砂漠の風

何気なくyou tube のMVを見ていて、衝撃を受けた。

まぁ私にとって衝撃的だったということで、いわゆる衝撃的な映像というのでは全くないのであるが。

もう一人の自分を棺に入れてトラックの荷台に乗せ、砂漠をひた走る若い男。棺にも荷台にも色とりどりの花。

砂漠の真ん中で男は車を止める。棺で眠っていた男が立ち上がって荷台から降りると、踊りながら、砂漠を進んでいく。抜けるような青い空。線香に火をつけるとそれを咥えて祭壇の前に行き、線香を立てる。

陽が落ちて夜になり、5人の男たちが焚き火の周りで輪踊りを始める。棺の男以外の者の顔は見えない。一晩中踊り明かした後、男たちは輪を解いて踊りながら一列になって進んでいく。そして夜が明けるとともに、彼らの身体は砂粒となって砂漠の風と共に消えていく。

夫の棺に花を手向けた、あの姿がまだ目に焼き付いている私としては、MVの棺の男を彼と重ねずにはいられない。現実的には夫は即身仏みたいに一週間くらいカラカラの砂漠に置かれた感じの顔をしていた。

彼の意識は早々に身体を抜け出して遠出しているという気がした。

同時に、砂漠の真ん中で立ち上がって踊り出す彼の姿はなんとなく思い描ける感じがする。ファルキートみたいに軽々とステップを踏んで。

それと、ずいぶん前に心惹かれていた楼蘭のミイラ(美女じゃなくて、老女の方)のことも不意に思い出した。彼女は確か60代くらいの女性ということだったから、今の私と同じくらいの年齢だよね。彼女が蘇ったらどんな感じなのかな?どんな踊りをするのかな?などと思ってしまったのだ。

あまつさえその姿を私と重ねてみたりして。そんなのゼッタイ無理!!って即座に突っ込む私がいる。確かにそうなんだけど、思いついてしまったものは仕方ない。

私はきっとそういう舞を舞うようになるだろう。こんな風に思ってしまったものというのはそうなってしまうものなのだ。

それならばぐずぐずしている場合ではないだろう。閃きを現実にするには、実際の時間は限られている。心して生きなければならない。行きつ戻りつはあったとしても。

どうか、見守っていてよ。

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