(育休)第4話:男性の家庭進出プロジェクト発足
男性育休の法改正までのヒストリーを語るマガジン。前回、第3話では、男性育休の「壁」をどうやって壊すかを考えるためにmiracoが用いた手法と、ボランティア活動を続けていくために大事だと思うことを紹介しました。
第4話では、その手法を使って立てた戦略と、戦略に基づいて発足させた「男性の家庭進出プロジェクト」について具体的にお話しします。
(1)育休のジレンマ
父親が子育てに関わることによる家族や職場への好影響については、古くから知られていましたが、そこに踏み込めず(踏み込まず?)にいる男性も少なくはありませんでした。
そんな中、男性が子育てに向けてはじめの一歩を踏み出す、または、夫婦そろってその一歩目を歩み始めるタイミングに当たる「育休」は、父親が子育てに関わるトリガーにも成り得るのでは、と期待されてきました。
しかし、日本では、育休を取得する男性は少なく、miracoが発足した2017年度には取得率はわずか5.14%、20人に1人でした。育休が当たり前になるほどに取得者が増えないと、職場や社会の理解も進まない。でも、理解が進まないと取得者は増えない。そんなジレンマに陥っていました。
このジレンマから脱するためには、どこから切り崩せばよいのか?私たちは本気で考えました。
(2)パタハラ…傷だらけのファーストペンギン
まずは現状分析です。育休取得者が増えない一方で、取得者が現われた一部の職場では、このファーストペンギンに続いて次々と取得者が出現し、職場の理解も進んでいく好循環も生まれつつありました。
しかし、前例のない職場で育児にコミットしようとするファーストペンギンには、パタハラ(パタニティハラスメント)などの逆風が吹くことも多く、そのペンギンの背中には多くの矢が突き刺ささっている…そんな時代がひと昔前にはありました。私も矢が突き刺さっていたペンギンの1人です。
前例のない中で1人だけ育休を取るとパタハラを受ける…これでは1羽だけで海に飛び込んでサメに狙われるペンギンです。産後の妻を守りたい、子どもの成長を見守りたい、という当たり前の願いを叶えられるようにするにはどうすればよいのか…
(3)赤信号、一緒に渡れば…
そこで私たちが考えたのが、「赤信号、一緒に渡れば怖くない」作戦です。つまり、1人のファーストペンギンに頼るのではなく、「せーの!」で同時多発的に育休に飛び込むように、ペンギンの群れの背中を一気に押してあげればよいのでは?と考えたのです。
(4)男性の家庭進出プロジェクト、発足
1人のファーストペンギンに頼るのではなく、子どもが生まれたら育児をするんだという風土を社会に根付かせたい…そんな想いから「男性の家庭進出プロジェクト」を発足させました。
プロジェクトを発足させた2018年10月のイベント(院内集会)、私はパワポのスライドで明確に方針を打ち出していました。
(5)山頂に旗を立て、一里塚を決めた
さて、ではどうやって変化の風を吹かせる制度をつくるのか…そこで前回紹介したコミュニティ・オーガナイジング(CO)の出番。基盤づくり、キックオフ、断続的なピーク、最終ピーク、結果、というキャンペーンのタイムラインを考えていきました。
まず、山頂のゴールに「男性の育児が当たり前の社会」という旗を立て、その山登りのルートに一里塚(ピーク)となるイベントを配していきました。2018年10月のイベント(院内集会)でプロジェクトをキックオフさせ、イベントや行政・議員との懇談会で関係構築・理論補強をし、電子署名などの大規模なキャンペーンを打つ。そこで効果検証をして次のキャンペーンを練り直す。といった具合です。
この後、キックオフ時に決めたこのルートを頼りに、私たちは山登りを始めることになります。山登りの途中、装備を補強したり、強力な協力者が現われたり、新しいアイテム(アイデア)を拾ったりしながら、時には方向転換(ピボット)しながら歩いていくわけですが…それはまた今度、紹介したいと思います。
次回:家庭を救うヒーローは誰?
今回は、男性育休のジレンマと、ジレンマを脱するために発足させたプロジェクトとその戦略について紹介しました。
次回、第5話では、戦略を展開するために必要だった「なぜ育休が必要なのか?」の理論武装と、家庭を救うヒーローは誰なのか?という話について書きます。ぜひお楽しみに。
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(文責:りょうたっち)