上がるとコンパクトな売店がひとつ。
簡単な飲み物やお菓子はここでも手に入る。意外とすいているので急いでいる人にとっては穴場だ。
二階席へ行くのはこのフロア。
ひと昔前は二階席にもSS席があって、SSが当たっても手放しで喜べない、油断できない時期があったものだ。同じ料金を払って二階席とは?という謎席、あれはなくなって本当によかったと思う。



舞台の幕があいた。
7列目サイドブロックは思ったより見やすかった。ギリギリでオペラグラスはいらない。これはあとでしまっておこう。

椿は二枚目役でかっこいい。現代劇のためストーリーも把握しやすい。
内容もいたって簡単なので初見さんでも連れてきやすいと思う。
ただ何回も見るにはある程度のところで限界が来る。
そんなとき楽しむのはアドリブだ。
和ものや上演され続けた大作は「見た!」という満足感はハンパないが、ほぼアドリブができない。その違いが現代劇の良いところだ。

あと東京公演の楽しみというと、客席の華やかさ。
前方席では芸能人などの有名人を多く見かける。
よく見かける有名人ともなると、大げさに騒がれるのを避けるため客席が暗くなってからそそくさと入ってくる。
開演前の前方席が不自然に空いていたら、そこはそういった人たちがあとからやってくる席だ。

たまにくる有名人の場合、誰かに連れられてくるのだろう。随分早めに来ているケースもある。そうすると開演前のあわただしい時間に、トイレ列で一般人と一緒に並んでいることもあって驚く。
たしかにこの場では一般人だから当然なのだけれど、ズラッと並んでいる中に芸能人が紛れていてぎょっとしたことが何回かあった。


東京では東京のお客様がいて、関西のファンクラブスタッフやお客様が前方席に座っているのを見かけることはほぼない。関東には関東の、関西には関西の見えない境界線がはっきりとあるようだ。

この棲み分けはきっちりしていて、ファンクラブの幹部になるとそういった自由が無くなるんだな、と思ったことがある。
椿本人に近づくことはできるようになる。けれども観劇の自由はなくなるのだ。



この日は終演後、ファンクラブとは離れて出待ちをした。
椿はあの日比谷の石畳でファンクラブの列に向かってなにかをしゃべっていた。

(少し距離が離れるだけでこんなになんにも聞こえなくなるんだ)

私はなんとなく違う世界に来たような、そんな疎外感を勝手に感じている。
誰も知ってる人がいないファンクラブってこうだったよね、と少し前の自分自身を思い出す。
関西のファンクラブがちょっと恋しくなった。







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