優しさを灯す
私にはとても大切な花があった。
でも私は
花が咲いていることに気づいていなかった。
それを教えてくれた人がいた。
言われるまで気がつかなかったのは
私には見えなかったから。
その人は、
どんな花か、を
繊細に表現してくれた。
それはそれは、
いろんなかたちでの表現。
見えていない私に、
色や形を描写してくれて、
聴こえていない私に、
花の響きを奏でてくれて、
香りがわからない私に、
こんな香りだからと、
あらゆるもので例えてくれた。
気がついたとき、
相変わらず私には見えないけれど、
どれほど尊くて、まぶしい花か、
感じられるようになった。
その花は、
私の心に咲いている、らしかった。
最初は信じられなかった。
教えてもらえていなければ、
私はずっと気づかないままだった。
教えてくれた人は、
とても尊い時間をくれて、
そしてまたどこかに向かっていった。
どうやら、違うお役目があるようだった。
小さな雛が、
いつの間にか、飛び立っていった、
みたいに、
そんな風にみえなくなった。
まためぐってめぐって、
花の話ができたらいいなと思った。
あのときはありがとう、と
伝えられたらいいな、と思う。
人生は、
誰かの花を見つけたり、
誰かに花を見つけてもらったり、
そんな風にして巡っているのだと思う。
最近、
私の人生で今まで出会った人が
突然夢に出てきたり、
車の運転中に突然浮かんだりする。
楽しい思い出にまつわる人であったり、
苦しかった思い出にまつわる人であったり。
あたたかな気持ちになる人だったり。
どれも、眩しく見える。
花はどうやら、
一輪ではなくて、
たくさん咲いているらしい。
毎瞬毎瞬、
いろいろな出会いを通して、
自分を振り返るひとときを通して、
芽が出て
本葉が出て
茎が伸びて太くなり
蕾がつき
花が咲き
そして実や種子ができ
また次の花につながる。
私に出会ってくれた人たちが、
全部、見つけてくれた。
どれも、私が見つけられないものばかり。
最近、目標ができた。
たぶん、
これがあなたの花だよ、と
気づかせてもらえたからだと思っている。
私は、優しさを灯したいと思った。
私はずっと、
自分の中の「火」を大事にして、と
ことあるごとに言われてきた。
水が強すぎて、
火が出てこれていません。
火が鳥籠から出たがっている。
あなたが鳥籠に入れてしまった。
出してあげてください。
あなたにあるのは
どんなかたちにも使える火。
何に使いますか。
火を悪者にしてきたことは
知っていた。
恐る恐る、鳥籠を開けてみた。
何にどう火をつかいたいか、
考えてきた。
やっとわかった気がする。
私は優しさを灯したい。
優しさを注ぐ、ではなくて、
灯したい。
以前私にすごく懐いてくれた
小さな男の子がいた。
自分にかけるはずの毛布を
必ず私に先にかけてくれる。
みんな仲良く、が大好きな子で、
その子の心に大きな平和があるのを
いつも感じられる。
そんな子だった。
その子の名前も、
まさにそんな、
あたたかな火、にまつわる名前だった。
とても心の優しい、あたたかな子。
優しさを灯した先に何があるかは
まだわからないのだけど、
灯したら、
また考えてみようと思う。
mira