それって、男女の友情? 色恋? 敬愛? -第3幕-

◆1回目のディナー翌日 → 2回目のディナー前日

1回目のディナー翌日、僕は通勤電車の中からLINEを彼女へ送った。
「サキさん、おはよう。
 今日も一日、頑張ろうね。」

彼女は、お昼なって返信をしてきた。
「こんにちは😊
 あと半日😥
 頑張りましょー✨」

昨日の夜に見つけておいた次のディナー場所をすぐに送った。
「イイお寿司屋さん見つけたよ。
 回転だけど、食べたことないネタがいっぱい。
 (リンクアドレス)
 サイトの下の方にあるグランドメニューを見てみて。」

こんなやり取りをした夕方、自分が所属している部署の全員会議が始まった。この会議は隔週で行われていて、僕は常日頃から必要性を感じないだけでなく、イヤな存在でもあった。

そんな会議で自分が支援をしている現場の責任者が、協力会社の作業員からクレームを受けていることが議題となった。彼は不器用な性格なので、なかなか自分の思いを言葉にして伝えることができない。

だから、いつも周りから「こうすればいいんじゃないか」と「ああすればいいんじゃないか」と言われていた。さらに、彼は「出来ない、ダメな奴」というレッテルを貼られていたので、直そうとしている努力も認められないという可哀想な存在となっていた。

ただ今回は、自分が現場へ行って全面的な支援をしているので「何が問題で、どうすれば良いのか」という改善点をほぼ把握していた。なので、あとはそれを日々着実に実行できる仕組みを作りながら、彼に現場でやってもらう予定でいたのだった。

そんな状況を知らない外野から言われ続ける彼を僕は黙って見ていることができず、全員に向かってこう言ってしまった。
「彼の現場は私の部署で全面的にバックアップしている。だから、私たちに任せてもらえませんか?」と。

これを聞いても、まだ意見するメンバーがいたので、自分たちがどのような改善をするのかを交えて反論していた。すると部署のトップが「そういった話しは別の機会でやりましょう」と言って、議論を打ち切ってしまった。

結論を出さない会議、自分が責任を持つと言っているにも関わらず任せようとしない上司。猛烈にイヤな会議となってしまったのです。

会議が終わり、腹立たしいやら、やるせないやらで、帰りの電車を待つホームに立った僕は彼女からの返信を待たずにメッセージを送ってしまった。
「こんばんは。
 今、嫌なイヤな会議が終わったとこで、さらに嫌な事があってモヤモヤしてます。
 サキさん会いたいなぁー」

しばらくすると、彼女がすぐに返事をくれた。
「そうなんですね!
 大丈夫ですか?😥
 今度お話し聞きますね!
 私も早く会いたいーー✨」

僕はすぐに返信した。
「サキさんは本当に僕へ元気をくれるよね。
 ありがとう😊
 いますぐに会いたい気持ちを抑えるのが、ちょっと大変だけど...」

僕は、つぎに彼女と会える2回目のディナーが1週間後くらいになるだろうと考えていたので、たまらず気持ちをぶつけてしまった。

すると、彼女からこんなメッセージが届いた。
「ちなみに明日、明後日の夜空いてるんですが、タクヤさんお忙しいですよね?😔
 この間会ったばっかりですが、またタクヤさんとゆっくりお食事しながらお話ししたいなーと思って😊」

僕はこれを見た瞬間、電車を待つホームで飛び上がってしまった。
そして、ガッツポーズを作りながら心の中で「ヤッター!」と叫んでいた。

すぐに僕は返事を送った。
「嬉しいです😭
 明後日の夜、会いたい!」

彼女は
「本当ですか?
 良かったです😊✨
 お寿司食べに行きましょ~🎶」

ホームに滑り込んできた電車に乗った僕は、自分でも分かるくらい、にやけ顔をしていた。マスクをしていなかったら、完全に変態オジさんだったに違いない。

家に帰ってから、僕は彼女とディナーするために段取りを考え始めた。なぜなら、明後日は日曜日、会社は休みだからだ。でも、彼女との待ち合わせは18時。だから、急ぎの仕事があるわけでもないのに休日出勤をして、時間を合わせようと考えた。

とは言っても、こんな段取り、まったく苦にならなかった。それは、来週から3週間の出張が入っていて、彼女と会えなくなるかもしれなかったからだ。

このとき僕は、本当にこう思った。
「彼女がいなかったら、僕は、この悶々とした気持ちを抱えたまま出張にいかなければならなかったはず。彼女は僕に元気を与えてくれる大切な人だ」と。

◆2回目のディナー当日
2023年7月16日(日)

2回目のディナーの朝、僕はいつもと同じように会社へ出勤して、仕事を黙々とこなしていた。自慢ではないが、僕は仕事を自分で作ることができるので、休日出勤して「やる事がない」なんてことはない。彼女との待ち合わせ場所は会社から歩いて15分くらいの所。だから、17時半前には会社を出て、お店を下見してこようと思っていた。

予定していた時間になったので仕事に切りを付けて会社を出た僕は、歩きながら彼女に話すことを整理していた。しばらくすると、彼女からメッセージが届いた。
「タクヤさんごめんなさい💦
 前の用事がすこし押してて、20分くらい遅れそうです😥」

僕はすぐに、返信した。
「大丈夫だよ」

このとき、僕はとても複雑な思いを持っていた。それは、ちょっとした怒りのようなものを持った自分と、そのくらいの事はさりげなく受け入れたいと思った自分が同居していたからだ。

自分でもビックリしたのが、待ち合わせ場所へ近づき、お店を下見している頃には、そんな思いはどこかへ吹き飛んでしまっていたことだった。たぶん、これが自分の若い頃、例えば20代の頃だったら猛烈に怒っていただろうし、やはり、26才も歳の離れた若い女性と付き合うオジさんにはこの「余裕」が必要なんだと、つくづく思ったのだった。

待ち合わせ場所でしばらく待っていると、手を小さく振りながら彼女が近づいてきた。そして「お待たせして、ごめんなさい」と言った後、笑顔を見せてくれた。

僕は下見をしておいたお店へ今日の天気の話をしながら彼女を案内した。
予約しておいた寿司屋は、以前、回転寿司として営業していたお店で、お寿司が回るレーンがそのまま残っていた。僕たちはカウンター席へ案内され、タブレットで注文することを説明された。

彼女がタブレットを手に取り、僕にこう話し掛けた「焼酎を頼んでもいいですか?」と。もちろん、僕は「いいよ」と答えた。
すると彼女は「タクヤさんは、何を飲みますか?」と聞いてくれた。
1回目のディナーのときから思っていた彼女の魅力のひとつである「謙虚さ」を僕は今日も感じていた。

注文した飲み物が運ばれてくる前に、僕はパパ活の大切な儀式である「お手当て」を彼女に渡した。今回もポチ袋へ新札に近い1万円を入れておいた。

ところで、今日のお寿司屋は世間の回転ずしとはレベルが違う。だから、値段も当然違う。2貫1皿で、700円以上は当たり前。おそらく、お代は1万6千円以上を予想していた。

でも、僕はまったく気にしていなかった。なぜなら、彼女と食事をするお店の価値の高さが、彼女をどのくらいの価値として見ているかに比例すると、僕は考えていたからだ。

これはあくまでも持論なのだが、値段の高いお店が、価値が高いとは限らないと思っている。だから、今回のお寿司屋は値段的には最高級ではないが、カウンター席があって板前さんが目の前でお寿司を握ってくれる。このシチュエーションが加わることで彼女に見合った価値があると思って、彼女をこのお店に連れてこようと思ったのだった。

話しを僕たちに戻すとしよう。

僕と彼女はお寿司を食べながら、旅行の話で盛り上がっていた。
僕が「最近、旅行へ行った?」と訊くと、彼女は「最近は全然行ってないです」というので、「じゃあ、一番遠くに行った所はどこ?」と僕は尋ねた。
彼女は「沖縄かな?」と答えた。僕は「沖縄には行ったことがないけど、すごくイイところなんだよね?」と言うと、「そう、海がとってもキレイで最高です」と彼女が答えた。

間髪入れず、僕は「サキさんは、クラブメッドって知ってる?」と尋ねた。彼女はちょっと目を大きくして「それって何ですか?」と訊いてきた。

「石垣島にクラブメッドというのがあって、そこはホテルとアクティビティが同じ敷地にあって、その敷地の中だけですべてが楽しめるリゾート空間を提供しているところなんだよ。
 例えば、食事は3食付きのビュッフェ形式で、毎日食べ続けたら病気になりそうなくらい豪華なメニューが溢れんばかりにあったり、ちょっと遅い時間にガランとしたビュッフェで朝食を食べていると、G.Oと呼ばれるスタッフが“すーっ”とテーブルへ近づいて来て「ご一緒してもいいですか?」と声を掛けてくる。一緒に食事をしてくれるG.Oが話題を提供してくれるので、とても楽しい食事になったりする。たぶん、G.Oさんは一緒に食事をするために、誰かがいつも待っているんだと思うよ。この心遣いが嬉しいんだよね。」

僕の話しを聞き終えた彼女は「それって、最高のサービスですよね。私も行ってみたいです!」と言った。
それを聞いた僕は「僕と一緒に行きたいっていう意味?」と訊くと、「そうですよ」とちょっと恥ずかしそうに答えた。
このとき僕は、お酒で少し上がっていた心拍数が、さらに上昇したことに気がついた。

お寿司を堪能し終わったころ、彼女が「お手洗いに行ってもいいですか?」と訊いてきた。今日のお店は百貨店の中にあったので、お手洗いはお店を出たところにあった。なので僕は「じゃあ、お会計するね」と言って彼女と一緒に席を立った。

予想通り、お代は1万7千円。クレジットカードで支払いを済ませて、お店の外で待っている彼女のところへ向かった。

お手洗いまで案内して彼女が出てくるのを待っている間、まだ少し時間が早いことに僕は気がついた。なので、彼女が出て来ないか気にしながらフロアガイドを見に行って、食後のデザートを楽しめるお店がないかチェックした。そして、ジェラートのお店を見つけた僕は、さりげなく彼女を誘ってみることにした。

お手洗いから出てきた彼女に近づいて、僕はこう訊いてみた。
「まだ少し時間があるから、ジェラートでも食べない?」
彼女は「いいですよ。イイお店があるんですか?」と言ったので、さっき調べたばかりだったが、ちょっと格好つけて「知っているお店があるから、そこへ行かない?」と僕は答えた。
もちろん、それがばれないように、さっき見たフロアガイドでお店の場所を思い出しながら、僕は彼女をさりげなく連れて行った。

ジェラートのお店で30分ほどお喋りを楽しみ、家路に着くために僕たちは最寄りの駅へ向かった。

その道中、僕はあることをしたいと無性に思っていた。
それは、彼女と腕を組んで歩くことだった。
でも、そんなこと突然言ったら嫌がられないだろうか? とか、それをきっかけに嫌われたりしないだろうか? と思っているうちに駅に着いてしまった。

結局、欲望は叶うことなく、ただの妄想に終わり、つぎのディナーの予定はLINEでやり取りすることにして、僕たちは別れを告げたのだった。

電車に乗った僕は、さっそく彼女へメッセージを送った。
「美味しく食べるサキさん、とっても素敵でした。
 つぎに会うのは楽しみですが、今日は別れた後の寂しさのほうが大きいです😢」

送信と同時に彼女からメッセージが届いた。
「今日はありがとうございました。😊
 お寿司とっても美味しかったです✨
 さすがタクヤさんチョイスですね✨
 ジェラート食べながらのお話しも楽しかったです🎶

彼女は続けた。
「あ、同時でしたね!😊」

僕はこう返事した。
「これって、以心伝心だよね😊」

彼女はすぐに返事をくれた。
「本当ですね!✨」

締めとして、僕はこう送った。
「明日も、サキさんにとって良い一日でありますように。
 おやすみなさい」

彼女は
「ありがとうございます😊
 おやすみなさい😴」

こうして、僕たちの2回目のディナーは終わった。

送信と同時に彼女から
 今日はありがとうございました。[笑顔]
 お寿司とっても美味しかったです[キラキラ]
 さすがタクヤさんチョイスですね[キラキラ]
 ジェラート食べながらのお話しも楽しかったです[♪]
つづけて
 あ、同時でしたね![笑顔]

僕は
 これって、以心伝心だよね[笑顔]

彼女は
 本当ですね![キラキラ]

僕は
 明日も、サキさんにとって良い一日でありますように。
 おやすみなさい。

彼女は
 ありがとうございます[笑顔]
 おやすみなさい[寝顔]

こうして、僕たちの2回目のディナーは終わった。

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